2013-08-22

【それでも世界が続くなら】噂のインディーズバンド、ついにメジャーデビュー

 インディーズシーンで熱い支持を集めてきた、それでも世界が続くならがメジャーデビューする。鋭い切り口で現実世界をえぐる彼らの音楽は、唯一無二の魅力の塊だ。創作の背景について篠塚将行(Vo&Gu)が語る。

──まず、今回のアルバムを聴いて印象的だったのは、生きている中で付きまとういろいろな矛盾をすごく見つめて描いている作品だなという点なんですけど。

「僕ってもともと大袈裟なんです。だから、そういうことを見つめているというよりも…何でしょう? 僕の歌ってメモみたいな感じ。思ったことをメモってるだけなんですよ。もちろん作品として捉えていただけるのは嫌でもないし、ありがたいんですけど、申し訳ない気持ちになるんですね。結局…メモしてるだけですねぇ(笑)。」

──(笑)。作った本人はそういう感覚であるにせよ、リスナーとしては“俺もこういうことを思っているよな”とか考えながら受け止められる曲たちですよ。

「それは嬉しいですね。僕は所謂ミュージシャンとかじゃないと思ってるんです。僕はどこにもでもいる普通のヤツですから。“おい、俺の曲を聴け!”とか“俺ってすごいでしょ?”とか思わないですし。普通なんです。例えば…“今すぐステージで歌え”って言われたら嫌じゃないですか?」

──嫌です。断固拒否します(笑)。

「僕もまったく一緒です(笑)。僕は拒否はしないですけど、ステージで歌うのが大好きだとは思わない。率先してやりたくはない。嫌いというか、苦手。“いいね”って言ってもらえるのはすごく嬉しいんですけど、申し訳ない気持ちになります。」

──そんな篠塚さんのバンドがライヴ活動を重ねたり、作品を出したりして、メジャーデビューに至るというのは?

「普通はそうならないですよね。でも、僕が音楽を始めたのは…高校の時に苛められていて、音楽室にずっといたんです。不登校とまでは言わないけど、保健室にこもる代わりに音楽室にいた感じで。その時にマイペースなヤツが“一緒にバンドをやろう”って声をかけてくれて。そんなふうに声をかけられたのは初めてだったし、誘われるままバンドを組んで。それが初めてのちゃんとした友達。その彼はやがてバンドを抜けて、僕が代理で歌うことになったんですけど、そのバンドも終わって。しばらくは何もしてなくて、“音楽を辞めて何かやりたいことやろう”と思ったんですけど、“やりたいことは…バンドだな”と。最後に1回だけバンドを組もうって始めたのが今のこれ。僕はそれとは別で、小さい頃にピアノも習ってて。難しいし、厳しいから嫌だったんですけど、音楽は自然と身近にあったんですね。音楽が好きとはハッキリ言えないんですけど…嫌いじゃないですよ。多分普通の人と同じくらい好き。でも、それ以上に友達とバンドをやりたかったんですよね。そう思えたから今もやっているんです。」

──先程からのいろいろなお話からすると、今回のアルバムも“こういう一枚を作ろう”っていう明確な考えの下に作った感じではなさそうですね。

「そうなんです。曲は僕が思ったことのメモ。それをみんなで聴いて、選んで、録りました。だから“アルバムを作った”っていう感じではなく、“メモった曲が入ってる”です(笑)。インディーズの時の曲も3曲入ってるんですけど。」

──「シーソーと消えない歌」と「参加賞」と「水色の反撃」ですね。これを選んだ理由は?

「この3曲はまだ歌っていたかったんです。あと、「シーソーと消えない歌」と「参加賞」を前に録った時って、ウチのベースの章悟は楽器を始めたばっかりで。きっと彼も始めて数カ月の時の音源がずっと流れているのも嫌かなと思ったり(笑)。だから、録ってみたんですよ。その結果、良かったし、周りの人も“いいじゃん”という感じだったから、“じゃあ、いいのかな”と(笑)。でも、そういう曲だけじゃなく、他の曲も含めて、今の僕らがバンドを組んでやってる感じがあるものばかりだなと思います。」

──描かれていることは、どれもすごく身近な題材だと思います。なんとなく不安で、苛立ってて、悲しくて、そのくせ生き続けている多くの人々の感情と重なり合う音楽だなと。

「そうなんですかね?」

──ファンのみなさんの感想がどうなのかは、もちろん想像でしかないですけど、少なくとも僕にとってはそうですね。そして、そういう音楽なり作品なりを聴くと、“この感情、自分だけじゃないんだな”って思えるんです。

「自覚症状はまったくないですね。僕はもの珍しいのかなとも思っているんですけど。ほんと、思ってることを歌ってるだけなので。そして、“自分の思ってることを歌おう”って思うのは、誤解されるからなんですよね。思ってることが100パーセント伝わるんだったら、僕は恥ずかしくて歌えない。聴いて何を思うか決めるのは僕じゃないから、それでいいのかなと。僕、美術館とかアート全体も好きなんですけど…僕が思うアートって“放つ側がいて、受け取る側がいて。その間に生まれるもの”なんです。だから、僕の曲に関しても僕がどんな意味で歌ってるのかは、そんな重要じゃないのかなと。まぁ、自分の曲とアートを比べるのもおこがましいですけど。でも、このCDも主役は僕らじゃない。聴いてくれた人の人生が少し楽しくなったりすればいいのかなと。これは聴いた人のもんです。全部あげる。僕は友達とバンドをやるのが目的だから。それだけで幸せ。だから、このアルバムの発売日の9月4日よりも『MONSTER HUNTER』の発売が楽しみ(笑)。」

──(笑)。そろそろインタビューのまとめに入りますが、最後に何か言っておきたいことはありますか?

「ほんと音楽って難しいですね(笑)。でも、音楽をやって、聴いてくれる人とかと一緒にちょっとずつでも分かったらいいなとは、今日いろいろなお話をして思いました。僕にできることは、こうして話したことが嘘にならない人間でいることくらいなんですよね。ほんと、何もできない(笑)。またいつか続きを話しましょう。」

取材:田中 大


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