2014-05-20

flumpool、軌跡、現在地点、未来も映し出すベストアルバム

 初のベストアルバム『The Best 2008-2014「MONUMENT」』。彼らの新たな一歩を示す新曲「明日への賛歌」と「ビリーバーズ・ハイ」も収録されている本作について4人が語ってくれた。


 【次の始まりにもつながるものにしたかった】

──このベストアルバムを、どんなふうに感じていますか?

山村 自信を持ってリリースできるものになりました。実は、最初はベストアルバムを出すのって抵抗があったんです。というのも、自信がなかったから。リリースすることによって、世の中からひとつの区切りを打たれるような気がしたので。ベストアルバムって、そのアーティストのイメージをそこで止めてしまう可能性も持っていると思うんですよ。

──なるほど。

山村 flumpoolはまだ代表曲と呼べるものができていないと思うし、そういう区切りを付けるのは致命的な気がしたんですよね。新曲の「明日への賛歌」が作れたことで、今、一番自信を持っているところです。シングルを集めただけのものにはしたくなかったんですよ。だからこそインディーズの時に作った「labo」と、ライヴでも欠かせない曲になっている「Hydrangea」をリアレンジしましたし、新曲も入れたんです。“これからflumpoolはどこへ向かっていくんだろう?”っていう、次の始まりにもつながるものにしたいと思っていました。

──未来を指し示す記念碑としての意味も込められた“MONUMENT”っていうことですかね?

山村 そうですね。元気が初めてタイトルを出してくれたんですけど。ね?

尼川 …何で変なところで話を振るの?(笑)

── (笑)。ひらめいたわけですね?

尼川 はい。

──小倉さんは今回、ベスト盤を出すということに関してどんなことを感じています?

小倉 ひとつのけじめかなと思います。“バンドとしてまだ次のステージに上がれていないな”というのを感じていたので、上がるためのけじめとなる何かを示さないといけないと思っていたんです。そういうのをかたちにできたんじゃないかなと。

──阪井さんは今作に関してどんな想いが?

阪井 いいタイミングです。自分たち自身、変わっていかなきゃいけない時期が来ていると思いますし、現在、過去、そして未来にもつながるものになって良かったです。

山村 いっぱい曲作ったね?

阪井 うん。思い返すと、大変だったのかなと。まぁ、いろいろなことがありました。でも、「明日への賛歌」が一番死にものぐるいでしたよ(笑)。

── 「明日への賛歌」、良い曲ですね。今までの活動の中での葛藤と、ここからさらに前進しようとする意思が、ものすごく込められているのを感じました。

山村 ひと筋の光なのかもしれないですけど、これからの自分たちの活動を照らしてくれるものになったんじゃないかなと思えた曲です。5周年のライヴとして去年の10月に武道館をやらせてもらったんですけど、それを経て、“じゃあ、次のflumpoolとしてどういうことを歌っていこう?”ってバンドでスタジオに入って毎日考えた時期があったんです。でも、何も見つからなくて。“これは、このまま終わってしまうのかもしれないな”ということも思って、現実から目を逸らしたくもなりました。

── そこまで追い詰められた状態になったんですね。

山村 はい。メンバーみんなが辛い時期でした。でも、このまま逃げ出すのではなく、もっとこの4人でやっていきたいなと思ったんですよ。就職をしようかどうか迷っていた頃に音楽を夢見たように、今こそもう一度夢見てみたいなと。逃げたくなる自分もいるけど、ここからさらにやっていきたいという自分もちゃんといると感じた時、やっと前向きになれたんです。その頃、一生もメロディーに関して悩んでいたんですけど、僕が思ったことを伝えたら、“じゃあ、とりあえず一緒に作ろう”っていうことになって、何日か泊まり込みで作業をして。その場で僕が歌詞を書いて、そのままメロディーを歌うっていうような初めての作り方をしました。言葉、メッセージがそのままメロディーになっていったような感覚でしたね。

阪井 ある意味、開き直ったような気持ちだったというか。とりあえず、今、自分が言いたいことを全部吐き出そうと思って作っていきましたね。曲がこうして出来上がった今、不思議な感じがしているんですよ。自分が作った曲とは思えないというか。ひとりで作っていたら絶対に出てこなかっただろうなと思えるメロディーの曲になったので。“今までには産み出せなかった新しいものができた!”っていう達成感があります。

──《知らぬ間に 褒められる事が大事で 言われた事だけ やっていた》というフレーズとか、生々しいですね。

山村 ほんと、そのままです(笑)。flumpoolって「花になれ」でデビューしましたけど、鳴かず飛ばずだったどん底のインディーズ時代に比べると、あり得ないほど非現実的なデビューだったんですよ。そして、あの曲が良くも悪くも自分たちのイメージを決定付けたなと。“flumpoolってこういうバンドだね”って褒められるところにとらわれていた時期もあったし、そこから抜け出そうとしても抜け出せなかった自分もいたし、“抜け出さないほうが続けられるのかな?”って弱気になる自分もいたんですよね。

──そういう葛藤って、他のいろんな曲にも表れていると思います。「reboot ~あきらめない詩~」とか「Because... I am」とか、何かを打破しようする想いがこもっていますし。

山村 今おっしゃった2曲も、“自分たちを壊して解放していこう”っていう気持ちで作ったんですよ。それが当時の勇気であり、大切な何か。でも、そういうものができたからといって、その先も前向きでいられるわけではなくて、いつもその時期、その年齢なりの悩みがあるんですよね。ということは、今後も全てにおいて悩むんだと思います。「明日への賛歌」で《挫折と 反省の その繰り返し》って書いていますけど、そういうことが分かったのも成長なのかなと思います。

