誰が為に

万朶の花が　紅く染まる

巡らされた卍の企図が
秘匿された大儀を告げる

為政の風に　靡き揺れる
眼は　氷のように

誰が為に流す赤き血潮
誰が為の刃傷
誰が為に走り何処へゆくか
闇夜は知っている

錆をおびた琥珀の焔
ぬれひかるは非業の桜
剣気冴えた欣求の鬼が
斬りて斬れば斬るほど
車は廻る

誰が為に果たす徒し契り
誰が為の傀儡
誰が為に捧げふるう刃
肺腑を灼きながら

朽葉の白は　赤に変わる
彼等はもはや　人にあらず
万苦の花が　散りてもえる
一途な　忍の道よ

誰が為に流す鉄の涙
違えたは宿命
結ばれず尽きた愛しい女の
面輪を追いながら

誰が為に生きた哀の地獄
誰が為の忠誠
誰が為に命燃やし逝くか
心は知っている

嗚呼――

熟し落ちた卍の屍
そそぐ雪は冥土の手向け