円の中心に立って雨を待ち望むとき
人は守られている 空想の卵のなか
もう一歩も踏み出せない
外の世界で砂埃が舞っている
ラジオが放送されている 息も絶え絶えに
夜の闇を瞬くシナプスの列
カメラのフラッシュ
ショーウィンドウ
円の中心に立って雨を待ち望むとき
人は守られている 空想の卵のなか
誰かが何かを吹き込んだ
頭のなか テープレコーダー
人はそれを記憶と呼んだ
頭のなかテープレコーダー
原音を忠実に再生していると誰もが口をそろえて

新聞紙はそう言った
雑音に満ちた数世紀をまたぐ

名前が足りない
名前が見つからない戦争があって
言葉がだぶつく
言葉があり余る季節がきた
いつでも視線を感じている

新聞紙はそう言った

暴風雨が踊る
おびただしいアンテナをなぎ倒して

それは人間のようなかたちをしている
それは鳥のようなかたちをしている
それは衛星のようなかたちをしている
それは電波のようなかたちをしている
それは塔のようなかたちをしている
それは箱のようなかたちをしている

名前が足りない
名前が見つからない戦争があって
言葉がだぶつく
言葉があり余る季節がきた
いつでも視線を感じている

新聞紙はそう言った
雑音に満ちた数世紀をまたぐ


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