2011-10-20

Administrator、バンドにとって幅を広げる良い機会

“日本のロックのスタンダードになっていきたい”と力強く話をしてくれたAdministrator。作品を完成させた今、彼らは何を思い、そして何を企んでいるのか…。今回は、渾身の1stアルバム『CROSS』の全貌を紐解いていく。


 【未来も感じさせられるような 曲たちを入れたい】

──まずは、作品が出来上がった今現在の素直なお気持ちをお伺いしたいのですが。

Takuya 曲順、全体のバランス、制作過程…全てが理想通りというか。いろんな曲調があって、歌詞も感情の浮き沈みをちゃんと汲み取ってるし、プレイにも熱が入りましたね。アプローチの仕方や感じ方はメンバー個々でも違うんだけど、どういう作品を作るかを最初に話をした時に同じ方向を向いてるんだなって実感ができたんですね。そんな作品だからこそ、早く聴いてもらいたいです。

公佑 アルバムっていうのは、バンドにとって幅を広げる良い機会だと思っていて。『CROSS』をレコーディングして、こうやってちゃんと作品になったってことは、この先にできる新たな曲たちに絶対活きてくると思うんですよ。これから生まれるであろうAdministratorの楽曲の糧として、ライヴ音源含めて15曲がしっかり枝分かれして根を張ってほしい。

──前回の取材で、“『CROSS』を聴けばAdministratorというバンドに納得してもらえる”とおっしゃっていましたが、制作当初からそのようなコンセプトを掲げていたのですか?

芥 いや、あまり細かくコンセプトは決めてなかったですね。結果的に“Administratorの1stアルバム”って…まぁ、そのまんまなコンセプトに落ち着きはしたんですけど(笑)。

龍 コンセプトが言ってみると結構自由で、しかも初めてのフルアルバムってことで正直不安もあったんですけど、何曲かこなしていくうちに自信から確信へと変わっていきました。苦労する部分もあったんですけど、楽しんでレコーディングに臨むことができたのが大きいですね。

公佑 今まで築き上げてきたものは必ず見せておきたかったけど、だからと言ってベスト盤にはしたくなくて。過去と現在、そして、これから先の未来も感じさせられるような曲たちを入れたいとは思ってました。そう考えると、「Fall to Earth」や「パーティードレス」、「無力なてのひら」はどうしても必要でしたね。バンドとしても成長したいし、こういうこともできるぞって示したい。常にチャレンジし続けたいという気持ちで、聴き馴染みのある曲をぶち壊す威力を持った曲も収録しました。

芥 僕としては、昨年末からバンドを取り巻く環境の変化であったり、社会的にもいろんな出来事があった中、言葉にしたいことが山ほどあったんで、アルバム一枚を通じて心の葛藤…ドラマを書きたかった。僕の中で渦巻く思いを軸に、人の深い部分について書きたくて、ギリギリになって歌詞を書き換えた曲もあるぐらい、僕のリアルタイムな言葉が詰まっています。

──多面性のある歌詞ですよね。捉える角度を変えれば、さっきとはまた違った意味を示すんですよね。

芥 聴く人のその日の精神状態次第で、背中を押してくれる曲であり、戒めの曲であり…確かに今回は多面性があって、ギミックも多く含んでいるので、いっそう楽しめるんじゃないですかね。

──レコードのA面、B面のように「an ordinary person」を基点に雰囲気が変わりますが、そこは意図した流れだったのですか?

公佑 言われてみれば、確かに。でも、曲順は自分たちの理想に近づけていったらこうなったというか。あまり悩まずに組んだんですけど、そこを目指していたわけではないです。どの曲を『CROSS』に収録するか決める時に、理想の完成図を思い描いていたので、“この曲は何番目”っていうのも自然にあったというか。ただ、1曲目の「Fall to Earth」と12曲目の「無力なてのひら」だけは、最初と最後に配置することを念頭に置いて作った曲です。


 【ひとつ指針が決まれば とことん探求していく】

──そんな1曲目「Fall to Earth」は、これから始まる宴を前にどんどん奥へ導いてくれる曲でした。この導入があるからこそ、どっぷりと世界観に浸ることができたのかなと。

公佑 「Liberation」とか「Trust」をど頭に持って来ても、これまで通りの自分たちらしさが表現できているので有りっちゃ有りだったんですけど…収録曲それぞれに思い入れが強い分、よりメッセージを聴き手に染み込ませるためにも1曲目で気持ちをフラットにしてもらいたかったんですよ。“この曲の後に何が続くんだろう?”って思っていたら、攻撃的な「Liberation」が鳴るから、そのギャップが余計刺さるだろうし。

──ギャップと言えば、「パーティードレス」ではないですか?心温まる良い曲なんですけど、こんな曲をするのかっていう衝撃が大きくて(笑)。

芥 “おっ!”や“んっ!?”って、一度は絶対なりますからね。みんなとほんわか楽しみたくて作った曲なので、早くライヴで驚かせたいです。

Takuya いつもの激しくて重低音が響く感じの曲とは、絶対盛り上がり方も違うじゃないですか。しかも、この曲調は僕らのいるジャンル的に少なそうなノリだと思うんですよね。“お化粧してる人たちがこんなポップでいいのか!?”って、僕個人の印象としてはあったんですけど、こういう曲の楽しみを聴き手に教えてあげてもいいんじゃないかって。

