2014-09-03
在日ファンク、原点回帰を果たしたメジャーデビュー盤『笑うな』
在日ファンクがついにメジャーシーンに進出! メジャーデビュー盤『笑うな』は、ジェイムス・ブラウン直系のファンクサウンドとシンプル&ディープな歌詞がぶつかり合う、原点回帰を感じさせる作品となった。そんな本作についてハマケンこと浜野謙太(Vo)が語る。
──メジャーデビューアルバム『笑うな』、最高ですね。JB直系のサウンドやダイレクトなリリックを含め、初期衝動を取り戻したような作品だな、と。
とにかくシンプルにしたかったんですよね。2ndアルバム(『爆弾こわい』)、その後のミニアルバム『連絡』あたりは結構音を積み上げて作ったところがあるんですよ。制作の時間が限られてるから、なるべく僕がひとり作業でアレンジを固めたんですけど、そうすると“盛り盛り”になっちゃって。今回は“余計なモノをもっと削ぎ落とせるんじゃないか”って思ったんです。言葉もガンガン減らして。マネージャーからも“何も言わないでいいんじゃないですか”って言われたし(笑)。
──サウンドも歌詞も研ぎ澄ませる方向で。
そうですね。いろんなものに感化されていく中で、“モノ言いたい!”みたいなのってあるじゃないですか。俺はやっぱり音楽の中で言いたいから、どうしても歌詞が情報過多になっちゃって。今回のアルバムの曲は、ほとんど同じ言葉を連呼してますからね(笑)。それでもメンバーがずっとエキサイティングできる曲しか入れなかったので。
──なるほど。リードトラックの「根にもってます」も、ほぼ“根にもってます”の連呼ですからね。
それ以外は何も言ってないから、最初は“大丈夫かな?”って思ったんだけど(笑)。本当は俺、いろんな思いがあるんですよ。今の政治に対して思ってることだったり…。
──え、本当に?
本当です。深い深い社会風刺が込められてるんだけど、それはあえて書かないようにして。ただ、“俺は絶対に忘れないぞ”っていうことだけは言いたいな、と。
──いいと思います。日本人は根に持つのが下手というか、すぐ水に流そうとしますからね。
お、いいこと言ってくれましたよ!! これはね、水に流しちゃいけないと思うんですよね。“そうすることがさわやかだ”みたいなのもどうかと思うし。現代の社会システムの中では、根に持ってないと大変なことになりますよ。誰かが何とかしてくれるわけではないので。
──いや、本当にそうですよね。
あとね、“根にもってます”っていうのは、単に“怒ってます”とか“恨んでます”ってことじゃなくて、根を張ってるというか、“あのことをずっと抱えてますよ”という意味なんですよね。僕はジェイムス・ブラウンのことも根に持ってるし、アメリカに対してもそうだし。最悪な状況になりつつある日本に対しても、やっぱり根に持ってるんですよ。そういう意味では、愛のある曲なんですけどね。
──まさにレベル・ミュージックですね!
そうです! そういうふうに受け取られないと意味ないんだけど(笑)。
──「ちっちゃい」もひたすら“ちっちゃい”を叫び続ける曲ですが。
曲がカッコ良いから、“ちっちゃい”ってどうなんだろうな?って思ったんですけど、その言葉しかハマらなくて…。ライヴでやっててもすごく気持ち良いし、この曲もずっと思っていたことを歌ってるんですよ。言ってしまえば、アメリカへの思いですよね。好きだけどムカつくっていう。
──アルバムタイトルの“笑うな”については?
この言葉にもいろんな思いがあるんですけど…。ちょっと笑いすぎだと思うんですよ、みんな。市場原理って“売れてるものは正しい”ってことじゃないですか。それと同じで“笑えるんだからいいじゃないか”みたいなところがあるんじゃないかって。例えばメンバー同士のミーティングでも、俺が正論を言うと“(半笑いで)だって、それはさぁ~”みたいな反応が返ってくることがあるんですよ。笑ってんじゃねぇよ!ってことなんですけどね、俺からすると。“怒ってるヤツは頭悪い”みたいな風潮もイヤだし。
──いいですね、その過剰さ。そう言えばハマケンさん、ホームページに掲載された所信表明の中で、“おれは在日ファンクになりたい”と記していますが、あれはどういう意味ですか?
あれはですね、『鈴木先生』という映画に出させてもらった時に、原作を書いた武富健治先生と話をしたことがきっかけだったんです。すごい感化されたんですよね。自分と同じようなものを抱えながら、最前線で頑張ってるんだなって。“ありのままの自分がいい”みたいな風潮もありますけど、そうじゃなくて、何かになろうと頑張らなくちゃいけないと思うんですよね。そうすることで破綻することもあるだろうし、“現実に則してない”とか“自分らしくない”って言われるかもしれないけど、“こうなりたい!”っていう理想を目指したほうがいいっていう。
──なるほど。
あと、ここ1年くらい、周りの人に怒られることが多かったんですよ。声帯炎でツアーを延期したり、“こんなんじゃダメだ!”ってメンバーやマネージャーに本気で怒られて。その時もやっぱり、“俺は在日ファンクにならなくちゃいけない”と思ったんですよね。日本コロムビアに来て、仲間が増えて、みんなが一生懸命に在日ファンクを作ろうしていて、その期待にも応えたいですからね。
──10月からはアルバムを引っ提げた全国ツアーがスタートしますが、さらに濃密なファンクが体感できそうですね。
聴いてほしい曲がいっぱいありますからね、今回のアルバムは。在日ファンクって、ワンマンよりもイベントのほうが盛り上がったりするんですよ。30分くらいがちょうどいいっていう(笑)。でも、今回はじっくり聴いてもらいたいなって。俺らも楽しみなんですよね、アルバムを中心にして、2時間くらいのライヴをやるのが。
取材:森 朋之
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