それはまだ 私が神様を信じなかった頃
九月のとある木曜日に雨が降りまして
こんな日に素敵な彼が現れないかと
思ったところへ あなたが雨やどり
すいませんねと笑うあなたの笑顔
とても凛凛しくて
前歯から右四本目に虫歯がありまして
しかたがないから買ったばかりの
スヌーピーのハンカチ
貸してあげたけど 傘の方がよかったかしら

でも爽やかさが とても素敵だったので
そこは苦しい時だけの神だのみ
もしも もしも 出来ることでしたれば
あの人に も一度逢わせてちょうだいませませ
ところが実に偶然というのは恐ろしいもので
今年の初詣に 私の晴着のスソ 踏んづけて
あっこりゃまたすいませんねと笑う
口元から虫歯が キラリン
夢かと思って ほっぺつねったら痛かった

そんな馬鹿げた話は 今まで聞いたことがないと
ママも兄貴も死ぬ程に笑いころげる奴らでして
それでも私が突然 口紅などつけたものだから
おまえ大丈夫かと おでこに手をあてた
本当ならつれて来てみろという
リクエストにお応えして
五月のとある水曜日に 彼を呼びまして
自信たっぷりに紹介したらば 彼の靴下に
穴がポカリン
あわてて おさえたけど すっかり見られた

でも爽やかさが とても素敵だわとうけたので
彼が気をよくして 急に
もしも もしも 出来ることでしたれば
この人をお嫁さんにちょうだいませませ
その後 私 気を失ってたから
よくわからないけど
目が覚めたら
そういう話がすっかり出来あがっていて
おめでとうって言われて も一度 気を失って
気がついたら あなたの腕に 雨やどり

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