閉店間際 カフェの隅で草臥れた老紳士に
ウェイトレスが冷めた夕闇を欠けたグラスにサーヴして

ハロー 闇夜 やさしい闇よ
ゆらゆらと滲むランプよ
温かみも不確かさも 灯して 今

出会った喜びも失くした悲しみも
刻んだ肌 明かりが照らす
鮮やかな面影も抱き合った遠い日々も
月日が流してしまうのだろう

さようならは言えなくても
もう二度と会えなくても
闇がそっと辺りを包んだ

終電が滑り込む夜の切れ端を拾った少年に
ウェイターが燃え上がる朝を新しいカップにサーヴして

アデュー 闇夜 やさしい闇よ
あと数分で昇る朝陽よ
胸騒ぎも貧しさも照らして ほら

足取りが重くても 荷物は軽いだろう
旅路はこれからさ ほら
彼がいつか老い果てても 息絶えてしまっても
君は構わず進むんだよ

さようなら 今日という日よ
もう二度と会えなくても
朝陽がそっと辺りを包んだ

魔法のように潰えてしまうのだろう
想いも骨も皮膚も

出会った喜びも失くした悲しみも
月日が流してしまったよ
鮮やかな面影も抱き合った遠い日々も
月日が流した

空が少し白む頃 街の靄は晴れるだろう
旅路はこれからさ ほら
僕がいつか老い果てても 途絶えてしまっても
君は構わず進むんだよ

さようなら 愛しい君よ
もう二度と会えなくても
朝陽がそっと辺りを包んだ


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