嗚呼(ああ) 海潮(うしお)に乗りて
届く幽冥(ゆうめい)の声

嗚呼 雲居(くもい)の彼方(あなた)
融(と)けて混ざり消え逝(ゆ)く

今宵(こよい) 贄(にえ)の宴や
来たれ 乙女 我を満たさん

小袖(こそで)の時雨(しぐれ)は 現世(うつしよ)の未練と
又選(す)られ逝(ゆ)く 寝覚(ねざ)む残花(ざんか)への手向(たむ)けよ

天つ風 雲の通ひ路(じ) 吹き閉ぢよ
をとめの姿 しばしとどめむ

世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ
あまの小舟の 綱手(つなで)かなしも

忘られぬ想いを 胸に抱いて
黄昏(たそがれ)る波間を望みて いざ逝かば

今宵 贄の宴や
眠れ 乙女 我は満ちたり

小袖の時雨は 現世の未練と
又選られ逝く 寝覚む残花の手向け

別離世(わかれよ)の唄は 満(み)つ潮に呑まれて
雲居の遥かに 融けて混ざりて消えるまで

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