腐蝕の王

深（ふか）い　此（こ）の　涅（くり）の　底（そこ）で　腐爛（ふらん）せし　尊厳（そんげん）
幾億（いくおく）の　障（さわ）りに　稍（やや） 眩（ま）いて
無色（むしょく）の　天（そら）よ　腐蝕（ふしょく）の　果（は）てに　冴（さ）え行（ゆ）　け

不意（ふい）に　立（た）ち塞（ふさ）がる　難境（なんきょう）も
故意（こい）に　打（う）ち遣（や）られる　功業（こうぎょう）も
無意（むい）に　凝（こ）り固（かた）まる　概念（がいねん）も
心念（こころ）に　触（ふ）れて　意志（いし）へと　変（か）わる

深（ふか）い　此（こ）の　涅（くり）の　底（そこ）で　腐爛（ふらん）せし　尊厳（そんげん）
幾億（いくおく）の　障（さわ）りに　稍（やや） 眩（ま）いて
無色（むしょく）の　天（そら）よ　腐蝕（ふしょく）の　果（は）てに　冴（さ）え行（ゆ）　け

刹那（せつな）に　泛（うか）ぶ　空劫（くうこう）の　欲（よく）
成劫（じょうこう）に　在（あ）る　悦（よろこ）びの　翳（かげ）
壊劫（えこう）に　至（いた）る　故（ゆえ）など　知（し）らぬ
憂（うれ）いに　狂（ふ）れて　強（こわ）さを　備（そな）う

腐（くさ）り太刀（だち）の　錆（さび）が　今（いま） 触（ふ）らす　韻文（いんぶん）で
千億（せんおく）の　調（しら）べを　散撒（ばらま）いて
胡乱（うろん）な　聲（こえ）を　腐蝕（ふしょく）の　粮（かて）に　研（と）ぎ上（あ）げ

深（ふか）い　此（こ）の　國（くに）の　底（そこ）で　腐爛（ふらん）せし　尊厳（そんげん）
幾億（いくおく）の　障（さわ）りに　稍（やや） 眩（ま）いて
無色（むしょく）の　天（そら）の　腐蝕（ふしょく）の　咎（とが）を
誇（ほこ）りと　誉（ほま）れる　故（から）

屹度（きっと） 怺（こら）え切（き）る　先（さき）に　不乱（ふらん）たる　尊厳（そんげん）
追憶（ついおく）の　何彼（なにか）に　只（ただ） 泣（な）いて
勃嚕唵（ぼろん）を　極（きわ）む　腐蝕（ふしょく）の　王（おう）に　成（な）れ

潜血（せんけつ）に　濡（ぬ）れた　此（こ）の　讌（うたげ）の　行（ゆ）く先（さき）よ
謭劣（せんれつ）に　燃（も）えた　此（こ）の　謠（うたい）の　成（な）れの果（は）てよ