2014-08-20

阿部真央、私にとって歌はこだわりたいものになった

 デビュー5周年を迎え、いろいろな記念企画が展開されているが、その第五弾となるのが『シングルコレクション19-24』。阿部真央のデビューから現在までの変遷が垣間見れる同作について、さまざまな質問をぶつけてみた。


【ファンの人の反応が一番怖かった】

──デビュー5周年のタイミングでシングルコレクションがリリースされるわけですが、このタイミングでシングルコレクションを出したいと?

「いや〜、全然。デビュー5年でオリジナルアルバムを5枚出してきて、ずっと駆け足でやってきたので、ここでインプットするというか、新しいアルバムは出したくない…まぁ、休みたいと(笑)。じっくりと制作をしたいと言ってたんですよ。で、この5年間に出したシングルが11枚あって、曲にすると14曲あるから、ちゃんと阿部真央の曲を知らない人が手に取りやすいように、それらをシングルコレクションにして出すのはどうかっていう提案をもらったんで出したという。もちろん、いろいろ考えることはあったんですけどね。これまで応援してきてくれているファンのことを考えると、本当は新しい曲を出すほうがいいんだろうけど、そういう意味合いを付けるんだったらいいかなって。今までの曲を知ってもらえるきっかけになるというか。一枚で分かるわけですからね。」

──このシングルコレクションを出すにあたっての真央さんのモードというのは? 毎回ジャケ写やアー写とかに意味を持たせていたりするし。

「今回のジャケット写真って顔をちゃんと見せていないんですけど、それは私的に出したくなかったんですよ。私がデザイナーさんにお願いしたのは、シングルコレクションに対しては“後ろ向き”を表現したいんだって。やっぱり、いっぱい考えることがあって…このジャケ写を撮る段階の頃は“出したくない!”っていう気持ちが強かった…ファンの人の反応が一番怖かったんですよ。“なんで、ここでシングルコレクションなんだ!”って言われるのが。でも、いろんな人の反応を見ていると半々で、そういうことを言う人もいれば、記念に買うって言ってくれている人もいるし、さらにこれが実際にリリースされて、レンタルでもいいから“阿部真央の曲、ちゃんと聴いたことないな”って手に取ってくれる人がいれば、これを出した意味があるのかな…って最近は思うようになりましたね。」

──そういう思いからジャケ写には顔が写ってなかったのですね。アー写は後ろを振り返っている写真だったから、今までを振り返る意味があるのかなとは思っていたのですが…。

「あっ、ほんとだ! そういうことだったのか!? 背景とかも結構きれいに撮れていたんで、この写真を選んだんですけど、確かに後ろを振り返っている! 今後、そういうことにします(笑)。やっぱり、いろいろ振り返りましたしね。」

──そんなシングルコレクションですが、ロサンゼルスで本人立ち会いによるマスタリングを行なったと。単純にこれまでのシングル曲をパッケージしただけのものにはしたくなかった?

「もちろん。現実的に録った年代も違うし、関わったエンジニアも違うので、それを滑らかにしないといけないっていうのはあったけど、やっぱり今までのファンの人に聴いてもらうにあたってのブラッシュアップは必要だと思っていたので。前々から海外でのマスタリングには興味があったし、この機会に信頼のおける人を選んでもらって、ステファン・マッカーセンにやっていただきました。」

──ポール・マッカートニーやローリング・ストーンズ、真央さんの好きなアヴリル・ラヴィーンなどを手がけている人ですよね。

「はい。すっごいいい人でしたよ。言葉が分からなくても、いい人ってのが分かる。すごくシャイな方なんですけどね。」

──真央さん自身が現地に行って立ち会ったというのは、そこまで責任を持ってやりたかったから?

「そうですね。やっぱり確認したいし…基本的に毎回、レコーディングやマスタリングとかには立ち会わせてもらってるんで。専門的なことは分からないんですけど、曲間とかは自分の意見も反映されるので、今回もそこに立ち会えてすごく良かったです。」

──音の変化も如実に感じたのでは?

「感じましたね?。“こんなにも音に広がりが出るんだ!”って。それと、安心感も持てました。毎回、質のいい録音がちゃんとできてたって実感したというか。で、“この時の荒っぽさは、この時の勢いが出ていていいな”って思えたり。やっぱり歌い手なんで、声の変化を一番感じましたね。“この時はこんな感じだったな?”っていう記憶が蘇ってきました。初期の喉の調子が良かった頃、中期のちょっと声がカサカサになってきた頃、手術から復帰した時…「側にいて」の頃なんですけど、まだあんまり喉のコントロールができてなかったりして。最新の「Believe in yourself」や「always」とかでは、ちゃんと自分で喉をコントロールできるようになっていたので、そういう声の変遷も感じれて面白かったですね。」

──そういうのはあるでしょうね。そして、今言われた「always」は初回限定盤のMV集に収録されている未発表曲なのですが、これは新曲になるのですか?

