2011-09-20
高橋瞳、“文字を見るな、感じろ!”
アーティスト・高橋 瞳の本当の第一歩はここから始まるのかもしれない。ヒダカトオル、Koji Nakamura(iLL)、ROLLY、H ZETT M、Charaという凄腕プロデューサーとのコラボを詰め込んだ4年振りのニューアルバム『PICORINPIN』。本気の傑作ですよ、これは!
──瞳さんって、音楽ファンにはどんなイメージを持たれてるのでしょうね。自分でどう思います?
私のイメージって、そんなにないと思うんですよ。“アニメの歌を歌ってる”“少年っぽい”とか、それぐらいかな。どんな歌を歌ってるか、どんな声だとか、そういう印象はあまりないのかもしれない。
──でも、逆にそこが良いというか。今回のアルバムを聴いて“おお!”と感じる人はかなりいると思うんですよ。今回は自分らしさを思い切り出したのではないですか?
出したというより、よくぞ、これだけ好きなことしかやらなかったなという感じはありますね。ゴメンナサイ(笑)
──2年前のBEAT CRUSADERSとのコラボ曲「ウォーアイニー」が一番古いですよね。
ちょうど、二十歳になっていろんなことをリセットしたい気持ちがすごくあった頃だったんですよ。そんな時にビークルのみなさんに会ってお話したら、いい歳になっても(笑)、悩みながら音楽をやってるんですよ。自分の生活があって、その上でちゃんと音楽が鳴っているというスタイルを見て、“音楽ってこういうふうにやるもんだ”と。
──瞳さんは、もともとどんな音楽が好きなのですか?
椎名林檎さんに出会ってから、“歌って楽しいんだな”と思い始めて、GO!GO!7188、SHAKALABBITSを聴いて、そこからメロコアにも行って。ビークルさんも、高校生の時にライヴに行ってましたから。今年の『ARABAKI ROCK FES.』に遊びに行って来たんですけど、私の中でベストアクトは吉井和哉さんで、The Birthdayも超カッコ良かった。レキシも面白くて(笑)。今言ったのは全部邦楽だけど、洋楽も何でも聴きますよ。ジェリーフィッシュが好きで、チボ・マットのふたりがやっていたバター08の『BUTTER』というアルバムが超大好き。あの時期のミュージシャンがすごく大好きですね。
──90年代から2000年代の、オルタナ寄りロック全般ですね。
今回一緒にやらせていただいた方には、普段聴いてるものを10曲ぐらい詰め込んだマイベストを作ってお渡ししたんです。H ZETT Mさんには、山瀬まみさんの『ゴォ!』と、プライマルスクリームの『KILL ALL HIPPIES』を入れた気がする(笑)。“私はここまでやりたいんです”って、一緒にやれる限界ギリギリまでのものを作りたかったので。
──ああ、それで分かった気がする。このアルバムには、すごい愛を感じるんですよ。
それが一番嬉しかったですね。私の話を聞いてくれて、悩んでくれて、みんな音楽が好きなんだよねって思える現場ばかりだったので。真剣に向き合っていただけるからこそ、“もっとこうしてほしい”と言えたんだろうし。一番“これ、どうしよう”と思ったのは、ROLLYさんの曲だったんですよ。年齢、キャリアも違う方とどうやったら分かり合えるのか、ROLLYさんと一緒にやってすごく勉強させてもらいました。高橋 瞳がやる音楽の概念が壊されたのは、ROLLYさんと一緒にやれたことが大きいと思います。
──他に共演したアーティストのみなさんはいかがですか?
ナカコー(iLL)さんは、聴いていただくと分かると思うんですが、私がスーパーカーをやりたかったんです(笑)。すごく心地良くて綺麗な音で、そこで歌詞を書いて歌うのはとても勉強になりました。iLLのメンバーも大好きなので、ベーシックのレコーディング中はアツかったです。私が(笑)
──Charaさんは?
Charaさんは、私と結び付かない存在だと思ってたんですよ。“ラブソング大嫌い”とか言ってましたからね、私(笑)。でも、ここで女の子が大好きなラブソングをたくさん歌っているCharaさんと一緒にやれたらいいなと思って、お願いしました。私が作ったデモを聴いてもらって、Charaさんからも曲をいただいて、“これとこれがいいから、やろうよ”という感じでしたね。アレンジを田渕ひさ子さんにやっていただいたのも、大好きな方なのですごく嬉しかった。
──H ZETT Mさんは?
音楽は瞬間のもので、今の熱をパッケージするということが、H ZETT Mさんからはすごく伝わってきました。ヴォーカルは原点回帰というか、変えたい思いばかりが先行して、ずっとやってきた自分らしさがなかなか出なかったんですけど、改めてそこを感じさせてもらいました。
──そして、ビークルとヒダカ先生ですが。
“ヒダカさんが私にしてほしいこと”をやらせてくれました。他のみなさんには、こうしてああしてと言われることはそんなになかったんですけど、ヒダカさんが一番それがあったかもしれない。ヒダカさんから見る高橋 瞳というものがハッキリあるのは、とても嬉しいことでしたね。
──ところで、“PICORINPIN”という変わったタイトルはどこから付いたのですか?
言葉じゃなくて音なんですよ。意味がない…と、言ったら駄目だからいろいろ考えたんですけど、本当はかわいいから付けただけで(笑)。でも、意味ありげに言うのであれば、“文字を見るな、感じろ!”っていうことです。
──ブルース・リーみたいな(笑)。
ありがとうございます! さっきのインタビューでは、“言ってる意味分かんないです”って言われたんですけど(笑)。それぐらい、感覚のものなんですけどね。
──まっさらな気持ちで聴いてほしいですね。
最初にイメージの話をしましたけど、自分である程度考えてはいたと思うんですよ。“私はこういうふうに思われてるから、コレをしちゃうとみんな混乱しちゃうよね”とか、考えていたんですけど。そう考えることで苦しくなることもあったし、どうやったら伝わるんだろうって悩んじゃって。で、このアルバム自体が“一回悩まなくしちゃっていいっすか?”っていうところから生まれた作品だから、いろんな人に聴いてもらって反応が知りたいですね。
取材:宮本英夫
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