君の沈んだプールへ 男たちが飛び込んだ
でも君はここにいる
羊飼いが手を上げる たかが知れた痛みのなか
笑みを洩らす君はもう
ながくはもたないと思った
とっさに「帰ろう」って手を引いた

管制塔 黙り込む 機内の酸素は薄れる
かつて嫌った夕焼け
燃える客室のなかで 嘘をつけない体で
ふたり こころに決めた
炎はいまに呑み込もうとしてる
来ない迎え 待った

『もしもし
パパだよ、ママだよ
今頃は家に着いたかな
ごめんね、許して、許して
僕らまだ子供だったんだ』
いいよ、いいよ、知っていたよ
目隠しをして産まれてきたんだよね

君はいま次の夢を見ようとしている
瞳孔を開いて

光の庭は果実で溢れ
朝 眩しいホース
株価は暴落
とある日のニューヨークで
腹を抱えて 笑う 笑う
塩の柱は僕らの前にもうひとつもないよ

歯車が悲鳴を上げるのを僕は聴いた
そこはとても寂しい国
経済は脆くも崩れた
粉々に割れたクレジットカード 水浸しの小切手
我らが愛すべき愚かな王様の
国を挙げてもてあます休日
アルコールの海に漕ぎだして
遭難したことを決して認めようとしない
帆が折れて船が沈んでしまっても
君はまだ信じられない 僕を失ったことに
僕はまだ信じられない 君を失ったことに
巡り巡って地球を一周したようだ
すでに方位磁針に針はないけれど
城壁の向こうの取り繕った朝食の気配だってもうここにはない
僕の誰にも知られたくなかった君の犯罪者のような目
守り抜こうとしたものは指の隙間から
最後の最後でこぼれ落ちていってしまった
それはいつでも滑走路から
離れられずに燃えている
でも どうか諦めないで
だって 僕たちはまだこの世界に産まれてはいない
荒れ放題の庭で全部の催しは終わっていない
永久に続く寝息のような 優しい象の背中
美しいものは巧妙にカモフラージュされている
かけられた巨大な布
大掛かりな手品が始まる
僕はただ君の笑顔が好きなひとりの愚かな人間だった
君のよろこぶ姿が見たかったんだ
トイレの床に出現する甘いチアノーゼが
僕たちの足跡をたどって瞬く間に地球を覆い尽くしていく
僕たちはまだこの世界に産まれてはいない

受けとめて、君

みて
晴れた
空から降ってくる


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