その日は飢えたように 飲み足りなかった
行きつけの店は、女で満員
全員歯が抜けた口で笑っていたからパスだ
路地を曲がった一角に 工事中の黄色いランプで
小さなバーが光り輝いていて
俺は、蛾みたいに吸い寄せられていった

なにかないか!?
なにかないかと!
東京午前2時

俺はあるバンドの MCをやっている
その日のライブじゃあ ギャグのオチを間違えた
にもかかわらず 客は笑っていた 逆に傷つくぜ
天使みたいな顔をしたおっさんの隣に座って
俺は同じギャグを耳元で囁いてみた
おっさんは、真顔になり、大量にゲロを吐いた

これは滑ったのか!
まさか受けすぎたのか!
東京午前2時半

気がつくと俺はおっさんの肩を担ぎ
夜の中目黒を歩いていた
おっさんは打ち明けた あんたのこと知ってるよと
下町ロケット毎週見てたよ おいおっさんそれは
立川談春のことを言ってんじゃねえか!?
おっさんは天使みたいな顔で、眠りについた

電信柱の陰に、賢そうな猫がいた
俺を知ってるか 皆川猿時だ
猫は答えず 風に吹かれて飛んだ
なぜならそれは、コンビニ袋だったから
目が悪いんだ 意外と目が悪いんだ俺は
遠くに吉野家の灯りが見える
自問自答の隙もなく
俺は、夜を走る
俺の名前を知ってるか
俺の名前を知ってるか
東京午前3時

で、何食ったと思う?
意外と、チーズカレー

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