ある朝寝ぼけた彼をそれは突然おこした
信じられないのに不安だけで悲しくなり
別のことを無理矢理考える子供

電車は徐々にそれに近づいている
大好きなモノさえもただの塊に見え始め出し
いつもと違った雰囲気に怯え始める子供

その頃はもう日常の一部になってしまっていて
その時が一番楽しくてそれが彼の遊園地であり動物園だった
異色の環境に満足してしまっている子供

「終わり」という現実を知らなかった幼子は
あまりにも無残で残酷な答えをしらされた
人物像でさえまだ彼の中に確定しきっていないのに
「好き」「嫌い」だけの世界でプツリと遮断された記録
日が暮れるのつれそれは徐々に形を変え始める
誰も彼もがヒビの入った場所を無理矢理埋めようとした
何度も嘔吐を繰り返す彼の深い深い溝は
やがて何も埋められない形に変形して行く

ドアを開けると見慣れた景色は真っ白で
聞いたことのないうるさい沈黙がとても苦しくて
慣れ親しんだ病室は僕一人には広すぎて
新しいシーツがなぜか悲しみのあとを押す
窓際に飾られた花が無性に愛しくて
メモ帳には言葉だけが悲しくつづられていて
暖かいはずのベッドはどうしようもなく冷たくて
ドアを開けてもあの景色には二度と出会えない

さよなら…?さよなら…

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