2014-04-14

水樹奈々、フリーダムを超えた先にある自由を手に入れたアルバム!

 昨年はT.M.RevolutionとのコラボでNHK『紅白歌合戦』に5年連続で出場するなど、幅広い活動で話題を集めた水樹奈々が、1年4カ月振りのアルバムをリリース。次のステージに向け、さまざまなチャレンジが込められたアルバムになった。


 【水樹自身の作詞作曲はメタルにチャレンジ】

──ニューアルバム『SUPERNAL LIBERTY』は新しさがありつつ、これまでの流れもしっかりあって、タイトル通りの非常にバラエティーに富んだ作品で。T.M.Revolutionさんとのコラボなど、昨年の多彩な経験が反映されたものになりましたね。

昨年は私にとって、物作りに対してより積極的に突き動かされるエネルギーをたくさんいただいた1年で…。その濃密な時間があったからこそ生まれた作品だと思っています。昨年はまずオーケストラ・ライヴに始まり、座長公演、夏の全国ツアー、西川さんとのコラボ、初の海外公演…とスペシャルな経験から刺激をたくさん吸収し、自分の声と融合して生まれる科学反応をたくさん体感しました。そうした融合、刺激、感情の解放を感じるたびに、早く新曲が作りたい!という衝動が沸いて。本当にいいテンションで、制作に臨むことができました。

──1月の『NANA WINTER FESTA 2014』でいち早く披露していた、「Ladyspiker」も収録されていますね。マイクスタンドを使ったパフォーマンスが印象的でした。

すごくカッコ良い歌謡ロックだったので、いつもとは違うパフォーマンスができたらと思いました。マイクスタンドの使い方は、サポートバンドのチェリーボーイズのみなさんからレクチャーしていただいたのですが、最初は重くて持ち上げるのも大変で(笑)。様になるまで、すごく練習しました。

──歌い方はちょっと悪っぽいというか、巻き舌っぽい雰囲気で、それがすごくカッコ良くて新鮮に聴こえました。

斜に構えて、低音を響かせるイメージで歌いました。実は今作には大きなテーマがあって。それは“レトロ&フューチャー”。昔からある素晴らしいものと、現在の多様性を持ったさまざまなジャンルの音楽が融合したら、きっと新しいものが生まれるんじゃないかと。ただ、それを実現させるためには、核にシンプルで力強いメロディーがなければならない。そこで突き詰めていった結果、歌謡曲のようなメロディーに辿り着きました。それで、どことなく昭和感が漂う曲が自然と多く集まって…なので、裏テーマは“昭和”です!(笑)

──昭和感で言うと、水樹さんが作詞された「哀愁トワイライト」は曲調も歌詞も、まさにという感じですね。

はい! デモを聴いた瞬間、演歌のような悲恋に身を投じる、日陰の女性のイメージが浮かんで(笑)、タイトルもひと目見て昭和のムードが漂うものがいいと思って考えました。情熱的だけれど切なくて、燃え上がっているのに寂しさが漂う…そんなもどかしい温度感を表現しています。今回作詞した楽曲は、どの曲もスッと言葉が出てきて、作業がすごくスムースでした。

──唯一苦戦されたのが、水樹さんの作詞作曲による「アパッショナート」だそうで。アレンジがすごくアグレッシブですね。

今回、三嶋プロデューサーから“メタルにチャレンジしたら?”と提案があって。作曲するジャンルを指定されたのは初めてでしたし、しかもメタル! いろいろな曲に触れて、野性味あふれるエネルギーを放出できるようにとお肉をいっぱい食べてみたり(笑)、いろいろ試してもなかなか降りてこなくて。

──では、何が突破口を開いたのですか?

