「もし私が今此処で記憶を消せたら…」
あぁ、また始まった。
君は可愛げのない目で
「ヒトは忘れていく事で体軽くして
次の悲しみを受け入れられるように生きてる筈じゃない?」

確かにその通りなのかもしれないな。
いらないトコ上手くエディットしてさ。

切り貼りして継ぎ接ぎのアートみたい。
けれど僕の大好きな目の前の君は痛みの上咲いた花なんだ。
そして僕は自分の口を閉ざした。

「もし私が今此処で記憶を消せたら…」
こんなに悲しい台詞取り上げたいのに。

「どうして最後にしたい程
最後にならなくてストックしたくもない誰かとの思い出引き連れ歩くの?」

確かにその通りなのかもしれないな。
お気に入りばっかリストにしてさ。
ハズレの無い名店か何かみたい。
けれど何故か不平等である程にオリジナルになる気がしたんだ。
その証拠にほら、君ばかり見てしまう。

「そもそも僕らの容量は小さ過ぎてお話にもならない状況だよね。
だからこそ…」
「だからこそ何?」
そこで君が制した。
「だからこそ心軽くしてくれる相手と都合良く寄り添うとでも云うの?
そんなの馬鹿みたい」

確かにその通りなのかもしれないな。
いらないトコ上手くエディットしてさ。
切り貼りして継ぎ接ぎのアートみたい。
「けれど僕の大好きな目の前の君は痛みの上咲いた花なんだ」
そして僕は君の唇を塞いだ。


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