かあちゃんが昨日死にました
夏の暑い暑い午後でした
空いっぱい蝉たちがしきりに鳴いていました
群にまぎれて僕も泣きました

健坊たちもかけつけてくれました
花屋の真ちゃんは祭壇を作ってました
汗だくの真ちゃんの無言の背中を見てたら
とめどなく涙があふれてきました

かあちゃんが焼き場に放り出されるその前に
でっかい背中が遂に崩れ落ちました
そうです僕の親父は最後の最後のお別れを
おふくろの口びるに告げました

息絶えるまでのわずかな温もりでした
僕はかあちゃんの右手を握りしめてました
生き抜く力をふりしぼり僕に向けてひとつだけ
かあちゃんは息をしてみせてくれました

生まれてよかったと
僕は初めて思いました
そしてこの母(ひと)が僕を生んでくれたんだなって
なぜかあたりまえのことを考えていました

少しだけ気の早いコオロギが一匹
僕の部屋に舞い込んで来ました
そして僕は言いました
『お前も生まれてよかったね』と。

LALALALA LALALALA


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