メタルの曲を聴いていく中で、メロディーラインがどことなく歌謡曲に通じるものがあることを発見して、そこから開けていきました。だからと言って、そこだけをピックアップするのではつまらないので、私らしいチャレンジを採り入れてみようと思って。そこで、オープニングはギリシャ神話の神々が浮かぶような壮大な雰囲気で、メロディーはオリエンタルなムードに。さらに、北欧や南米の民族楽器も取り入れました。

──歌詞はメタルの力強さもあってか、すごくパワフルでメッセージ性の強いものになっていますね。

アルバムのタイトルに寄り添ったかたちで書けたらいいなと思いました。アルバムの制作にあたって、“リバティー(=自由)”という言葉が最初に浮かんで…リバティーは、フリーダムよりさらに上の自由を表す言葉で、それは抑圧された状態から自由を求めるのではなく、すでに自由な状態からさらに解放された、その先にある自由で…。自分の中には無限の可能性が広がっていて、それを解放することで、素晴らしい未来に出会えるんじゃないかなって。 “自分を信じて突き進め!”という、メッセージを込めました。これは私自身の経験でもあるのですが、以前は“これが自由な状態だ”と思い込んで、その枠の中で自由になっていただけだったんです。でも、その枠を取り去った先に、もっと大きな自由があると気付けたのは、3年前に自叙伝を書いたことがきっかけでした。本当の意味での解放を知ってからのこの3年は、音作りや表現することがどんどん楽しくなって…。そんな中、去年の活動で得た融合や刺激が大きなエネルギーになり、これからもっと新しいことが始まりそうだ、と気持ちが高まっていたところでの制作でした。そんな私自身の体験を通してのメッセージが、みなさんにとっても応援ソングになるとすごく嬉しいです。この時期、新生活を始められた方がたくさんいらっしゃると思うので、“よっしゃ、やってやるぞ!”と立ち上がる時に、ぜひこの曲をお供にしてください!


 【ラストは歌とアルパだけ 10枚目だからこそのチャレンジ】

──アルバムを4月にリリースするのは、今作が初めてですが、そういう時期的なことも考えましたか?

はい。1曲目の「VIRGIN CODE」はまさに新しい場所へ挑むような気持ち、未開の場所を自分で切り開いていくという意志表明が込められています。この曲を録った時のことはすごく印象に残っていて…何か新しい扉を開けたような感覚がありました。それは、私だけでなく三嶋プロデューサーをはじめ、その場に居合わせたスタッフさん全員が感じたことで…。この曲はトップの音がFで、普段は勢いでいくか裏声でないと出ない音なのですが、この時は曲のエネルギーに後押しされてか、地声で無理なく自然に出せたんです。それが自分自身でもすごくびっくりしてしまって。人間の持つ可能性を身をもって知った出来事でした。しかも、歌っている時は楽しくて仕方がなくて、終始笑顔でライヴの終盤に達するある種のトリップ状態のような、解き放たれた状態だったんです。レコーディングは冷静さを求められる部分が多分にある環境なのですが、そんな中でそういう状態になれたのは、私の中ですごく大きかったです。まさに音力に引っ張ってもらって、新しい自分が目覚めた曲だなと思います。

──他にドリカムさんのカバーやヒャダインさんとの楽曲などもありますが、個人的には「僕らの未来」がすごく心に残りました。

作詞・作曲・編曲の矢吹俊郎さんは、水樹ライヴの定番曲である2002年の5枚目のシングル「POWER GATE」を作ってくださった大好きな作家さんです。まだ自分がどんな曲を発信していきたいのか模索していた時期、この曲に出会い大きな転機が訪れました。“私は応援歌が歌いたいんだ”そう気付いた瞬間パッと扉が開いて、自分の進む道が見えた…言わば私の原点のような曲なんです。今回はその「POWER GATE」の進化形というか、12年の時を経ての大人版応援歌を作っていただきたいと、矢吹さんにお願いして生まれました。

──応援歌と言っても、ただ背中を押すような真っ直ぐさとは違う、深い気持ちが描かれていますね。

いろいろな経験を経たからこその気持ちです。デビュー当時とはまた違う壁にぶち当たるし、悩みの種類もさまざまに変化している。当時から応援してくださっているみなさんにも、きっと私と同じように懐かしい気持ちと、これからに立ち向かう勇気を感じていただける曲になっていると思います。

