少女病/metaphor

灰色のトランジェント

少女病


word: 少女病 music: RD-Sounds

『metaphor』収録

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  • 「国が管理する孤児院で生活する少女。
    年上の孤児たちは一人、また一人と順番に貰われていく。
    笑顔で新しい家族に迎え入れられる彼らに、羨望の眼差しを向けて……」

    「きっと、生まれ変わるみたいに何もかもが変わるんだ」

    「次は、彼女の番――――」

    誕生日には 枢機卿[Cardinal]様の
    娘として引き取られることになった
    でも喜べない 彼の舐るような視線に不安が募る

    悩みを月に吐露した
    その夜に意図せず立ち聞きしてしまう
    「あの方々の趣味も困ったものだわ……」

    「記憶も瞳も 手足でさえも
    全て別の子供のものを組み合わせることで、理想の娘を造る。
    養子でも、まだ幼い恋人でもある愛玩人形。
    人を人として見ない、偽りの博愛主義者……!」

    「猊下は、あの子の美しい瞳が欲しいそうなの」

    「その瞳からは、綺麗な粒の涙が静かに流れて――――」

    この瞳だけ欲しいというなら
    いっそ自分で潰してしまいたい
    けれどそんな怒りも どこか空虚なまま諦観に沈んでゆく

    先に引き取られていった
    この孤児院の義姉達は生きているの?
    幸せになっていると思ってたのに――――

    長い夢をみた 蒼白の夢
    永遠と紛うような深くて優しい夢を
    揺すられて目を覚ましたら
    孤児院の教師達は残らず死体になっていた

    「あのね、魔女がみんな壊していっちゃった……。
    こわかったよぅ……」

    「枢機卿[Cardinal]も殺されたらしい、と義妹が泣く」

    「どうして……?まさか、私達のため……?」

    用は済んだ、と この孤児院から立ち去ろうとしている魔女を追って跪く
    「何かしら。あなたも死にたい?」
    その問いに無言のまま ただ首を強く振った
    楽しげに興味深げに
    微笑んだ 蒼白の魔女は試すように囁く

    「そう。なら、ついてきなさい。戻らぬ覚悟があるなら……」

    「少女は過去を想い返しながら、返り血に濡れた髪をみる」

    「確かに、あの日一度生まれ変わったのかもしれない」

    「感傷を捨てて、魔女の傍らに跪く。
    それだけが少女の――――シルエラの、存在理由だと言うように」

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