2012-01-20
【YUKI】イメージは先の物事に ちゃんとつながっていく
ソロデビュー10周年を記念して、この10年間に発表した全シングルのタイトル曲と未発表音源や新曲を収録した2枚組コンプリート・シングルコレクション『POWERS OF TEN』をリリースする。
──2012年2月にソロデビュー10周年アニバーサリーイヤーに突入しますね。
私がソロになったのはちょうど30歳の時だったので、この10年間は30代のYUKIの歩みでもあるんです。今、改めてこの10年を振り返ってみると、私は人として人をちゃんと許して、人にやさしく、そして人にもやさしくされて、ちゃんと愛して、人にも愛されてきたのかな、間違った道に逸れていないかなと、いろいろな思いが巡ります。
──でも、ヴォーカリスト・YUKIは、この10年間どんな状況にあっても、ずっと歌い続けてきた。コンプリート・シングルコレクション『POWERS OF TEN』は、それを教えてくれたのでは?
そうですね。お休みをいただいた時期もありましたけれど、私はずっと歌っていたんだなと思いました。
──ソロになって初めて経験することも多かったでしょう?
最初の頃は、バンドとソロではこんなにレコーディングのやり方が違うんだと戸惑うことばかりでした。例えば、バンド時代の私はメンバーがレコーディングしている間は歌詞を書いていたし、大雑把に言えば、私は歌入れの時だけスタジオにいればよかった。バンドの音の中で歌うことが当たり前だったので、オケの音によってどう歌が変わるのかをまったく意識したことがなかったし、ミュージシャンによって音が変わるということさえも知らなかったんです。『PRISMIC』(1stソロアルバム)を作っていた頃の私は不慣れなことばかりだったということもあるんでしょうけど、途方に暮れることが多かったですね。でも、私はあの戸惑いがあったから、自分はソロになったんだと、ちゃんと自覚することができたんだと思います。今思うと、2ndアルバム『commune』までの私は漠然とですけど、小さな会場でライヴをやろうと思っていたので、大きな会場でライヴをやることは考えずに曲を作っていたような気がします。バンドでスタジアムクラスの会場でライヴをやっていた人が、どうしてそんなふうに思っていたのか分からないんですけど(苦笑)。でも、自分の中のイメージはイメージ通りになるんです。3rdアルバム『joy』は武道館でライヴをやろうというイメージを持って作った作品でしたし、6thアルバム『megaphonic』を作っている時は、頭の中にアリーナクラスの会場が見えていたから実現した。自分のイメージは、先の物事にちゃんとつながっていくんだというプラスの連鎖のようなものを、私はこの10年間で学ぶことができました。
──今やライヴに欠かせない定番曲になった「ワンダーライン」も、アルバムに初収録されましたね。
作っていた時は、こんなにライヴで盛り上がる曲になるなんて思ってもいなかったです。この曲の歌詞は意味が分かりにくいけれど、聴いた人がそこに描かれている何かを受け取ってくれた。たったひとつの言葉からつながりを感じて、自分なりに歌詞を解釈していくものなんだということを『ワンダーライン』は教えてくれました。
──今作には未発表音源が3曲収録されましたが。
『MY HAND』は亀田誠治さんにサウンドプロデュースをお願いしたんですけど、当時の私はプロデュースをしてもらうということの意味も、自分の曲がどうなっていくのかもよく分かっていませんでした。自分でキーボードを弾いて、ただ歌っていただけのデモだったのに、亀田さんのアレンジでこんなにも素敵な曲になるんだ、曲ってこんなふうにできるんだ、すごい!と驚いたんですよ(笑)。この曲はソロとして初めての制作が始まるタイミングにレコーディングしたので、声はソロデビュー前の声ですね。とても細い声だけど、ツヤツヤしていていい声で、10年間で声ってこんなに変わるものなんだなと思ってビックリしました(笑)。『大人になって』は、2ndアルバムのレコーディングの時に録っているので、アイゴンさん(曾田茂一)がプロデュースした曲ですね。『Rainbow st.(super session)』は、1stアルバムに収録されている『Rainbow st.』のオリジナルバージョンです。ズボンズは延々とセッションを続けていく中で曲を作り上げるバンドなので、私もそのセッションの中に飛び込んで歌を即興で入れました。最後の延々と続くセッションには私の歌は入っていないけれど、私はその場にいます(笑)
──新曲「世界はただ、輝いて」は、このアルバムに収録するために書き下ろしたそうですね。
はい。ピカピカの新曲です。ソロデビューから10年経った自分を祝おう!と思って、10周年の感謝の意味も込めて歌詞を書きました(注・歌詞には、YUKIがこの10年間に発表した曲のタイトルがいくつも入れ込まれている)
──“POWERS OF TEN”というタイトルには、どんな思いを込めましたか?
10周年に出すアルバムには、“10”という数字を使いたいと思っていたんですけど、“POWERS OF TEN”という言葉しか思い付かなかったんです。もともと私がこの言葉を最初に知ったのは、レイ・イームズとチャールズ・イームズという建築家でありデザイナーでもあるご夫婦が制作した映像作品『Powers of Ten』だったんですよ。“POWERS OF TEN”は直訳すると“10の力”ですけど、数学用語では10の10乗をどんどん繰り返すという意味があるそうです。私のこの10年の力、私を支え続けてくれた音楽の力、YUKIを好きでいてくれる人たちの想いの力。私のこの10年間にはたくさんの“10の力”が働いていたことに対する“ありがとうございます”という感謝の気持ちを込めました。
取材:松浦靖恵
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