明日僕らはきっとふたりだけ せめて泡になって消えるまで
小説の山にそっと火をつけ たき火をして遊ぼうよ
いっそ東の岬から 大人たちの冷めた目を盗んで
次の船で逃げてしまおうか

いま 見えたんだ 夜と朝のつなぎ目が
ただ ひたすらに それだけ探し続けたら
ほら 見えたんだ 開け放った窓の向こう
白々と 陽は登る

まだ 分かるかな きらめく波の隙間には
ふと 気づくんだ ふざけた顔のきみがいて
すぐ 消えるんだ 夢と現実の半ばで
ゆらゆらと 目が覚める

小さく生きるこの街には 武器やロジックはいらないのに

明日僕らはきっとふたりだけ せめて雨になって溶けるまで
モルタルの壁に沿って大きな S.O.S.を描(えが)こうよ
行儀よく足を揃えた 兵隊達の落とした帽子を
被ったまま どこで泳ごうか

いま 作るんだ 深く煮詰めた欲望と
すぐ 混ぜるんだ こねくり回す渇望(かつぼう)で
ほら 満たすんだ 開け放った窓の向こうに繋げて

暴かれたこころを 捕まえて さあ さあ さあ!

僕らはずっとひとりだけ せめて上のまぶたが落ちるまで
鼻の奥がツンとするような映画の話をしていたい
きみは呼吸を整えて 長い髪を思い切り切ったら
見たことのない顔をした

明日はきっとふたりだけ せめて泡になって消えるまで
小説の山にそっと火をつけ たき火をして遊ぼうよ
いっそ東の岬から 大人たちの冷めた目を盗んで
次の船で逃げてあの国まで行きたいな

「ゆるぎない いとしみを かわらない あの日々を
またとない あいまいな ことばを 返して」


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