2013-07-22

【小林太郎】 生々しいぐらいに 自分自身と向き合った

 初となるシングルで新たな方向性を打ち出した小林太郎。今、彼は何に重きを置いて音楽表現をしようとしているのか?


──メジャー1st EP『MILESTONE』とメジャー1stフルアルバム『tremolo』で小林太郎の音楽を提示できたと思うのですが、そこからのネクストである今作はどんなものを作ろうと?

「初のシングルだったので分からないところもいっぱいあったんですけど、生々しいぐらいに自分自身と向き合ったものを出したいと思ったんですね。それは主に歌詞において。『MILESTONE』『tremolo』は主に音の面で“自然に自分から流れてくるものをそのまま作ろう、とりあえずは”っていう作り方だったんですよ。だから、今回のシングルは個性を音だけじゃなくて、歌詞でできるだけ表現しようと。そうすればそうするほど、ライヴでもお客さんとの距離が近くなるだろうし、曲を聴いている時も自分の曲にしてもらえるんじゃないかなと。「鼓動」はそのために書いた曲の中のひとつで…それはカップリングの「蕾」もそうですね。」

──『MILESTONE』や『tremolo』でも自分と対峙してましたけど、もっと深く自分と向き合ったと?

「『tremolo』までは音と対峙してたんですよ。頭の中の雰囲気を音で表現したい、曲で表現したいって。だから、自分が心底何を歌いたいかっていうのはなかったんですね。でも、今回の制作では音と向き合うのはもう十分だなって自分で思えたのもあって、今まで背を向けていた言葉に向き合ってみる時だなと。「鼓動」とか「蕾」でやりたかったのは、お客さんに寄り添うということだったんです。生々しく自分を出すことで自分に寄り添うので、それは同時に相手に寄り添うということにもなるんじゃないかと。自分と仲良くないのに相手とも仲良くできるはずがないですからね。」

──お客さんとキャッチボールしたいと。

「そうですね。キャッチボールをしながら、その距離を近付けていく…だから、お客さんと同じものを見つけたいですよね。その核心があれば、例えばバラードはもっと心に入っていけるかもしれないし、ロックな曲はもっと刺々しくなる気がするんです。自分の思ったことを直に言っているわけだから。今まではそれをしなかったけどこれからはそれをして、自分の音楽をもっと強くしたいなぁと思ってます。」

──では、そんな「鼓動」では歌詞で何を言おうと?

「自然に出てきたのは恋愛の歌詞だったんですけど、今までと違うのはストーリーを決めたんですね。男女の恋愛の歌で、男の欲望のほうが強く出ているというか。男がその女を奪い去るくらいの。個人的にはそういう恋愛の歌詞になったと思ってるんですけど、前の取材で“音楽に対する考え方みたいだね”って言われたんですよ。自分が音楽を奪い去るじゃないけど、音楽を自分のものにする、自分のほうに音楽をぐっと引っ張ってくるっていう。だから、無意識に生々しくすればするほどそういうものが今までよりも分かりやすく、比喩的に出るんだなぁって。」

──確かに、太郎くんの人間性が歌詞に出ていると思いましたよ。《情熱や夢なんか アテにならない》と言いつつも、それを越えていこうとしている…それも自分のやり方で、自分が満足するところにいくという強い意志を感じたというか。

「俺も歌詞を書いてみて、ワンフレーズとかでもすごい感じるんですけど、まだ自分で把握し切れていないところもいっぱいあるんですよ。だから、「鼓動」「蕾」は完成された曲というよりかは、新しい二歩目を踏み出した意欲作なんだろうなって思いますね。まだ不器用で上手く言葉が操れないかもしれないけど、それでもいいから相手に近づきたい…そういう前のめりな気持ちがすごく出ているんじゃないかなと思いますね。」

──歌詞が書けた時の達成感は今までと違っていました?

「そうですね。はっきり見えるようになったんですよ、自分がどうしたいかっていうのが。でも、まだまだですね。今まで音を勉強しよう、音とぶつかろうっていう感じだったけど、これからは音楽そのものが自分自身にならなきゃいけない…と思い始めたタイミングですね、今。」

──そういう意識はアレンジにも影響していますか?

 「今までは足し算で、これもあってあれもあってって、いろいろあったからぶつかる良さもあったんですけど、今回は自分がどうしたいのかを表現するためには、それを表現するもの以外を削っていかなきゃいけない。「鼓動」や「蕾」はイントロでギターが大きめになっているけど、歌が入ってくるとすっとなくなるんですね。極端でもいいから、自分が何をしたいかを伝えるためにもっと技術的にも大胆にいきたいなと。時間がかかるかもしれないし、初めてのことだから分からないんだけど、俺の一番したいことっていうのは音と勝負するんじゃなくて、自分の音楽をすることなので、自分の言葉で曲が書けるようになるのが一番なんですよね。“俺はこんなことを思っているけど、お前はどう思ってる?”だったり、そういう気持ちを刺激したりされたりっていうのが、一番日本の音楽ではいい気がするんですよ。もっと会話できるように。」

──次のステップを踏み込んだ小林太郎を感じられるシングルが作れたという感じですね。

「そうですね。今何が一番大事かって言ったら、心の面が大事ってことに気付けたタイミングなので。要らないものを削ぎ落として、ある程度荒削りな姿で心の面を表現できたんじゃないかなと思っています。」

取材:石田博嗣

(OKMusic)


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