「新曲です。ストックとしては前からあったもので、個人的にはそんなに推し曲ではなかったんですけど、ディレクターさんがすごく気に入ってくれていて。で、どういうかたちになるかは分からないけど、この作品に未発表曲を入れたいと言っていたので、“じゃあ、この曲をやってみましょう”ってことになったんですよ。だから、音源化はしてなかったんですけど、シングルコレクションのためにレコーディングをして、MVを撮ったっていう感じですね。」

──曲自体はいつ頃に作ったものなのですか?

「2012年の頭ぐらいですね。“曲を作んなきゃ!”って時期ではなかったと思うんですよ。だから、突発的に出たというか…まぁ、私の好きなコードなんですけどね、AとDとBm(ビーマイナー)が多用されていて。ほんと、練習していたらできたんだと思います。で、最初に出てきたのがサビの《I will always love you》ってところだったから、そのままサビは英語にして、それ以外のところは日本語にしようって。私的には字余りだったり、きれいに言葉がハマってない印象があるんですけど…AメロとかBメロとかね。スローテンポの曲だし、それはそれでこの曲のイメージには合っていていいのかなって。」

──すごく気持ち良く歌っている印象があるので、作ろうと思って作った曲ではないと聞いて納得しました。自然と生まれた感じがあるというか。

「そうそう。いい感じでゆるいっていうか、リラックスしてる感じがありますよね。」

──この曲のMVを撮るということで、監督さんには何かリクエストしたり? っていうか、毎回そういうことはあるのですか?

「明確なイメージがある時は言いますけど…例えば、「Believe in yourself」は表彰台に立っているシーンがあって、それは私がリクエストしたんですね。でも、ほとんどは監督さんにお任せです。だから、今回の「always」のMVも…でも、ライヴっぽい感じにしたいってのは言いましたね。私のイメージでは誰もいないホールで、いつものバンドメンバーと演奏している感じだったんです。実際はスタジオを借りて…それも不思議な場所だったんですよ。円形のホールみたいな。で、よくあるセッション映像を撮ったんですけど、そこだけリクエストしました。あとは監督さんがこの曲の温かいイメージに合わせて、照明がポッポッポッと点いていく、おしゃな感じにしてくれました。」

──あ、“誰もいないホール”ってのは分かります。お客さんを前にして“歌うぞ!”という感じじゃなくて、バンドメンバーと純粋に音楽を楽しむ感じなんでしょうね。

「そうそう。なんかね、まどろむ感じなんでしょうね。お客さんがいないテンションっていうか、気張ってない。ナチュラル…そんな感じ(笑)。」

──そんな今回のシングルコレクションですが、まず出来上がったものを聴いた感想はどうでしたか?

「ん?、そんなにワクワクとかはないですね。自分の過去の曲に興味はないので、“新たに手に取る人のためのもの”っていう印象かな。オリジナルアルバムだったら、まだ世に出ていないので、私の手元に発売直前のものが届くと、やっぱりワクワクするんですけど、そういうのはなかったですね。」

──そんな感じなんですね。サブタイトルが“19-24”となっていて、よくあるような年代での“2009-2014”じゃないので、それだけ19歳から24歳までの阿部真央が詰まった思い入れ深いものになっているのかなと思ってました。

「でも、そういう感覚はありますよ。2009年から2014年という年代というのは、年齢に関係なく、万人が経験するじゃないですか。でも、19歳から24歳というのは…もちろん、誰もが経験することなんですけど、その人それぞれに時間軸があって、私にも時間軸がある。年代で縛るんだったら、もっと政治的なことを歌ったり、そういうものを出した時にしたいと思うんですけど、このシングルベストにあるのはすごく個人的な歌ばかりだし、女性として大きな変化を遂げた時期でもあるので。でも、“この時期の阿部真央の曲です”ってことでいいんだけど、これを手に取った人が“自分の19歳から24歳の時ってどうだったかな?”や“どうなってるんだろうな?”っていう聴き方をしてもらっても面白いと思ってるんですよ。」


【私はこの仕事では達成感を感じることはない】

──デビューから5年が経ったわけですが、真央さんにとって歌というものも変化しました?

