2012-05-20

【exist†trace】私たちなりのカッコ良い “VIRGIN”を聴かせられた一枚

 おどろおどろしくも甘美な匂いを放ち、聴き手を異空間へと誘う1stフルアルバム『VIRGIN』。“どんな曲がきてもこの5人でなら表現できる自信があった”と豪語する、メンバー間の信頼の上に成り立つ珠玉の13曲が詰まっている。

──狂気に満ちた美しさに引き込まれていく1stフルアルバム『VIRGIN』ですが、コンセプチュアルな作品になりましたね。

miko 今やりたいものを作ってみようという気軽な気持ちで始めて、だんだんコンセプチュアルになっていったというか。デビュー1作目の5TRACKS CD『TRUE』に収録されている「KISS IN THE DARK」でシャッフルビートに挑戦して、2作目の5TRACKS CD『THE LAST DAYBREAK』の「リトル・メアリーと美しき憎しみのドナウ」では可愛いらしいワルツを取り入れて、しかも私も歌ってみたり、ちょっと変わった楽曲を前2作でかたちにすることができたので、フルアルバムでは相当なことができるんだろうなっていうのは感じていました。

──確かに、あの2曲が誕生したことでバンドのキャパシティーが広がりましたよね。

miko 怖いものなしです(笑)。自信も付いたし、どんな変化球を投げてもメンバーがカッコ良い演奏をしてくれるという安心感がありますね。メンバーに初めて曲を聴かせる時も不安はなかったです。自分が今見ている方向をちゃんとメンバーも見てくれているから、あとはどこまでストイックになれるのかっていう制作期間でした。

猶人 mikoがそういうふうに思ってくれていたせいか、曲を初めて聴いた時に“自分はどこまでのことができるのか?”っていうのはあっても、“exist†traceでできるんだろうか?”っていう不安はなかったですね。今作は特にmikoの想像していたものが、自然とメンバーに伝わっていた気がします。

ジョウ 今までになかったテイストの曲も多かったので、自分たちにとってはすごく成長できた作品になったと思います。ヴォーカルとしては、だんだんmikoの書く歌詞の世界観が激しくなってきたのをこの一年ひしひしと感じていたので、何が来てもいいようにずっとファイティングポーズをとりつつ(笑)。例のごとく、レコーディング直前まで歌詞がなかったんですけど、今回はmikoの中で歌詞の世界観がはっきり見えていたから、まだ半分ぐらいしかできていなくても“こうしていきたい”っていう話し合いができたので、歌いやすかったですね。

──イメージを共有できると、曲の持つ空気感や色、全体のディティールまで再現しやすいですよね。

Mally しかも、今回は曲数もあるからいろんなexist†traceを見せることができた気がして。前作の選曲会などで泣く泣く漏れた曲も含め、アルバムのために録り下ろしたのが8曲ですからね。

──音色遊びあり、ジョウさんとmikoさんのヴォーカルの掛け合いあり、ホーンありと豪華なパーティーチューン「GINGER」には驚きましたよ。ストーリー同様、リズムもどんどん変わっていくのが楽しくて。

Mally クリックを聴いてるこっちは大変なんですけどね(笑)。緩急の付け具合が、まぁ難しい。

ジョウ 歌詞に《でも今回は譲れない 真剣勝負よ》ってあるんですけど、私はヴォーカルというこの場所を譲らないぞ!という思いで、ひとりメラメラしながら歌いました。歌詞はひとりの殿方を奪い合う内容なんですけど、その殿方を私は歌に置き換えてmikoと奪い合いました。

miko デモの時から打ち込みのホーンを入れていたので、ホーンセクションはゲストをお呼びして生音を入れました。バンドだけじゃないアレンジというか、ホーンありきのギターアレンジだったので新鮮でしたね。乙魅がホーンと同じフレーズを弾いたりね。

乙魅 今までにないプレイをするのは、やっぱり楽しいですね。聴いていただいた通り「GINGER」に限らず、一曲一曲の世界観や特徴がはっきりしてたので悩む部分もあったんですけど、いろいろ勉強にもなり、吸収したものが多いです。

──ホーンを入れてのライヴも観たくなりました!

Mally 録ってる時から思ってたんですけど、『VIRGIN』の曲って“この音が鳴ったら、こういう演出をして”みたいなライヴの構想が膨らむ曲ばかりなんです。「シグナル」はヤッホイな感じだから、絶対ライヴで活きる曲だろうし。いかにビートを崩さずに勢いを出すかとか、迫力あるパフォーマンスを考えるので、早くライヴで披露したいですね。

──物語調に進んでいく「契約」は、主人公の葛藤が見事に描かれていますよね。

miko 全曲、同じだけの愛情を注いでいるのですが、どうしても力が入っちゃった曲です。ヴァンパイアをテーマにした曲なのですが、その葛藤というか…永遠の命に焦がれてヴァンパイアになったけれど、生き続けなければいけない孤独があったり、誰かを愛しても先立たれてしまうと知っているのに、その人を欲してしまったり…そこに美学なるものを感じるんです。

──色っぽいんだけど、どこかほくそ笑んでるダークな部分が見え隠れする「あなた」でのジョウさんの歌声、迫力ありますよね。

ジョウ 歌録りの時間は一番短かったんだけど、その短い間に全神経を集中させたんで、最後は魂抜けちゃってました。

猶人 いろいろ持っていかれそうになる曲。ヴォーカルに持っていかれるし、ギターのサビのフレーズ、後半のドラムの熱、自分のベースも好きなんで、どのパートにも引き込まれる曲だと思います。

──「二つの声」は乙魅さん作詞作曲で。

乙魅 大切な一曲になりました。すごいストレートな思いが込められていて…傷を抱えた主人公と“君”がいるんですけど、これはexist†traceとイグファミリーとの関係を歌っています。

──歌い出しがパンチ効いてますよね。

ジョウ 出だしの“あぁ”がイメージと違っていたみたいで、乙魅から“もうちょっと強く”って静かにお説教を受けました。

乙魅 力強い思いを込めた曲なので、歌い出しも力強さが欲しかったんです。

──満場一致で納得のいく処女作が完成したわけですが。

ジョウ “VIRGIN”ってタイトルなのに初々しくないねって誰かに言われたんですけど(笑)、私たちなりのカッコ良い“VIRGIN”をみなさんに聴かせられた一枚じゃないかと思います。

取材:ジャガー

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