仄暗い
霧の中消えて行く
影を見送る
手を振った奇麗な曲線(カーブ)が
いつまでも揺れてる

美しい朝は
誰かを送る為にあるのだろう
胸を啄む甘い宝石を
また一粒残して

追憶の
ざらりとした手触りに
指を這わせて
きらめいた
真昼の星を静かに
夜へ落とそう

戯れる記憶の中
何も届かない
永遠とよく似た
夢の砦に
「あの日」の風が吹く
額を抜けて行く
磨かれた時間の罠
追憶の深く
もう何もいらない

顔の無い声と
瞼を滑る
見えない指先
優しさだけを
繋ぎ合わせた貴方は
名前も持たない

瓶の中にある空は
もうすぐ日暮れて
黄金(きん)色の吐息を
ただ繰り返す
一番幸せな
時を探したら
欲張りな子供は
何処まで還るのだろう

森のほとりにある
楡の木の下で
愛の仕草だけを
ただ繰り返す
夏の風過ぎ行く
額を抜けて行く
音の無い空から降る
ことばの無いうた
もう何もいらない

美しい記憶の国で
追憶の宴を始めよう


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