2014-06-23

GLIM SPANKY、全ての音楽好きの人に届けたい一枚

 歪さやうねりが自分たちの“ロック”のテーマだと語るGLIM SPANKY。デビュー作『焦燥』に収められた“スタジオ音源×ライヴ音源×カバー”の全6曲には、その大胆かつ繊細な音世界が多角的に表現されている。


──珍しい形態、構成の作品集ですね。

松尾 今まで見たことのないかたちだと思います。せっかくミニアルバムを出すのだから、ループして聴いていただきたいという気持ちがとても強くて。まず音がちゃんと聴けるスタジオ音源を聴いていただいて、次にガツン!とくるようなライヴ音源を聴かせちゃえ、みたいな。そして、弾き語り一発録りで私の素の状態の“声”だけを、あえてカバー曲で伝えたい、という。飽きずにかけていられる、そして全てが確認作業になるような一枚にしたかったんです。

亀本 最初の一枚だし、GLIM SPANKYの魅力、武器を全部入れちゃえ!という感じですかね。

── タイトル曲の「焦燥」は自主制作時代からあるようですが、ずっと大切にされてきた楽曲なのでしょうか?

松尾 17歳の時に作った曲なんですけど、思ったことをそのまま書いた曲だったので、いつかちゃんとかたちにしたかったんです。伝えたいことも込められているし、作った時の気持ちも変わらないし、これはデビューの時に世に送り出すべき曲なんじゃないかと思って、アレンジを今のGLIM SPANKYのサウンドに近付けて完成させました。

── 原点であり、シンボリックでもあり、当時の心情がモロに表れていて、今もそれは褪せていない、と。

松尾 そうですね。私にとって嫌な大人って自分で自分を閉ざしながら年齢を重ねている人なんですけど、そういう大人に“音楽なんてやって意味あるのか? 諦めろ!”とかすごく言われていた時に作った曲なので。でも、そういう人たちにこそ“できるんだよ”って気付いてもらいたいという気持ちがとてもあるので、そういう大人を敵に回すのではなくて、逆にハッピーにしちゃえる音楽をやっていきたいとも思っているので、これは楽曲的にも気持ち的にも原点に戻れる一曲ですし、スタートに相応しいかなと思います。

──今のGLIM SPANKYでの表現ということで、アレンジ面で心がけたことは? 今作ではプロデューサーにいしわたり淳治さん、リズム隊にBOBOさんとハマ・オカモトさん(OKAMOTO’S)という濃い方々を迎えてコラボされていますが。

松尾 ちゃんとギターと歌が立つように…そこを一番土台として構築していきました。淳治さんとは一緒にずっとスタジオにこもって、“新しいバンドメンバーがひとり増えた”みたいな親密さで、同じ熱を持って取り組めた気がします。ハマさんは高校の頃からの知り合いだったので、初めてのレコーディングではぜひ弾いてもらいたかったんです。そして、BOBOさんには重量感のあるドギツい(笑)ドラムを叩いてほしくて。とてもいいリズム隊のうねりが出て、イメージ通りでした。

亀本 重量感があって、でも原曲の疾走感はそのまま活かしたいと思っていたんです。サビとかはドラムパターンがすごくシンプルなのに一発一発が響いてきて、なおかつ疾走していく感じも出ている。すごく絶妙な感じの音を出してくださったなって思います。

──もう1曲のスタジオ音源「MIDNIGHT CIRCUS」は映像感がすごくありますね。

松尾 幻想的で重くて、妖しい雰囲気がある、そういう曲を作りたかったんです。私、物心がついた時から絵を描きたくて、ほんとは最初は画家になりたかったんですよ。だから、音楽を作る時は音楽よりも、絵画とか文学から刺激をもらうことのほうが多くて。なので、こういう曲は得意ですね。

──確かに、不思議な妖しい世界に引き込まれていきます。で、それが気持ちいいような、どこか気持ち悪さも…。

松尾 はい(笑)。まさにそういう曲にしたかったんです。

亀本 この曲はギターがいなたすぎたらダメだし、だけどもエレキギターのカッコ良い本質も大事にしなくてはいけないし。今っぽさと本来のギターの原始的なカッコ良さ、それを微妙なところでバランスを付けたいなとすごく思っていて。だから、熱量のあるビブラートやチョーキングがすごく入っているプレイもあるし、無機質に繰り返すフレーズも…前はそれを嫌っていたんですけど、今回は「MIDNIGHT CIRCUS」だけでなく、「焦燥」でも挑戦しています。そうすると楽曲がより締まるというか。ずっと自由演技だとやっぱり古臭さを感じてしまうし。そこは意識的に頑張りました。

松尾 GLIM SPANKYの楽曲を70年代の楽器を使って、70年代の音色でやると、それはもちろんいい音になるんですけど、つまらない普通のものになってしまう。それだけはしたくないので、音色やフレーズにはかなりこだわりました。

──この作品集を聴いてすごく感じたのは、GLIM SPANKYの魅力のひとつは“色気”だなと。それは声もギターも。人間そのものにしか出せない色気が表れているというか。

亀本 “人間らしく”というのはすごく意識しているというか、表現方法として重要だと思っていて。何でもできるじゃないですか、機械できれいに。だからこそ人間らしい表現方法を大事に、しかもカッコ良くクールに表現することを目指しています。それはこの2曲でできた気はします。

──それはライヴ音源にも出ているような。ワクワク、ドキドキします、すごく。

松尾 おお! そのワクワク…なぜ私たちが60年代や70年代の音楽に魅力を感じるかと言うと、やっぱりワクワクするんですよね。例えば、ビートルズの何が飛び出すか分からない遊園地のような、まるで全てが実験みたいなワクワク…そういうものにすごく魅力を感じていて。で、それってその時代の最先端だったからこそ、そう感じさせてくれる。GLIM SPANKYも今のロックの最先端でありたいという気持ちがとても強くあるんです。

亀本 最先端を作るのって、すでにあるものに乗っかっていてはできない。例えば、金の鉱脈があるとすると、最初に見つけた人のあとに続けば、ある程度はおこぼれがあるかもしれない。でも、違う方向に掘っていかないと一番にはなれない。だから、僕らは違うところを掘りにいこう!という気持ちでいます。

取材:竹内美保

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