記憶に無い小屋に少し残るにおい、嗅いでいた。
声を潜め隠れよう、闇の中へ。
傘が無い。外にはまだ出られぬまま。
母さんはもう僕の事を覚えていない、なんて考えていた。
道化師の様に笑っていたい。贖罪の床に、ランタンの火が落ちた。
夢なら醒めないで、干渉をやめないで。
もう元には戻れないって、鐘がきこえる。
赤い衣装、濡れたままで火の輪をくぐる。
少年は、もう家には帰らないと、嫌いだと考えていた。毎日の様に。
冷え込んでいた3月みたいに、簡単に手がふれた。
夢なら醒めないで、足あとは消さないで。
もうここには戻れないって、鐘は教える。
白い砂漠をサーカスはひたすら進み、
きみは象にまたがって細胞の数を数えていた。
ああ、夢なら醒めないで、干渉をやめないで。
もう元には戻らないって、鐘が聞こえるはずさ。
ああ、長い夢は醒める。僕たちは透けていく。
「またいつか遊ぼうね」って。
鐘が聞こえる。
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