細長い坂を駆けた。重ね着のコートを脱いで駆け抜けた。

夕暮れの帰り道で、独り言をつぶやいている。

君のいない街に初めての季節。

伝え損ねたこと、もう覚えていないや。

茜色に染まるから、今日も明日もその思い出も。

奇跡はいらない。荷物になっちまうでしょう。

気づいていた、僕のこころが

新しい何かを求めはじめていることを。

夜の匂いに変わったら、進む支度をはじめよう。

奇跡はいらない。踏み出せなくなるでしょう。

そういえば、君が泣くのを見たことなかったな。

そんなこと考えてたら、そりゃ日も暮れるよな。

よそ見してけつまずいても、今さらだ。振り向くことなかれ!

茜色に染まったら、次の言葉をみつけよう。

奇跡は起きない。理由がないからね。

茜色に染まるから、今日も明日もその思い出も。

奇跡はいらない。荷物になっちまうでしょう。


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