地図から消された何処かの街の様に、鬼の居ないかくれんぼをしながら。
二人が思う通りに創る、遅れ取った文明を始めよう。

ポツンと立てた古びた看板で警告しとく。
此処から先は立入禁止ですとあからさまに。

心地好くて縋ってしまう秘密基地と呼んだ廃墟。
僕らだけが持つ通行許可証。
この出口をくぐらなきゃ辛い思いもしなくていい。
涙を飲んで焼けた喉が痛い。

地図には載らないこの街を囲んだ、高く冷たい壁が僕ら包むよ。
引き換えに世界を差し出して、二人分の自由を手に入れた。

覚えてるかな。
屋根の無い空間で見た空を。
何時の間にか興味を削がれたあの星を。

心地好くて縋ってしまう秘密基地と呼んだ廃墟。
寒いからって二人くっつき過ぎて。
あんまり喋らない君が初めて主張した時に、返す言葉も無く惨めだった。

「ねぇ、十分休憩出来たんじゃない?」
どうしてそんな事を云うの?
背後を壁で守る僕たちは、前に行くしかない。

地図から消された何処かの街の様に、僕らはまだ諦めてないのかな。
焼けた喉に染み込んだ涙の味は、昔と違う。

「空が見たい。」
君が悲しそうに見上げる屋根に灯すボヤけたプラネタリウム。
「空が見たい。」
そうか、そういう事なんだね。
「僕も見たい。」
この殻の向こう側。


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