「変化しましたね。デビューする前とか、学生の頃って、私はずっと鼻歌を歌っていて、“歌はいつも側にあるもの”とまでは言わないですけど(笑)、ほんと歌が好きだったんですよ。もちろん、今でも歌は好きなんですけど、職業柄もっともっと高みを目指すようになったっていうか。例えば、ライヴでうまくお客さんに響いた時の反応って、すごく鳥肌が立つものがあるんですよ。自分でも気持ちの良い音が出た時って鳥肌が立つんで、やっぱりそういうものを目指すようになりましたね。こだわればこだわるほど、私にとって歌はこだわりたいものになった、みたいな。レコーディングでも一番こだわるところだし、全部自分でジャッジしたいところだし…自分が“これでいいんだ”と思ったものが、本当にいいっていうのはライヴでも実感できているので、そういう歌に対する自信も増しているかもしれませんね。」

──より“伝える”ものになったという感じですか? アルバムで言うと1stアルバム『ふりぃ』や2ndアルバム『ポっぷ』は高校時代に作った曲がメインで収録されているわけですが、その頃とは違うというか。

「全然違いますね。まだファンの人の顔が見えてない状態の曲っていうのは…もちろんマスターベーションではないと思うんですけど、聴いてくれる人にとって聴きやすい曲というのを想像で書いているなって。実際に想像で書いてましたからね(笑)。今はそこが明確になっているから、例えばライヴを意識して書いている曲というのは、ライヴに来てくれたり、聴いてくれる人がどう感じるか?だったり、その人に向けてのメッセージとか、そういうのをより強くイメージして書いてますね。でも、恋愛の歌とかはそういうのじゃなくても全然いいと思ってるんですね。そういう差別化もできてきているなっていうのは感じますね。」

──今のお話だと、高校時代から聴く人ありきで曲を作っていた?

「そうですね。高校時代も“分かりやすく”というのはすごく意識していたので。普通の話し言葉の言い回しだとダサいと思っていたから、“倒置法は違うな?”とか考えて書いてましたね。」

──そういう曲作りに関して、昔にしたインタビューの中で“曲にして吐き出したからって救われたことは一度もなかった。満たされることもないし…そんなもんだなって”とおっしゃっていたのですが…

「あはは。それは変わってないです、未だに(笑)。そんなもんだなって(笑)。でも、最近は前向きに考えられるようになったし、こういう性格だから続けられていると思うんですよ。曲にして吐き出してすっきりしていたら続けられないし、そこでの満足感や達成感はいらない。それよりは…今の活動で満足したり、達成感を感じることはあんまりないんだけど、それでも一本のツアーが終わった時、その一瞬の“終わった”っていう達成感、もうこれだけで十分だと思ってるんですよ。別に“達成感を感じちゃいけない!”とは思わないけど、私はこの仕事では達成感を感じることはない…それはネガティブな意味じゃなくて、ゴールがないからこそ楽しめているっていう感じですね。それは楽曲を書く上でもそうだし、何でもそう。」

──あと、2ndシングルの「貴方の恋人になりたいのです」の時のインタビューで、“どこまで自分を消費していくんだろう?”って考えながら歌っているとおっしゃっていましたが、より聴く人のことを考えるようになって意識が外を向くようになったことで、そこの不安はなくなったのでは?

「その通りですね。そんなに不安を感じなくなりました。18歳ぐらいの時、前にお世話になっていたボイストレーニングの先生に“大人になったら感受性がなくなるんじゃないかって不安なんです”って言ったことがあったんですね。で、感受性は持って生まれたものだがらなくならないけど、感じること、感じるタイミングは減ってくるから、みんなアンテナを磨き続けるっていうことを言われたんですよ。その意味が、ようやく分かってきたというか。“消費する”っていうのも、心は消耗品ではないし、取り替えられないし、19歳から24歳の間でも感じることが変わっていったので…大人になっていく過程で初めて感じることもあるわけじゃないですか。“昔はこんなことでは泣かなかったのに”みたいなね。そういうのも新しい発見だと思ったので、消費されることはないんだなって思ってます、今は。」

──では、このシングルコレクションの中で印象深い曲となるとどれになりますか?

