2014-05-08
クリープハイプ、クリープハイプの本質を体感できる新曲「寝癖」
初の日本武道館公演(4月16日&17日)を成功させたクリープハイプから、2014年第一弾シングル「寝癖」が到着。恋人同士のすれ違いをテーマにした表題曲からは、このバンドの普遍的な魅力がストレートに伝わってくる。
──2014年の最初のシングルがリリースされます。まず表題曲の「寝癖」ですが、この曲を書いたのはいつ頃ですか?
尾崎 1月の半ばくらいかな。もともと“(次のシングルでは)こういうことを歌いたい”というイメージがあったので、それに従って作ったんですよ。男女の関係を両方の立場から描くというか、お互いの思いがズレていく感じを客観的に表現してみたいなって。
──とても普遍的なテーマですよね。どんなコミュニケーションにおいても、必ずズレはあると思うので。
尾崎 それがいいんですけどね。ズレてるからこそ、つながりたくなるんだろうし。以前からこういうテーマで曲を作ることが多かったから、もう1回、そこに戻って表現したいという気持ちもあったんですよ。「左耳」というインディーズ時代の曲があるんですけど、クリープハイプが世に広がるきっかけになったんじゃないかと思ってるんです。その後、いろんな曲を作ってきたけど、そこに戻ってみるのもいいんじゃないかな、と。
──「左耳」と「寝癖」を聴き比べてみると、クリープハイプの魅力みたいなものが見えてくるかも。
尾崎 今回のシングルを聴いて“え、クリープハイプの良さはコレじゃないでしょ”って思うかもしれないですけどね(笑)。いろんな意見があっていいと思うので、そこは。
──いろんな意見を呼び起こすバンドですからね、クリープハイプは。シンプルなアレンジからも“原点回帰”を感じました。
長谷川 いろんなかたちのアレンジを試してみたんですけど、方向性を決定付けたのがサビのメロディーだったんですね。どんな音が後ろに付いても、サビのメロディーが前に出てくる。だったら、それを後押しする作業をするべきじゃないか、と。その結果、シンプルと感じられるものになったのかもしれないですね。
──2曲目の「ホテルのベッドに飛び込んだらもう一瞬で朝だ」はツアー中の情景が描かれているナンバーで。
尾崎 去年のツアーのファイナル(12月5日に行なわれた全国ツアー『秋、零れる程のクリープハイプ』最終公演のZepp DiverCity Tokyo)の前に少し間が空いたんだけど、その時に書きました。いつもは他人のことを歌ってたりするんですけど、この曲はポロッと出てきちゃったんですよね。
長谷川 “珍しく”というか、一人称の主人公が限りなく尾崎世界観本人だなという印象があって、すごく生き生きしているなって思いました。(歌詞の)言葉遊びが矢継ぎ早に入ってくるのも面白いし。
小川 ツアーの情景が浮かんでくるから、バンドでアレンジしてる時もエモーショナルになれたんですよね。
尾崎 え? アレンジしてる時は、まだ歌詞は分からなかったでしょ?
小川 あ、そうだね(笑)。でも、歌ってる時の(尾崎の)表情からも伝わってくるものがあったから。
尾崎 へー。激しい感じ?
小川 そうそう。その雰囲気を汲み取って、感じたことを表現するっていう。
尾崎 そうなんだ。顔で引っ張っていけるように頑張ろうと思います(笑)。そういえば小川くんも、顔でギター弾くタイプだよね。
──(笑)。ツアーのことを“不細工な旅”と表現しているのも印象的でした。バンドのツアーというのは、カッコ良いことばかりではない、と。
尾崎 カッコ良くはないですね。何本もやるのは大変だし、絶対に良いライヴができるわけでもないので。お客さんがいなければ続けてないと思います。昔はお客さんがいなくてもライヴをやってたんだけど、もう絶対イヤです(笑)。
──3曲目の「ねがいり」はインディーズ時代にリリースした曲の再録バージョンですね。
尾崎 作ったのは10年くらい前かな? 初めて出したCD(2006年に発売した6曲入り音源『ねがいり』)の曲なんですけど、今ならもっと良いかたちでできそうだなと思ったので。あと、うち事務所の社長が“この曲を武道館でやりたい”ってずっと前から言ってて、それを叶えてあげたいな、と。
小泉 当時の「ねがいり」は知らなかったんですよ、俺は。だから原曲を忠実に再現するというより、新曲として自然に演奏できましたね。
小川 僕は10年前から知ってます。
──10年前の尾崎くんって、どんな感じだったんですか?
小川 うーん…いつも何かに対して怒っていたような印象があったかも。(態度が)なってないライヴハウスの店員とか。
小泉 それは俺も目撃したことある。“せっかくイベントを企画したのに、受付の人の対応がよくなくて、お客さんに申し訳ない”って。
──すごい! ちゃんとしてますね。
小泉 そう、ちゃんとしてるんですよ。
尾崎 何かしら怒りをぶつけるものを探してるだけかもしれないけど(笑)。
小川 今回改めて思ったんだけど、これ、10年前の曲じゃないですか? “10年前からすごい曲を書いてたんだな”って。
尾崎 …すいません、もう1回お願いできますか?
──(笑)。4曲目の「目覚まし」も“あたし”と“僕”というふたつの視点から描かれている曲ですね。
尾崎 丁寧に色を付けていくというより、その時に自分が見たものを鉛筆みたいなもので書いたっていうか。時間をかけすぎると逃しちゃうような気持ちを、その瞬間の感覚でとらえることができたかなって。
──クリープハイプのいろいろな表情が感じられる作品になりましたね。
尾崎 うん、良かったと思います。シングルでここまで“しっかり作り込めた”という実感を持てたことは、今までなかったですからね。
取材:森 朋之
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