2013-04-20
【the band apart】日本語になって、それぞれの個性が出た
the band apartがアルバム『街の14景』を完成させた。昨年リリースされたシングル「2012 e.p.」に引き続き、全曲が日本語詞。それもあってメンバーの濃い個性が史上最高に生きている。荒井岳史(Vo&Gu)と木暮栄一(Dr)に話を訊いた。
──アルバムが完成したのは、いつ頃ですか?
荒井「正確に言うと、3月末までやってました。」
──おお、よく14曲も完成させましたね!
荒井「まぁ、逆に言えば、それだけ時間をかければできるでしょ、っていう気がしないでもない(笑)。」
木暮「あと、“街の14景”っていうタイトルを先に決めて発表しちゃったから。12景でもアルバムだったら、いいじゃん。」
──確かに(笑)。全曲日本語詞だけど、そういった大まかなイメージは決めた上で、制作に取り組んだのでしょうか?
荒井「まぁ、いつも通り音楽的なコンセプトはゼロで。でも、全曲を日本語で作ってみようかみたいな話はしたよね。」
木暮「前のシングルの時に日本語にしようよって言ったら、荒井以外のふたりは難色を示して。でも、今回は全曲日本語でって言ったら、“うん、分かった”みたいな。」
──そもそも、木暮くんが日本語詞を提案した理由って?
木暮「なんか、日本語のほうがカッコ良いんじゃないかなっていうふうに感覚がなってきて。何をどう歌うかっていうテーマがあると、引っ掛かりがあったほうがいいかなっていうので日本語にしたんだけど…よく考えたら英語でも分かるよね。“tonight”って歌ってたら、今夜何かあるのかな、くらいは(笑)。あと、きっかけは荒井とふたりで弾き語りをやっていて、後ろで叩きながら聴いていると、山下達郎さんのカバーとかやっていて、むしろ荒井の声には日本語が合うなって思って。」
──これまでも、英語にこだっていたわけじゃないんですね。
木暮「バンドを始めた時に影響を受けたのは、やっぱり『AIR JAM』世代だったから、みんな英語で歌っていて。当時はそれがカウンターでさ、それ自体がカッコ良いと思っていたんだけど、そういうのがなくなってた、いつの間にか。」
──荒井くんは、日本語詞に抵抗はなかった?
荒井「全然。っていうか、俺は英語が煩わしいと思っていたことがあるし(笑)。録音するとなると、俺、ネイティブスピーカーでも何でもないし、弾き語りで日本語もやっていたし。ただ、バンドでやるとどうなるのかな?っていうのは、一瞬頭をよぎったものの、一回やって、そんなに変わんないなって思って。はっきり言って楽です(笑)。あと、日本語で歌ってみて、英語で歌うことに対しての良さが分かったというか。」
──歌詞も全員が書いているんですよね?
木暮「そう。曲のネタを持ってきた奴が、書いてます。」
荒井「それがいいところだよね。」
木暮「前は英語だったから、7~8割くらい俺が書いていたんですけど、日本語になったら全部俺が書く必要ないじゃない。そうなると、わりとそれぞれの個性が出るというか。」
──個性は感じました! すごくメンバーの顔が浮かぶというか。
荒井「知っている人からしたら、そうかもしれないね。」
──日本語詞を書く上での苦労は?
荒井「曲のほうが苦労したかな。歌詞は右脳で書いちゃうから。この前のシングルの時に歌詞を書くのは、こっぱずかしいような気がしたけれど、今回はそういうのもゼロだったので。」
──荒井くんが歌詞を書いたのは?
荒井「「夜の向こうへ」「明日を知らない」「アウトサイダー」。」
──あ~、なるほど(笑)。木暮くんは以前からブログで文章のセンスを発揮していたし、日本語詞もすんなり書けたんじゃないのかな、と予想していたんですけど。
木暮「“この歌、何の歌?”って訊かれて、“特に意味ないよ”とかって言うのは嫌だったのね。でも、それがストレートすぎるのも嫌だったの。だから、人の想像力が入る余地がありつつ、自分の中でいい感じっていうのが、難しくて。今回も100パーセントはできていないから、まだまだやり甲斐があるかな。」
──木暮くんが書いたのは?
木暮「「いつかの」「ノード」「12月の」「泳ぐ針」「8月」。」
──ああ、「いつかの」は木暮くんぽい(笑)。
木暮「そう? 世の中的に自分の感覚とは全然違うなって思ったりして、怖いなぁっていうことを書いたんだけど。」
──ちなみに、原くんが書いたのは?
木暮「「仇になっても」「ARENNYAで待っている」、あとインストの「師走」。」
──やっぱり! 荒井くんの声だと“仇になっても”とか“クソ”とか歌っても、不思議とすっと入ってくるんですよね(笑)。
荒井「まぁ、そういう技術があるっていうことに気付きました、今回(笑)。俺、何でもいけるなって。言葉を選ばない。」
木暮「“クソ”っていう言葉とは、対極な声質と歌い方じゃない?いいギャップだなって(笑)。この歌詞は歌いたくないっていうのも、一回も言わなかったもんね。」
荒井「ない(笑)。(原の)生活に根付いた言葉だからね(笑)。まぁ、 こういうのをサラッとするのが、このバンドなのかな。」
──4人の個性が、まさにいろいろな景色を見せてくれるアルバムですけど、タイトルもそういうところから?
木暮「ネタを聴いていた時点で、どう考えてもバラバラ…っていうか、同じようなテーマ性を持って歌詞を書いているわけでもないし。そうなると、街があって、いろんなことが起こっているのを見てる感じかなって。」
──確かに。あと、音へのこだわりもあったんじゃないですか?
木暮「なんかね、今回はできていない段階でクリックとドラムだけで録るっていう曲が半分以上あったから、エンジニアの速水さんが、面白くしちゃいましょうって。そっから曲を作った人のイメージも取り入れつつ、出来上がっていって。このスタイルだと、速水さんしか録れないんじゃないかな。」
荒井「まぁ、周りは、もういい加減にしろって思っているでしょうけどね(笑)。」
──それでも、良い作品ができて良かった(笑)。
木暮&荒井「ありがとうございます(笑)。」
取材:高橋美穂
(OKMusic)
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