2011-09-20
フジファブリック、自分たちのスタイルを早く確立したい
一昨年亡くなった志村正彦のデモをもとに作られたアルバム『MUSIC』を経て、3人体制となったフジファブリックの新作アルバムが完成! “STAR”と題されたこの作品で彼らが目指した光指す音楽世界とは果たして!?
──前作『MUSIC』は亡くなった志村くんが残した素材をもとに作り上げたアルバムでしたが、今回は完全なオリジナルということで、不安に感じることはありましたか?
山内 フジファブリックは志村くんを中心に集まったバンドだったので、その彼が亡くなった後、“もう一度、音楽をやろう”っていう気持ちを原動力に活動続行を決めたんです。もちろん、そこに賛否両論あることは自分たちもよく分かっているつもりですし、聴いてくださるからこそ反応があるわけで、不安に思うことはなかったですね。
──『MUSIC』リリース以降、今回の作品制作はどのように進めていったのですか?
金澤 何をやろうとは決めずに、3人での話し合いの中で“まずはスタジオに入ってみよう”ってスタジオに入ったのが10月ですね。前からあった曲、それぞれが作った歌詞もない状態の曲を試しに演奏してみたんです。
山内 その時はメンバー間の照れももちろんあったんですけど、それ以上にスタジオに入るのが楽しかったんです。だから、そこで誰がヴォーカルを担当するか決めないまま、それぞれ曲と歌詞を作ろうってことになったんです。
加藤 そして、みんなが持ってきた曲を踏まえた上で、“こういうものもあったらいいよね”っていう曲をさらに作っていったり。
山内 今回のアルバムで言うと、例えば、「スワン」とか「Splash!!」みたいな、アップテンポでピアノや鍵盤が入ってる曲は他ではあまり聴かないし、そういうところにもフジファブリックらしさがありますしね。
──3人で歌詞を書いた「君は炎天下」のぶっ飛んだ言語感覚も実にフジファブリックらしいというか、これまでのフジファブリックが担ってきた一側面でもありますよね。
加藤 この曲は僕がさらっと書いた歌詞を、レコーディングにあたって、“これ、作詞をフジファブリックっていうことにして、3人で手を加えたらどう?”っていうことで分担して手を加えたんです。今回のアルバムでは、3人の共同作業で歌詞を書いてみることもひとつのテーマとしてあったので、以前から存在していて、イメージが共有できているこの曲を題材に、“どんどんはみ出していこう”っていうベクトルで作業していったんです。
──そういう意味では、3人にフジファブリックらしさが染み込んでいるというか、亡くなった志村くんがすぐそこにいる感じというか。
金澤 そう、志村のことは思い出すって感じじゃなく、そこにいるって感じなんですよね。
山内 “志村くんだったら、何て言うんだろうね?”なんて話をしつつ、彼はそこにいるんですよね。そして、ずっと一緒にやってきたこともあって、僕らの中の共通言語は多分、家族以上にあるんだと思いますしね。
──そんな中、まとまった作詞作業は3人にとって初めての体験だったと思いますが、それぞれ作詞作業を通じて言葉と向き合ってみて、いかがでしたか?
山内 まとまった作詞作業は今回が初めてだったんで、3人が書いた歌詞を真心ブラザーズの桜井(秀俊)さんに目を通してもらったんです。桜井さんからしてみれば、すごい大変だったと思うんですけど、そんな役割を担っていただきました。
──歌詞の面では加藤さんが大活躍ですよね。
加藤 ありがとうございます。例えば、「スワン」なんかがそうなんですけど、僕の歌詞は風景描写を重ねていくやり方が好きだったみたいですね。
金澤 そういう意味では、自分のスタイルを早く確立したいなと思いますね。ただ、歌詞を書く中で自分なりの楽しさが見えてきましたし、歌詞を中心に音楽を聴くと、その曲の聴こえ方も変わってくるので、こういうやり方での作詞は今後も面白くなっていくんじゃないかなって。
──その歌詞を山内さんがメインヴォーカルとして歌うことに決めたのはどの段階だったんですか。
山内 あれは大震災の直前かな。もちろん、それ以前も考えていたことではあるんですけど、打ち合わせの後に飲みに行った時、“僕が歌うわ”って話をしたんです。それを境に、頑張らないとなって思いつつ、最初はリスナーのことまでは想像できていなかったんですけど、リハーサルを繰り返すうちにイメージできることも増えていって、日に日に思いが強くなっていったところもあるし、逆に良い意味で力が抜けたところもあったり。もちろん、自分なりに楽しさを感じるからこそ歌っているんですけど。と同時に、今は志村くんの歌にしろ、今の曲にしろ、格好付けずに自分の思いをちゃんと伝えなきゃなって思っていますね。
──3人にとって初めての試みも多かった中、どんなアルバムを作りたかったのですか?
金澤 今までのフジファブリックと全部が同じだし、全部が違いますしね。まぁ、サウンド面はたぶん大丈夫だろうと思っていたので、歌詞も含めて、大きな方向性として、後ろ向きじゃないもの、楽しい感じのアルバムになったらいいなって。そういうイメージは頭の中にありました。
加藤 1曲目の「Intro」に続く、「STAR」はフジファブリックを続けていこうと決めた時、“バンドを続けるということはライヴもやるってことだよな”っていうところで、ライヴをやるなら腰を据えて、爆発的な音をドンと出すことができたらいいなと思いましたしね。
金澤 そして、アルバムが完成して、ここから先は何でもできるなって。自分にとっては自信になる一枚ですし、このアルバムに入っている12曲がライヴでどう発展していくのか。ライヴの反応もまた次の作品に反映されるでしょうし、今は11月から始まるツアーが楽しみですね。
取材:小野田 雄
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