悲しすぎることは
思い出したくない
美しいことだけ
人は憶えてる
あの夏のことは
思い出したくない
プールサイドのベンチ
かげろうのテラス
うすい胸を かさねたとき
きみは他の 名を呼んだ

青春の暑いフレアに
うかれてたあのとき
目もくらむほどに激しく
ふたりかがやいてた
抱きしめても抱きしめても
とおくとおく ふたり
遠雷に耳を澄ませば
草のにおいがした

大人になる日が
やがて訪れて
君は口紅引いて
ホームに手を振る
僕は汽車に乗れず
ただ君の薔薇色の
唇がうごくのを
黙って見ていた
細い指を からめたとき
ふたり何を 契ったの

青春の暑いフレアに
吹かれてたねふたり
もう二度と
あんなにあつく
人を求めはしない
木陰をさがすふりをして
君は去って行くの
突然の雨にまぎれて
においも残さずに

青春の暑いフレアに
うかれてたあのとき
目もくらむほどに激しく
ふたりかがやいてた
抱きしめても抱きしめても
とおく今はとおく
夕焼けのビルの谷間に
草のにおいがした


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