──「僕らの未来」は落ち着いた雰囲気のロックで、それに続くラストの「愛の星」は歌とアルパだけのバージョンなので、すごくしっとりとしたエンディングになりましたね。

この「愛の星」は、絶対に最後に置きたいと決めていました。昨年のシングル「Vitalization」のカップリングに収録した時の、ピアノとオーケストラのバージョンも大好きですが、アルバムに収録するにあたって、あえてシンプルな構成にしたいと思って…そこで浮かんだのが(上松)美香ちゃんのアルパとの共演でした。私自身も昨年はアルパの演奏にチャレンジさせていただいて、それは初心を思い起こさせ、いつまでもチャレンジすることの大切さを学ばせてくれた経験でした。そのアルパとともにこのアルバムを締め括りたいと思ったんです。ヴォーカルとひとつの楽器だけでのフルコーラス…それは丸裸にされる感覚でとても緊張したのですが、節目となる10枚目だからこそチャレンジしたいと思いました。

──ふたりで一発録音したそうですね。

ブースは別れていたのですが、ちゃんとアイコンタクトが取れるようにしていて、ライヴのような収録でした。クリックも聴かず、ふたりの呼吸で思うままにプレイするので、同じテイクはひとつもなくて。その瞬間にしか生まれない、すごく貴重なものになりました。メロディーと真正面から向き合い、自分の声によって楽曲の持つ起承転結のドラマを引っ張っていくことは、とても難しいことだと改めて感じて、本当に勉強になりました。

──そんなアルバムを彩っている、パッケージのビジュアルですが…前作は地元の愛媛で撮っていましたが、今回は名古屋で撮ったそうで。どうして名古屋で?

歌手デビューして初めてレギュラー番組を持たせていただいたのが、東海ラジオさんだったんです。なので、私にとって第二の出発地点なんです。思い入れの深い場所で撮りたいと思い、今回、名古屋で撮影させていただきました。撮影日は東京が大雪だったバレンタインデーの翌日だったのですが、運良く名古屋は晴れていて雪もなくて! とはいえ、ノースリーブでの撮影は過酷でした(笑)。

──6月にはツアー『NANA MIZUKI LIVE FLIGHT 2014』がスタートしますが、どんなものにしたいと考えていますか?

ツアーのポスターやパンフレットも同じく、愛知県の中部国際空港セントレアで撮影してきました!“LIVE FLIGHT”は全国いろいろなところへ飛んでいくという意味、みんなで全力で跳びまくろう!という意味を込めていて。“LIVE FLIGHT”だけに、やはり空を見ながら歌えたらいいなということで、野外会場も3カ所あります。

──アルバムでは「Rock you baby!」や「Fun Fun★People」など、ライヴで盛り上がれる曲もありますしね。

ぜひこのアルバムを聴いて、ライヴに遊びに来ていただけたら嬉しいです! 最近私のことを知ってくださった方はもちろん、デビュー初期から応援してくださっている方にも楽しんでいただけるものにしたくて、新曲はもちろん幅広い構成で選曲しようと考えています!

──昨年の活動で、新規のファンが増えましたからね。

昨年の『LIVE CIRCUS』の時、「Keep your hands in the air」という曲を10年振りに歌ったのですが、“?”となっている方と、ウォーって盛り上がっている方が、きれいに分かれていて。歌手デビュー14年目、オギャーと生まれた子が中学2年生になるわけですから、そうだよねって(笑)。でも、本当に幅広い世代の方々に応援していただいていることを実感して、すごく嬉しい瞬間でした。今回ももしかしたら“?”となる曲が登場するかもしれませんが、これを機会に過去の楽曲も遡って聴いてもらえたら嬉しいです!

取材:榑林史章

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