「父さん、母さん。私、あの人と東京で暮らす事にしました。
馬鹿な事だとは十分解ってます。
私だってもう子供じゃありません。自分で考えられます。
ごめんなさい。最後のわがまま許して下さい…」

愛する人が今の私の全てです
貴方がいるから私が私でいられるの
あの日貴方から渡された東京行きの切符と
打ち明けてくれた、将来と夢は
「この街を出て東京で一緒に暮らしてくれないか?」
私は少し惑いながらも嬉しかった
不安なんて少しもなかった 愛する人が一緒ですから
辛い時や寂しい時も多少あるでしょうが
頼る家族も捨ててきました 馬鹿な甘えや未練も全部
貴方との新しい人生と夢の為に
貧しさが身に染み渡る だけど貴方が居るから
帰りを待つ時間さえも幸せで溢れてる
心をこめて作った貴方が好きな料理
喜ぶ顔が早く見たい… 見たいです

「東京の生活にも慣れてきました。
あの人は毎日夜遅くまでお仕事がんばってます。
そのせいでしょうか、最近元気が無い様に思えます。
私が聞いても、ただくたびれた笑顔を見せるだけで
答えてくれません。心配で仕方ないです。」

「ただいま。」

とても優しい貴方の声
辛い時はいつも二人で支え合った
どんなに不幸でも二人なら大丈夫だった
愛が冷めた訳じゃない ただお互いの気持ちが
そっぽを向いてただけ
初めて貴方が泣いてた 社会に破れた夜
何て声をかけたらいいか、、、?えて
夢の為に無くした幸せな家庭は
前を向けずただ悔しくて泣いている
貧しさが身に染みる 二人は手を取って
季節はずれの線香花火を見つめてる
この火種が落ちて 未練が無くなったら
目を閉じて極寒の海へ、、、二人で。
繋いだ手がほどけて 無になる私と貴方。

「貴方と過ごした十三ヶ月間。本当に色々ありましたね。
一緒に居たからよく解ります。頑張り過ぎてつかれたんでしょ?
もう大丈夫 私ずっと一緒に居るから。ごめんね父さん、母さん。
あたしこの人無しじゃ生きて行けない。心配させてごめんなさい。
ごめんなさい。ごめんなさい…」

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