君の街に影を滑らした時計塔は歌う僕らのことを
真鍮の歯車と軸がチクタクチクタク鳴っている
それも今じゃダサイ甲冑と逆さのマンジが集う場所で
1万の無慈悲な革靴がザクザクカツカツ鳴っている

明日の船はアメリカへ
君だけでも逃げてくれ
(嫌だよ逃げない、あなたとここにいる)
君の叔父が大学だってなんだって良くしてくれるさ
(嫌だよ逃げない、私も一緒だよ)

船の汽笛が
僕らの淡い恋の終わりを寝ぼけて決めつけても
ねえ泣かないで
乾いた涙の跡を辿ってまた会えるから

あれから数年たったけれど時計塔は歌う僕らのことを
変わらずに歯車と軸はチクタクチクタク鳴っている
そして今やダサい甲冑と逆さのマンジは煤をかぶり
踏みにじり疲れた革靴は足跡残して消えていく

明日の船は君を乗せて
つのる恋を運んでくる
(はやく会いたいよ、待ちきれなくなって)
真夜中の路地を抜けて時計塔に忍び込む
螺旋階段を 急いで駆け上る

海を見渡して
朝焼けの向こうに小さな影が見えた気がした
名前を呼んだ
潮風にあてられた僕らは誰よりもハイになっていく

時計塔の鐘は
時代の移り変わる音を高らかに響かせる
泣かないで
乾いた涙の跡を辿ってまた会えるから


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