2011-10-20

ほたる日和、切ない曲なら切ない曲として響かせたい

 ほたる日和が待望のメジャー1stアルバムをリリース。全曲シングル対応可能なクオリティーからはバンドの本気や真摯な姿勢が伝わってくる。急成長中の彼らがJ-POPシーンを掻き回してくれる日はそう遠くなさそうだ。

──バンドの結成は早川さんと成相さんの出会いがきっかけなんですよね?

早川 そうです。僕が深夜に下北沢の南口で弾き語りをやってたんですよ。そこで彼に話しかけられて。

成相 バンドをやってるような音に聴こえたんですよね。で、話を聞いたら“やってないです”って言われて、“じゃあ、僕ドラムやってるんで、今度スタジオ入りませんか?”って。

──いきなり話しかけられるものなんですね。

成相 いや、弾き語りをやってる人に話しかけたのは初めてでした。当時別のバンドのサポートをやってたんですけど、その日はライヴをやって打ち上げが終わって、完全に酔っぱらってたんですよね(笑)。

早川 酔っぱらってなかったら話しかけられてないかも(笑)。それでいきなりライヴをやろうってことになって、ライヴ前に音源も自主で作ろうと。今でもよく演奏する「セピアフィッシュ」はそこで録音しました。その時にはギターの倉橋も加入してて。

倉橋 バンドにまだギタリストがいなかったんだよね。僕もいいタイミングで誘ってもらえました。

──最初に注目されたと思った時って覚えてますか?

早川 初めての公式音源が2007年の『カラフル』っていうミニアルバムなんですが、そのリリース後のライヴですかね。ライヴ終わりに話しかけてくれる人が多くて、自分の中で勢いを感じました。

倉橋 僕は“大丈夫かな?”と思いましたけど、ふたりは盛り上がってたね(笑)。この4人だと、吉田と僕は心配性なんでしょうね。

早川 大変な時ももちろんあったんですけど、全員で力を合わせて乗り切ってこられました。僕と成相はポジティブな性格で、次のプランしか考えないような人間だし。

吉田 私は2010年の3月にサポートでバンドに入って、正式に加入したのは6月だから、辛い時は経験してないんです(笑)。

──今回の『センチメンタルマインド』はどんな構想があったのですか?

早川 みんなで話し合ったのは歌の力についてですね。僕個人ではなく、ほたる日和としての歌の力。それがあふれたものにしたいと思ってました。今回は感傷的な心から生まれる曲が多かったので、そこで弱い心に背を向けない表現をしたかった。曲の輪郭をくっきりと、例えば切ない曲なら切ない曲として、聴き手にもそう響くものにしたかったんです。

──タイトルにある“センチメンタル”もそうだし、“ノスタルジー”という言葉もキーワードですよね。あとは季節感。そのあたりは意図的に取り込んでる気がしました。

早川 そうですね。もともとは「雪虫~ふたりの約束~」が1曲目だったんですよ。「雪虫~」から始まって「東京組曲」で終わるっていう、つながり合うテーマを持つ2曲を最初と最後に置くストーリーを描いてたんですけど、歌詞の世界観的に「雪虫~」からというのも唐突かなと思い始めて、プロローグとして「春夏秋冬」を入れたんです。そうすることで季節感やアルバムの入りやすさもグッと増したんじゃないかと。

──季節感を前面に出した理由は?

早川 僕、日本の心をすごく大事にしてるんです。“和”って何だろうと考えたら四季折々の風景が頭に浮かびまして、日本に生まれて日本人として歌うならそれだと思ったんですよね。

──アルバムを作る上で苦労したことは?

早川 メジャー1作目だから、過去の曲はなるべく入れたくなかったんです。今回は13曲中8曲が新曲なんですよ。作るのはもちろん大変でしたし、候補曲も多かったし、絞り込むのに時間がかかりましたね。

──インタールードなしで、こうして13曲の力作がダレずに収まってるのは気合を感じました。

早川 気合はめちゃくちゃ入ってますね。ダレないようにいろいろチャレンジしてみたつもりです。僕らは今まで出し惜しみをしてこなかったし、ここでもベストを尽くすことを心掛けました。

──例えば、ダレないためのフックは?

早川 今回は大作が多いんですけど、ちょっとテイストの違う「プリン」っていう曲があるんです。曲調もそうですが、タイトルの付け方もあえて変にしたんですよ。“タイトルには違うだろ”みたいな違和感が好きですね。「さよならマーガレット」はいきなりAメロでドラムを抜き気味のアレンジにしてみたりとか。

──「雪虫~」の歌詞で人間のズルさを目立たせてるのもフックのひとつですよね?

早川 そう、僕はきれいすぎるものが好きじゃないんですよね。汚したい。

吉田 ほたる日和って音像はきれいなほうですけど、裏の部分が歌詞に入ることでより親しみやすいのかなって。例えば、恋愛映画だってハッピーエンドすぎだと、逆に“ウソだ!”って思っちゃうから(笑)。

──アンサンブルやアレンジで気を遣ってることはありますか?

吉田 この曲はこういう物語で、こういう景色で、色ならこういう色でっていう大まかなイメージを、まず言葉で早川に説明してもらうんです。だから、後ろの3人は同じ画を描きやすくて、その共通イメージから広げていくんですよ。そこに歌を乗せる時に、歌が前に出ることを意識してますね。

成相 イメージを聞いて、「水彩画」なら“白いカッターシャツの男の子だろうな”とか想像して叩いてます。

倉橋 ギターは遊ぶところは遊んで、全体的に力を抜くようにしてますね。力んだら聴いてくれる方もしんどいだろうし(笑)。

早川 シンガーソングライターって、たぶん全部ひとりでできるんですよ。でも、ほたる日和はバンドマジックが起こりますから。アレンジに関してはみんなでやるようにしてます。

──最後に、今後の展望を聞かせてください。

早川 もともとロックが好きな人間の集まりなんですけど、J-POPのシーンに僕らみたいなバンドがいてもいいんじゃないかなって思いますね。そういうシーンの中でやりながら、ちょっと違うんだっていうのを見せていきたいです。

取材:田山雄士

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