彩冷える/鉄の島

灰キノコの森、さまよい魚

彩冷える


word: 涼平 music: 涼平

『鉄の島』収録

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  • 通り抜ける魚達は、風船売りがやってくるのを待っている。
    人の背丈の3倍もある灰キノコの群れ。


    その奥深くに風船売りは住んでいるから、
    僕らも「カラノキタイ」を風船に詰めてもらおう。


    (風船売りは灰キノコをかじるのが好きだタバコを吸うようにね。)


    「カラノキタイ」を体に入れてもらいたい「さまよい魚」たちは必然的な森に集中するのだよね。


    (そうすれば、この島に住む、動物と恋を語らう事だって出来るようになる。)


    すごい勢いで飛び回るから、
    僕らはほとんど匍匐前進で這うように歩かないといけない。



    「大好きです」と「一つ目の魚」は想い人に言うためにね、
    「さまよい魚」になって飛び回ってきたのだそうです。
    彼女は、少し微笑んで、「さまよい魚」と二人で楽しそうに話をしていた。


    僕は、少しの間に、大量の嫉妬を覚えた。
    「魚」の恋の成否はともかく、素直な言葉を吐くのは難しいよね。
    特に僕みたいなのには、とても難しい。

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