2011-11-20
アカシアオルケスタ、現在、過去、未来 それぞれの自分自身との追いかけっこ
過去、現在、未来…今があるのは過去の自分がいたから、今の積み重ねが未来を創っていく。だからこそ、“今”を必死に生きる…。強力なインパクトを聴く者全てに与えた前作『タイクツシノギ』から1年。メンバー個々にさまざまな体験をし、それを心血込めてソングライトに注ぎ込み作り上げた力作がズラリと並ぶ。先行配信シングル「ステージ」「愛撫」「アカツキ」他、全12曲収録! 藤原 岬(Vo)にインタビューを敢行!
アカシアオルケスタのバンドとしてのポテンシャルの高さは、一度聴けば誰もが納得する。それはデビューアルバムを聴くだけでも十分に伝わってくるものだった。関西を中心にした彼らの活動エリアが、アルバムリリースを機に一気に全国区へと広がったことでもよく分かる。ことに東北・仙台での彼らの受入れられ方は、地元関西をも凌ぐものだった。だから、あの3.11東日本大震災はアカシアオルケスタにとって、大きなショックだったという。
──「震災が起きたのが、ちょうど仙台に行こうとしていたタイミングだったんです。メンバー個々に相当ショックを受けて。私自身も人間関係を含めた部分で大きなショックがありました。仙台で応援してもらっていたということも含めて、震災は私たちに大きな影響を与えました。周囲のバンドはライヴをキャンセルせざるを得なくなったりしていましたが、私たちは続けていこう、決まっているライヴは全部やり切ろうと。そして、募金というより、活動を続ける中でCDを買ってもらったりした売り上げのいくばくかを被災地に届けたいと考えたんです。北川は個人的にボランティアで被災地に入ったりもしていました」
アカシアオルケスタは6月、満を持して仙台で復興支援のライヴを行なう。それもストリートライヴ。
──「もう、うれしくて、うれしくて。夢みたいでした。ライヴの前日に私のブログに仙台の女の子から“ずっと待っていました。無理だと思いますが、言わなくて後悔するよりもとりあえず伝えたい。『エナジー』という曲が聴きたいです”とメッセージが届いて。古い作品ですからセットリストには入れていなかったんですが、当日になって急遽演りました。そしたら演奏中に泣いている子がいて。“あ、もしかしてこの子なのかな”と。古い曲を知っていて、その曲を聴きたいと言ってくれるファンがいることに、本当に感激しました。みんなが“仙台に来てくれてありがとう”と言ってくれましたが、こちらこそ“待っていてくれてありがとう”という気持ちでいっぱいでした」
“震災で確実に変わった部分がある”と藤原は言う。それは言葉で言えば、前作が“今だけ”という言葉が当てはまるのに対して、ニューアルバムは“未来に向かっていかなければならない”部分が表現されているというのだ。その部分に関して北川がこんなことを言っている。過去、現在、未来…今があるのは過去の自分がいたから、今の積み重ねが未来を創っていく。だからこそ、“今”を必死に生きる、そんな想いで作ったアルバムだと。仏教で言うところの“因果律”を根底に据えたような想い。それは藤原の書く詩に色濃く表れている。
──「個人的には、過去に例を見ないくらい歌詞にのめり込んで作りました。強い思い入れがあります」
やはり北川は、この点に関して“真摯に心に迫ってくる”と言い、“藤原の生きてきた、今までと、これからが詰まっているんだと思います。生きざまが歌に出ている”と評する。配信限定リリース第2弾「愛撫」の詞に関して藤原はこんなことを言った。
──「阿部定の事件、恐ろしいけれどものすごく共感できる部分もある。狂気的に人を愛していくこととか、最期をその瞬間で終えたい気持ちだとか、まったく綺麗事とかけ離れたことだけれど、すごく羨ましかったり…。だからといってそうなりたいとは思いませんが、突き詰めると私が書きたいことってひょっとしたらそういうことだったのかなと」
アルバムのレコーディングは、8月からおよそ2カ月をかけて録ったという。
──「2012年に向けてアカシアオルケスタは始動するというメッセージを込めて、配信限定の3曲を7月に先に録り、一旦レコーディングを中断してプリプロ作業を行ないました。曲は2月くらいから創りためてきて5月には16曲くらいは上がっていました。先行した3曲以外の9曲を8月から録りました」
配信とCDというメディアに関して、藤原はこんなことを言った。
──「配信も良いけれど、たまにはジャケットを手にとって聴いてもらえたらうれしいな。曲間のインターバルにまで気を配って作るものなんで。曲を1曲単位で買えるのは良いことだけれど、盤面(コンセプト)として聴いてもらえるともっとうれしいかな」
そして、問題はその内容だ。“言葉”というと口先で止まってしまうイメージがあるが、その連なりや響きを考えると無限に広がっていくものでもあると、そういう“言葉の持つ力”を感じさせる作品に仕上がっている。それは“言葉遊び”としても楽しめるものになっている。
──「前作の『タイクツシノギ』よりもタイクツシノギのできるアルバムになったなと思います(笑)。全部含めてアカシアオルケスタということで」
例えば「愛撫」を聴いていると“愛撫して愛撫して”と歌っているような部分がある。だが文字面を見ると《I’ve stayed》となっている。“愛撫してもっと奥でいかせてよ”と聴こえる部分の文字面は《I’ve stayed もう遠くへ行かせてよ》。
──「聴く言葉と目で追う言葉は違う、そういう意味で言葉を2度楽しんでもらえたら良いなと思います」
ニューアルバムの出来を、他のメンバーはどう評価しているかと聞いてみた。
──「カッコ良いしか言ってないですね(笑)。4人そろえば何かが起きるという自信はある。何をやったところでブレないという自信。北川は“オレの音で始まってオレの音で終わっているアルバム”と言うに違いないですけどね(笑)」
まったく! 本当に本人たちの言う通り“カッコエエ!”としか言いようがない仕上がり。確かな自信を感じるし、余裕綽々で遊んでいるイメージを持つぐらい軽やかで力が余っている、そういうカッコ良さ。最後のひと言もカッコ良かった!
──「人生、メカシテなんぼです。私たちの『メカシドキ』を、楽しんでください!」
取材:加藤 普
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