足音響(あのとひび)かせて 叢立(むらだち)は勇(いさ)む
いざや鬼殿(おにどの)へ その首を討(う)たんと
暮れ懸(か)かる空に 昔時(せきじ)を打ち捨て
守らう俤(おもかげ) 瞼(まなぶた)に紊(みだ)れる
焔(ほむら)を掲(かか)げよ 鬨(とき)の声を呼ぶ
今宵帰(よこいかえ)る 道などいらぬ
朽ち果てたこの骨に 唯(ただ)花が咲けば良い
荒(あら)ぶる爪牙(そうが)に 屍累々(かばねるいるい)と
在りし日の夢は 散(ち)り散(ぢ)りに毀(こぼ)れる
血に濡れた友の 唇は歌う さらば愛(いと)し子よ 健やかに生きよと
其の歌を刃(やいば)に 竦(すく)む足を駆(か)る
語(かた)り継(つ)がう 名前はいらぬ
朽ち果てたこの骨に 唯 花が咲けば良い
いつか時は 総てを浚(さら)い 光射(ひかりさ)す この阜(おか)を
また幼子(おさなご)は駈けるだろう
寄り添い往(ゆ)く 生き世は失(う)せど 骨に咲く其の花に
君が微笑めば良い

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