時は平安
雨雲迫りて一面に暗(く)れ塞がりたり
霹靂(はたた)く天より荒(あら)ましき雄(を)の鵺(ぬえ)現る

ひょうひょう

怪しかる黒煙と音 頼政は弓箭(きゅうせん)を構へ
雌(め)の鵺に遠矢(とほや)を射中(いあ)て誅戮(ちゅうりく)し給ふ

猿(ましら)狢(うじな)虎(とら)蛇(へみ)

世に落ちて苦を受くるに 愛(めぐ)し美し吾子(あこ)を厭ふ
喉を箆深(のぶか)に刺されたる母は消え果てぬる
猿 狢 虎 蛇

天を仰ぎ叫び猛びて喚(おめ)く 憂き世を仇(あた)みて
地をも夥(おびたたし)しく震(ふ)る程 胸の焰は盛りなり

怨めしかりし事どもなり

鬼眼羅


生きながら捉(とら)れし吾子は物ゆかしかり遊び物ぞ
今昔未見(こんじゃくみけん)の奇物と其れを弄ぶ

頭(かしら)胴(どう)枝(えだ)尾(を)
猿 狢 虎 蛇

我をば待たね

天を仰ぎ叫び猛びて喚く 憂き世を仇みて
地をも夥しく震る程 胸の焰は盛りなり

星を失ひ断たるる夢 闇に暮れて臥(ふ)したりけり
空を貫きたる雷(いかずち)牙を嚙み出(い)だし狂ひて

遺恨の至り 赦さじとす

鬼眼羅

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