かつて私は夏の蒸せかえる様な草の匂いを
胸一杯に吸い込んで走り回る
至極ありふれた夢見がちな少年だった
突如として雲の切れ間から現れた
飛行船に心を奪われ
空を飛ぶことへの憧憬を
その後10年以上もの間こじらせる程の
ありふれた愚かな少年だった

全身全霊使って 時速一つの諦めで
私は年をとっていく
永遠とはいかないが 名前をつけた
この飛行船に乗って

世間一般でいうところの大人になった
行ってみたい場所はどんどん増えていった
360°パノラマの地平線
夕陽と混ざり合うターコイズブルーの海
湿原とオーロラ 命を洗う河
彼らの暮らしを眺めながら
身の安全は確保しながら
そう但し書きを加えて
まだ心は奪われたまま
飛行船はスピード増した

全身全霊使って 時速一つの諦めで
私は年をとっていく
永遠とはいかないが 名前をつけた
この飛行船に乗って

かつて私は覚えたての言葉を得意気に使い
後に恥ずかしさで耳を真っ赤にする
至極ありふれた 夢見がちな少年だった
やがて船は徐々に高度を落としていき
草の匂いのする場所から空を見上げていた
今 私の前には階段があり
呼吸が止まるまでそれは 続いていく
突如として雲の切れ間から現れたのは
右肩上がりにスライドする焦りか
依然として日々の切れ間に突っ立っていたのは
ドミノ倒しで連なっていく不満か
夏の蒸せかえる様な草の匂いを
胸一杯に吸い込んで
空を飛ぶ事への憧憬を
こじらせながら引きずって
偶像としての価値をコンパクトディスクに詰め込んで
わずかに残った理性を今後の参考書にして
降って湧いてくる 都合の良いメロディーを待ってる

全身全霊使って 時速一つの諦めで
私は年をとっていく
永遠とはいかないが 名前をつけた
この飛行船に乗って
オーベイビー 毎時一つ 一つ諦めて
私は年をとっていく
永遠とはいかないが 名前をつけた
この飛行船に乗って
この飛行船に乗って


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