2013-03-20
【NICO Touches the Walls】ミュージシャンとリスナーが“1対1”でつながる
光村龍哉(Vo&Gu)の夢の中で曲が生まれたという驚きのエピソードを持つ前作「夢1号」に続く、NICO Touches the Wallsの新曲が完成! NICO流“アンセム”から松田聖子の名曲カバーまで、またしてもリスナーをいい意味で裏切る会心作の誕生だ。
──「夢1号」から約3カ月での新曲というかなりハイペースでのリリースになりましたが、今回の制作はいつ頃に?
光村「去年の夏ぐらいの、ひたすら曲を作ってた時期にできた中の1曲って感じでしたね。で、その時点で「夢1号」まではもう見えてたから、その次の“アンセム”みたいな感じで響いていったらいい曲だねっていう話はしてたんですよね、原曲を作った時点では。この曲を2013年の俺らの“アンセム”にしたいねっていう話だけをとにかくしてて。」
──この雄大に広がるメロディーは、“アンセム”っていう表現がぴったりだと思います。ライヴで大合唱が起こる場面が想像できそうで。NICO的“アンセム”の条件みたいなものを、改めてご自身ではどんな言葉で表現できますか?
光村「俺ららしい“アンセム”っていうのは…例えば、ものすっごい個人的な悩みを思いっ切り吐き出すこと、というか。それはどんなに暗くても良いし、弱々しい部分でも良いんだけど。人の勇気付け方ってあるじゃないですか。人がものすごくすっきりする瞬間っていうか。それって俺らの中では、ものすごく綺麗なことというか、“元気出せよ!”みたいなごくごく当たり前なことを元気な曲に乗せるっていうよりも、普段人に言えないようなことを音楽の中でちゃんと吐き出すことが、俺らの中では最もすべきことというか、役割のような感覚はすごく感じていて。」
──《どんな弱音も僕の声だ》とか、歌詞にはまさにそういう姿勢が表れてますね。そういう弱さも思いっ切り吐き出せるようなパワーを持っているのが、NICO的“アンセム”だと。
光村「だと思います。歌詞の内容としてはすごく弱々しいというか、頼りない感じなんですけど、そういう言葉をものすごくエバーグリーンなメロディーに乗せると、もしかしたらすごく救われる気持ちになるんじゃないかなって。音楽を理解する時って、“1対1”の関係だと思うんですよ。ミュージシャンとリスナーが。その“1対1”で濃密につながっていく場面がたくさん増えたらアンセムになると俺は思ってるんで、アレンジに関しても、すごくキラキラしていて、派手なアレンジにはなってると思うんですけど、アレンジが派手になればなるほど逆に染みてくる感覚もありますよね。」
古村「サウンドに関しては、もともとのみっちゃん(光村)のイメージを引き継いで、それをどう広げていくかっていう作業だったんで、キラキラしつつ繊細っていうイメージはギターに関しても最初から変わらなかったですね。ギターはメロディーを結構弾いてるんで、音をあんまり主張しすぎると…っていう。だから、今回は特に歪みを減らしたっていうのが大きくて、それがこの曲のクリアーな空気感に一番ハマるかなっていうアプローチにつながったのかなと思ってます。」
──クリアーな空気感、キラキラしたメロディーをあくまでも前面に押し出しつつ、リズムパターンが何気に変化に富んでいるのも印象的でした。気分が高揚します。
坂倉「ありがとうございます。うん、そうですね。この曲はデモの時点で、イントロから歌詞のストーリーがもうできてたんですよ。そこから曲が終わるまでに、イントロの景色とはまったく違う景色が最終的に見えてたんで、こういう派手なアレンジになっていきましたね。」
対馬「この曲はもともとはアコギと歌で作ってきたっていうところでも、アーシーな感じは一番の武器で一番の魅力だと思っていて。だから、ドラムもある意味ではアコースティックな楽器なので、気持ちとしてはそこに添える、一緒になって音を紡いでいるっていう感覚で叩いてましたね。だから、実はそんなに目立つような難しいこともやっていないっていうのと、4小節4拍目かな? そこでデジタルのパーン!っていう音がスネアと重なってるんですけど、ただドラムだけで表現するんじゃなくて別の音を同じタイミングで鳴らすことによって、ドラムで“おかず”をやるんじゃなく立体感を作りたいっていうのがありました。」
──今の言葉の中の“まったく違う景色”じゃないですけど、今回はひとつのシングルの中でかなり違う景色を見せてくれる作品 だと思うんです。まず、作曲が古村くんと坂倉くんの共作、作詞が坂倉くんの「チェインリアクション」。
光村「そうですね。この曲は前の『ALGORHYTMIQUE』ツアーで新曲をやりたいよねっていう話の中で、ライヴにおいて即戦力になり得るアッパーな曲を作ろうっていう。“ALGORHYTMIQUE”っていう時点で、ちょっと数学的な要素をアルゴリズムを作り上げていくような構築美みたいな曲を作れたらいいよねっていう話はみんなでしてて。」
坂倉「そう。そのツアーで、ライヴで観たかった景色というか。みんなが音楽に乗せられて、踊ってしまう景色が観たかったっていう中でできた曲ですね。」
──そして、あの名バラード「SWEET MEMORIES」を、こんなに楽しげにカバーする人は他にそういないと思います(笑)。
光村「そうですね(笑)。そこはもう、確実に裏切っていこうっていう。過去の「ラッパと娘」にしても、「決戦は金曜日」にしても、その曲がもともと持ってるイメージみたいなものを別の視点から描こうっていうのが、このカバーシリーズのひとつのテーマだったので。そういう中で、「SWEET MEMORIES」は他の方もたくさんカバーしてますけど、“これをビートルズがやっちゃったらどうな る?”みたいな。しかも、初期ビートルズがやっちゃったら楽しくなるんじゃないかなって思った瞬間は、自分の中で豆電球がパチーン!と光った瞬間でした(笑)。で、このアレンジでやることになって、ものすごく“シングアロング”できる曲なんだなって。さっきの“エバーグリーン”じゃないですけど、後々まで残っていく名曲はどう味付けしてもいいんだなっていうのはすごく感じましたね。自分たちもそういう曲を作れたらいいなと思います!」
取材:道明利友
(OKMusic)
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