夏前の粘る空気の中 窓の網戸にハエも眠る
静かに揺れるカーテンの裾 部屋の灯りがそれにつられる

隙間から忍び込んだ風は
あなたの面影を少しづつ
運んでくるよ 無責任に

べっとりと じっとりと 思い出が張り付き
すぐには忘れられやしないな

並んで座ったあの日も 手を伸ばせば届きそうな気がするけど
蒸し暑さだけが本当で あとは幻 永遠に触れられない

梅雨前線が連れてきた でっかな雲が日々を覆う
暖かいコーヒーを入れてみた あなたの部屋の匂いがした

真直に伸びて消える湯気は
あなたの面影を少しづつ
辿らせるよ 無責任に

ゆらりと するりと 思い出がぼやけて
すぐには思い出せやしないな

時の止まった頭の中 あの部屋は変わってしまったかなんて
考えても無駄なだけと 分かっているのに おかしいな…

雲の隙間の
今夜の月は綺麗です あなたのようにふわりと揺れた
もう眠ってしまいたいな 朝になれば 全部忘れてるかな?


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