── 葛藤の軌跡も今作は示していると思います。

山村 ほんと、そういうふうにずっと自分たちのことを歌ってきたんです。ただ前向きなことを言って、背中を押すだけじゃ駄目なんでしょうね。いかに努力して、挫折して…っていう自分たちの人間臭いところをもってしか、みんなに届けられるものはないんだと思っています。

小倉 そういう吐き出し方がよりストレートになっているのが「明日への賛歌」ですね。今までも気持ちを吐き出してきましたけど、気飾っていない、ありのままの言葉が入っている曲です。

尼川 サビの突き抜ける感じとか、弾いていても気持ち良いです。いい曲ができたと思っています。


 【当たり前に感じられる言葉も 心を込めたら伝わるものになる】

──もうひとつの新曲「ビリーバーズ・ハイ」も、いいですね。躍動感のあるサウンドが気持ち良いです。

阪井 初めてのアニメのオープニングテーマです。作る前にアニメの監督さんとお話したんですけど、疾走感のある曲をイメージしていらっしゃいました。僕としてもそういう曲を作りたいと思っていたところだったんですよね。ライヴだと、例えば「星に願いを」とか盛り上がるんですけど、それに代わる曲をそろそろ作りたいなと。「星に願いを」は若さが出ていますけど、もっと大人のflumpoolとしての疾走感を「ビリーバーズ・ハイ」で表現できたと思います。

──flumpoolのサウンドのカッコ良さも、このベスト盤で改めて感じましたよ。阪井さんに憧れてギターを始めた人も、今までにたくさんいるんじゃないですかね?

阪井 いますかね? いたら嬉しいなぁ(笑)。

──10年後くらいに下の世代のギタリストから“阪井さんに憧れてギターを始めました”とか言われるかも。

阪井 いやぁ、めっちゃ上げてくれますねぇ。これから飲みに行きますか?(笑) でも、そういうふうになりたいですよ。

──尼川さんも、全国の誰かのベースを始めるきっかけに絶対になっているはずですよ。

尼川 …そんな人いないです(笑)。

阪井 何かニヤニヤしてる(笑)。みんな褒められ慣れてないから。

──小倉さんに刺激されてドラムを始めた人も…。

小倉 います!

──ようやく断言してくださる方がいました(笑)。

小倉 恥ずかしながら本当にそういうコメントをもらったことがあるので(笑)。バンドマンとして嬉しいことです。やっぱり憧れてもらえるようなバンドマンになりたいですよ。

──「Hydrangea」みたいなきれいな曲も演奏してみたくなるんじゃないですか? この曲、ついに音源化ですね。

山村 ライヴでずっとやってきた曲ですね。お客さんの間ですごく大切にされているのを感じていました。でも、次のflumpoolに行く上でも、音源化していなかったこの曲に頼ってばかりいても良くないのかなと思って。区切りを付けるという意味でも今回入れることにしました。

──ファンのみなさんは、いろんなことを思い出しながらこのベスト盤を聴くんでしょうね。

山村 そういうみんながいるからflumpoolはプロのバンドとしてやってこられているんです。インディーズの上手くいかなかったバンドがひょんなきっかけで世に出ただけだったんですから。そんなバンドがこうしてやれているというのは、お客さんが大切に僕たちの曲を聴いてくれるからですよ。

──「君に届け」とか、すごくファンの間で大切に愛されていますよね。

山村 今となっては自分たちも「君に届け」を代表曲のひとつとして受け止められていますけど、実はリリースした当時はストレートすぎるし、青臭い感じもしていて抵抗があったんですよ。自分たちで作っておいて変な話ですけど(笑)。

──すごい発言ですけど(笑)。

山村 捻くれたところもあったんです(笑)。もっと深いことを表現している曲が他にあると思っていたから。でも、“好き”とか“君に逢えて良かった”とかいうようなシンプルすぎて当たり前に感じられる言葉であっても、ちゃんと届けようと思って心を込めたら気持ちが伝わるものになるんですよね。そういうことを今になって感じるようになりました。僕らはストレートでいいのかなと。当たり前のことを当たり前に歌うバンドがいてもいいんだと思います。自分たちがちゃんと努力して作った曲は、自信を持って胸を張って届けていきたいと考えられるようにもなりました。

──ベスト盤がリリースされる頃は、全国ツアー中ですね。

小倉 ライヴに関しても、ちゃんと自分たちが掲げたものに対して足跡を残していかないといけないなと思っています。

山村 8月にはアリーナのライヴがあるんですけど、ホールとはまた別のものにしようと思っているので、楽しみにしておいてもらいたいですね。あと、ツアーに関しては“MOMENT”っていうタイトルを掲げた以上、その日にしか観られないものにしようという気合いが入っています。

尼川 先のことはまだ全然見えていないんですけど、このツアーは重要だなと思っています。まずはこのツアーをちゃんとしたものにして、そこから先のことは見えてくるのかなと。

阪井 この先のことに関しては、いろんなことにもチャレンジしていきたいですよ。このツアーのテーマソングとしても位置付けている「明日への賛歌」を今回作ってみて、もっと本心を伝えていきたいと感じましたし。いろいろ突き詰めていけたらいいですね。

取材:田中 大

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