ワセリンの匂いがする部屋が
記憶に浮き上がった
最後までは思い出せないけどさ
なんとなくが確信に変わる頃
怖くなっていく予感がしたんだ

でも何故だろう
ねえ何故だろう
動き出す身体を止められない
諦めるか
この際だし
糸を手繰り寄せた
肌を寄せた記憶さえも
どうも曖昧に煙った
どこもかしこも見えないものだらけ

消えかかるまで
大切さに気付けなかった
消えかかる声
優しい想いに研ぎ澄ます
消えかかるまで
泣いたりなんてしなかったのに
なくなりそうになって
いざぶつけるなんてずるいよね

今すぐになんて無茶はしないで
ってきっと言うんだろな
控えめなんて言わないでよって
顔を赤らめて笑うんだろな

「今から迎えに行くから」
「そうね、間に合うかしら」
「いなくなるなんて言わないでね」
「そういえば今日はやけに身体が軽いの」
「そうか、それは良かった」
「でもあなたのことを忘れそうなの」
「実は同じなんだ」

消えかかるまで
大切さに気付けなかった
消えかかる声
優しい想いに研ぎ澄ます
消えかかるまで
泣いたりなんてしなかったのに
なくなりそうになって
いざぶつけるなんてずるいよね


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