2013-07-21
【vistlip】6年培ってきた感性や技術がかたちになった作品
さまざまな音楽性を独自のスタイルでミックスした楽曲、鋭く迫る歌詞、智の甘く柔らかく激しい歌声…といった多様な魅力を放つvistlip。3rdアルバム『CHRONUS』を生み出す過程で、彼らはどんなことを感じたのか?
──ニューアルバム『CHRONUS』は16曲収録されていて、とてもボリュームのある作品になりましたね。
海「確かに曲数は多いんですけれど、バランスのいいアルバムになったと思います。自分たちのバンドのことを、この一枚である程度分かってもらえるんじゃないかな、と。」
──始まりを予感させる1曲目のインストから、2曲目は瑠伊さんの壮大な「TELESCOPE CYLINDER」がくるという。
瑠伊「これは智が“曲だけで世界観を伝えられる曲が欲しい”と話していたので、それに添えるような楽曲を作ろうと思ってできた曲ですね。」
智「自分の中ではここに集約させているというか、タイトルでもある“CHRONUS”の存在を最初に見せようと思って。“CHRONUS”は時間を司る神なのですが、「TELESCOPECYLINDER」で彼は必死に願いを叶えようとしたけれど、運命に負けてしまって。それでも“自分の幸せとは何か?”と問いかけ、その後の曲で生き抜くさまを見せ、アルバムの最後に答えが出るようにしました。」
──アルバムはバラエティーに富んだ楽曲が収められていますが、歌詞が一貫しているのでとてもまとまりを感じますね。
智「アルバムのテーマはシングルを作る段階から決めていました。ただ、シングルだけでは伝わり切れないと思ったので、その時は喜怒哀楽でつなげていたんです。喜怒哀楽の裏や、どうしてそうなったのかとか。細かい部分はアルバムのボリュームでしか紐解けないと思っていたので。」
──そこまでテーマが決まっていても、作曲はメンバーに自由に任せているのですね。
智「そこはメンバーを信頼していますから。“世界や絵が見える曲を持ってきてくれ”ということだけ伝えて。それぞれの曲がどの場面に当てはまるかを考えて、曲順を考えました。」
──制作スタイルは、メンバーによってどう違いますか?
智「海に関しては、実はすごく難しくて。唯一、デモに宅録の声を入れてくるんですよね。それも形容できない声で。」
Tohya「“ザ”っていうか。“ザリザリ”言ってますよ(笑)。」
海「よく分からない発音でやっちゃうんですよ。」
智「知らない国の言葉で歌っている感じなんですけれど、韻が心の中に宿っちゃって、歌詞を書く作業の時にしっくりこなかったりするんです。それがすごく困る(笑)。」
──なるほど(笑)。海さんが声を入れるのはこだわりが?
海「そのほうが手っ取り早いのと、打ち込みでメロディーを作っていても、自分の中で納得できないんですよ。なので、一回歌わないと。それに実際歌ってみると、息つぎやキーの高さとか、彼(智)がキツイところが分かるので。」
──海さん作曲の11曲目「RESET CIRCLE」は、バラエティーに富んだ楽曲の中でも特に異彩を放っていますが。
智「先日、最初のワンマンを再現したライヴをやったのですが、昔からうちらを観てくれた人に“智はラップしてなんぼ”といったことを言われて。“『CHRONUS』は全然ラップがないんだよな”と思っていたんですけれど、そういうところを海が唯一突いてきたので良かったです。」
──そして、5曲目はTohyaさんのダークで切ない「Dr.Teddy」。この曲からアルバムの雰囲気が変わる印象がありました。
Tohya「この曲は感情が音で分かる、伝わるように意識して作りました。いつも自分から智に“こういう曲だからこういう歌詞にして”とは言わないのですが、自然と理想の歌詞になっていて。歌声もイメージ通りで、自分が伝えようとしていた感情的な部分も彼に吐き出してもらい、ようやくイメージしていたものがかたちになった曲ですね。」
──智さんの歌詞はストレートな表現よりも、聴き手にじっくり考えさせる部分が多い印象があります。
智「自分が歌詞で目指しているのは、絵がありきだったりとか、映像になったら分かるというものなんですよね。だから、絵が浮かぶように作っていて、その絵が何であるのかはそれぞれ考えてもらいたくて。全てが明確になってしまうのは、あまりきれいじゃないと思っています。」
──6曲目はYuhさんの「Prey Shadow」。とてもインパクトの強い楽曲だなと思いました。
Yuh「シングルが結構おとなしめにきたので、自分はパンチのあるバンドサウンドな曲を出しておきたくて、9曲目の「aquamarine」も含めてギターロックを作ってきました。」
──「Prey Shadow」はMVを撮影されていますよね。
Yuh「そうですね。この曲はインパクトが強いし、短い間でもみんなに伝わるかな、ということでMVになりました。」
──ちなみにアルバムの中でライヴの時に手強そうな曲は?
瑠伊「全部、手強そうですね。毎回、ライヴのことをあまり考えないで録るし、その時のアドリブを入れたりするから、覚え直す期間が必要で(笑)。でも、今回のレコーディングに関しては、音作りに関して複数の人たちとやったので、ベースもさまざまな音を試せて。そういう意味でも、バラエティーに富んだ作品になったんじゃないかな、と思います。」
──改めてvistlipにとって、どんな作品になりましたか?
Tohya「アルバムとしては3作品目なんですけれど、それぞれのメンバーが今まで培ってきた感性や技術がかたちになってるなって。個人的にはインスト3曲にも、6年いろいろな音楽に触れてきた成果を出すことができたので。聴いていて世界観を感じられる、壮大な作品になったなと思います。」
──7月17日からこのアルバムを引っ提げたワンマンライヴツアーが始まりますね。
Yuh「「Prey Shadow」の歌詞で感じた部分もあるのですが、自分たちが引っ張っていって、その結果ファンの人たちが楽しめた、というライヴをしたい。自分たちが主体で、本当にバンドありきのライヴをこれからしていきたいです。」
取材:桂泉晴名
(OKMusic)
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