芥 ずいぶん、発言が上からだね(笑)。

公佑 “俺様が教える”ってことでしょ?(笑)

Takuya 驚くかもしれないけど、「パーティードレス」もゼロから生まれたものじゃないんですよね。僕たちの中にあった要素だから、そういう意味では他の曲と対して変わりはないんですよ。

芥 作った僕よりもそんなに語っていただいて、ありがとうございます。

Takuya でも、最初は大変そうだなって乗り気じゃなかったんですよね。選曲会の時に“ここに「パーティードレス」が入ったらいいよね”って話になった時に、客観的に見ると全体のバランスも取れるし、挑戦にもなるから絶対良いと思うんだけど…みたいな。ただ、バンドの成長を俺ひとりが止めるわけにはいかないって気持ちに切り替わった瞬間、“こんなの朝飯前!”になるんですよね。バンドから外れた時のTakuyaくんはモジモジしてるんですけど、バンドのこととなれば輝きますから。もうひとつ、俺がモジモジしていたのが龍くん作詞作曲の「エンゼルランプの涙」。“嫌いだー!”って冗談まじりにずっと言ってましたからね(笑)。昔、こういうタイプの曲をやったことがあったんですけど、その時なかなか馴染まなくて苦手意識が付いちゃってたんですよ。ただ、これも月日が流れて、久々にやってみたら朝飯前だったっていう(笑)。踏み出すまではモジモジしてるんですけど、俺ってそんなにビビらなくてもいいんだって気付いてからは心境が変わってきましたね。人は変われるんですよ!

──(笑)。いつもとは趣向の違った曲をここまで振り切って仕上げてこれるのもバンドとしては強みになりますよね。

芥 そうですね。どの世界観にも染まることができる…意図して染まれる力を持ってるヤツらなんで。ひとつ指針が決まればとことん探求していくので、そういう凝り性で音楽でしか表現できない不器用な自分たちの生き様を『CROSS』には映し出せてるのかなって思います。

──しかし、まさか「RED EYES」へ続くとは思いませんでしたよ。一気に混沌とした世界に突き落とされたような…(笑)。

芥 この順番は結構好きで。妄想を繰り広げる「パーティードレス」の主人公って、一歩間違えると「RED EYES」の猟奇的な面を持ち合わせているんじゃないかなって思うんです。“あぁ、毎日なんか嫌だな”って妄想していても、それ以上にフラストレーションが溜まっちゃって、自制が効かなくなってしまうという。

公佑 いいじゃん! 何でもっと早くに言ってくれなかったの? 「パーティードレス」と「RED EYES」はそういう設定で作りました。

──え? 今ここで決定ですか?

公佑 書いてる人間が違うし、“すげぇ緻密に計算してるな、こいつら”って思われるよ。

──では、そういう裏設定もありつつ(笑)。

芥 まぁそういうことに今なっちゃいましたけど(笑)、とにかく良い並びです。人間の表と裏、それこそ僕が書きたかったことが際立っている部分ですね。

──シンプルながら、一音一音に重みを感じた「again」はいかがですか? こういうかたちのバラードは今までになかったように思うのですが。

公佑 綺麗な演奏で情感を大切に歌い上げるバラードはシングル「Shining!」に収録した「ハザクラゴーラウンド」っていうのがあるんですけど、ちょっと違ったテイストのバラードがあってもいいかなって。

芥 この曲は音の引き算がすごく上手くできてるんですよ。それぞれのパートがよく聴こえてきます。内容は、近しい人の訃報を受けて少し書き変えていて。僕としては、誰に向けて何をどう歌いたいのかっていうのを再確認させてもらった曲でもあります。

龍 ドラム録りの一発目が「again」だったんですけど、すごい大好きな曲で気持ちを込めて叩けたのが他の曲にも良いようにつなげていけたのかなって思います。

芥 彼は良いドラマーですよ。

全員 (笑)。

公佑 師匠かよ!

──ラストの「無力なてのひら」は、楽器ひとつひとつがしっかり主張して、サウンドに厚みがありますよね。佳境に差し掛かる後半では、じわじわと熱が込み上げてくるような感覚になりました。

公佑 みんなソロみたいな感じですよね。この曲は特に芸術作品として完成させたかったので、ヴォーカルも楽器と見立てて、4人で演奏しているイメージなんですね。自分もこれまでのセオリーだった“基本的にギターソロを入れない”っていうのを取っ払いました。あんまり入ってないよねって言われるんですけど、僕の中ではわりと多めに入れてるんですよ。ギターソロなんですけど、一曲中でヴォーカルが抜けるわずかな時間に聴こえるところで、実はバックでは楽器隊がこういうことをやってましたってぐらいのギターソロを狙いました。自分が目立つこと以上に、この曲のためにどうすることが最善なのかを大切にした結果ですね。

──全曲聴き終えた後に“CROSS”というタイトルを目にすると、より深々と納得できました。ちなみに、アルバムタイトルはどうやって決まったのですか?

芥 全部録り終わった後にどうしようかって。これも最初は体のいい言葉が並んでたんですけど、ぽんと出した言葉が“CROSS”で。意味合い的にも、いろんな人の思いがあってバンドは存在しているので、何重にも交差した中心の一点に、このアルバムがあるようにという願いを込めて名付けました。最終的な仕上げは、聴き手のみなさんが仕上げてくれたら良いと思っているので、自分なりに彩ってもらえたら嬉しいですね。

取材:ジャガー

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