「個人的には全然ないんですよ。さっきも言いましたけど、過去の曲には興味がないので。でも、ライヴとかでみんなに愛されている曲は、すごく大事だと思いますね。例えば、「貴方の恋人になりたいのです」や「ロンリー」とか。この曲によってみんなが私の歌を聴くようになって、今の自信につながっていると思うと感慨深いというか、特別な曲ですね。」

──なるほど。ちなみに、過去の曲に興味がないというのは、聴く人を意識して作っているところもあるから、リリースした時点で自分の手から離れた感じなのですか?

「そうですね。自分の曲なんだけど、リリースしてしまえば、もうどうでもいい(笑)。リリースした時点で自分にとっては、ちょっと前の曲じゃないですか。レコーディングしている時点でも、少し前の曲なわけだし。もちろん自分が書いた曲なので、それを褒めてもらったり、何か意見をもらったりするのは、すごくありがたいと思ってますけど。でも、それで浮かれるほど嬉しく思うことはないですね(笑)。」

──まぁ、今作は楽曲単位でどうのというよりも、時系列に並んでいるから、その当時を思い出すほうが大きいでしょうしね。

「そうですね。思い出が蘇る…ほんとにアルバムですね。」

──2ndアルバム『ポっぷ』のインタビューで、“ファンの人を信じてファンの人のために素直でいようと思うようになった”と語っていて、その後の6thシングル「モットー。」は"ありのままでいいんだ、そこで勝負しようよ"というメッセージが込められた応援歌だったし、3rdアルバム『素。』は“自分らしくあれ”というモードだったし、真央さんの意識的な変化も見えてきますしね。

「確かに。ほんと、その時期の私がよく表れていますよね。だんだん自由になっていったというか、素直になっていったというか。」

──強くなっていってますしね。

「ほんとですか! それは嬉しい(笑)。」

──8thシングル「世界はまだ君を知らない」の時のインタビューで、暗闇にいる人に“大丈夫だよ、私も頑張れたもん”って伝えたくてできたとおっしゃってましたからね。

「そういうことを言ってるってのは、何かを越えた感じがしますよね。うん、いろんな経験を経て強くなったのかもしれない。そういう変化がより分かってもらえる一枚だと思います。」

──そんな阿部真央が、これから歌っていきたいことは?

「来年の頭で25歳になるんですけど、今の私が感じていることをできるだけ誠実に、良質に出していきたいですね。ただ丸くなっていくだけはつまらないから、今までみたいなアッパーな曲だったり、いろんな曲調の歌を書いていきたいと思っているんですけど、その書く視点や見る視線をどんどん変化していけたら嬉しいなって。これからもっと年齢を重ねたり、リリースを続けていくと、どうしてもファンの方のふるいの時期が訪れると思うんですよ。これまでのような阿部真央のショッキングな曲が好きだった人が離れていく時期が訪れると思うし、逆に新しいファンの方が来てくれる機会も生まれるとも思うし。それでファンの方が減っていく一方なのであれば、それが私の実力なんだろうから、その時は何か考えないといけないと思うけど、許される限りは、その時に感じていること、“これを書きたいな”というものを曲にしていけたら嬉しいですね。…って思えるのも、今まで支えてくれたファンのお陰なんですよね。結局、いろんな曲を作っても離れないでいてくれたし。そういうのが、一番嬉しいですね。1曲だったり、1枚のアルバムを評価してもらえるより、5年間通して“阿部真央の作る曲が好きなんだ”って言ってもらえると、ものすごく“やってて良かったな”って思えるから、そう言ってもらえるように常に誠実に歌っていきたいです。」

──それは5年間、ちゃんと自分を落とし込んで曲を書いてきたからですよ。凹んでる時は凹んだ曲を書いてるし(笑)。

「あはは、そうですよね。この間もね、ファンの子からのTwitterの返信で“あべま、落ち込みやすい性格だけど、頑張って!”や“溜め込む性格だけど、負けないでね”みたいなことを言われて、みんな分かってるな?って(笑)。ファンとの距離の取り方もいろいろあるけど、私の場合はこれでいいのかなって。ファンに甘えちゃおうって(笑)。みんな、やさしいからね。」

──そして、10月には日本武道館公演が控えているわけですが。いよいよ近付いてきましたね。

「ねー。すごくシンプルにしたいと思ってるんですよ。今までの阿部真央のライヴの武道館バージョンができればいいなって。今までやってきたことの延長線上で、武道館に似合うことができればそれで十分だと思っていて、“これからも頑張ります”っていうライヴにしたいなって。武道館だからって特別なことはしたくないし、そういうことができるアーティストのほうが私はカッコ良いと思っていいるので、そうやって自分に合ったやり方が貫き通していけたら嬉しいですね。」

取材:石田博嗣

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