2013-03-20
【BIGMAMA】プライドと責任、緊張を持った自然体
清く激しく美しく。ヴァイオリンを擁する、5人組ロックバンド・BIGMAMAが、5thアルバム『君想う、故に我在り』とDVD『母子手帳2006-2012』をリリース。彼らの新しい始まりも予感させる、会心の作品について金井政人(Vo&Gu)に語ってもらった。
──近況としては、『東京マラソン2013』を完走するも、本業に支障が出るほど足にダメージを負う金井くんですが(笑)。
「“走らない?”と誘われて、断るのがイヤだったんです! 常に新しい気持ちを持って何かに挑んでいたいという気持ちがあって、“自分を変えるには、人の誘いを断らないことだ”と思って、今年は全ての誘いに乗っていこうと。」
──そこにマラソンの誘いがきたんだ。
「はい。いざ現場に行ったら、応援してくれる人が結構いて。“いかに誰も傷付けずにギブアップするか?”ばかり考えてたけど、できなかったです(笑)。ただ、思春期の頃は“一生懸命やることのダサさ”みたいなのがあったけど、それがカッコ良いことだっていうのを強く再認識させられましたね。」
──走った意味もありましたね!では、5thアルバム『君想う、故に我在り』についてなのですが、まず完成しての感想は?
「う~ん…逆に聴いてみての感想はどうでした?」
──いい意味で肩の力が抜けた、すごく良い作品だと思いました。で、その後にDVD『母がまた母の日を終えるまで』(2012年発表)を観たら、聴こえ方が変わってきて。苦悩も乗り越え、大きく広がった視界で未来まで見据えた上で、現在の真正直な気持ちを表現した、“瞬間と永遠”を歌う作品なんだと思いました。
「そのままです、それで大丈夫です(笑)。前作から、音楽をやって生活しているプライドと責任、そこから来る緊張を持つようになっていて。プライドと責任、緊張、それを上回る愛情を120パーセント振り絞って作ったのが、前作だったんです。さらに良くできる点を見つけるとすれば、“もっと自然体でやるべきだ”と思って。自然体にプライドと責任、緊張を持ち込む。すごく難しいけど、それをするには自分をたった一行で説明するくらいの言葉が必要だと思って。それが、“君想う、故に我在り”だったんです。僕は自分が嬉しいと思う感覚とか信用していなくて、鏡に映る自分が喜んでいるより、相手が嬉しいと思ってくれるほうがトータルで嬉しいし、それが自分らしさなんじゃないかと思っていて。この言葉自体はずっと頭の片隅にあったんですけど、このアルバムタイトルのためにとっておいた言葉だったんだなと思ったんです。」
──前作ができた後、“楽曲に気持ちがついていかないフラストレーションもあった”と語っていましたが。
「今より前を向いて歌詞を書いている分、言葉通りの自分には追いつけなくて。それは今回も一緒で、もう自分で自分の首を絞めているけれど、それでいいと思っているところがあるんです。曲に自分が育てられて、メンバーや聴いてくれるたくさんの人がさらに曲を作り上げていくというのも、“君想う、故に我在り”というところにもフィットしてると思うし。“いろんな人が求めてくれて、それに相応しい人間になりたい”というのが、改めて空っぽの自分にピッタリだと思うんです。だから、もしかしたら体は前作で完成していたかもしれないけど、今作でやっと心と体がひとつになったのかもしれないですね。」
──心と体がひとつになった感じは、サウンドにも表れていますよ。壮大な曲からライヴ仕様の曲、しっかりメッセージを伝える曲まで、演奏で気持ちをしっかり伝え切れています。
「デビューから7年、ここまで変化し続けて、こういう立ち位置にいるバンドっていなくないですか!?(笑)」
──うん、同時発売のDVD『母子手帳 2006-2012』を観て、面白いバンドだなと改めて思いました(笑)。
「アハハ。バンドの歴史のどこを切り取って、どう見るかで、まったく見え方が違いますからね。僕らは転がり続けることを選んだし、自分たちらしさは自分たちで証明していくしかない。今作を聴いて、次にどんな曲が出てくるか戸惑うと思うんですけど。逆に言うと、何やってもいいと思ってて、自分たちの王道がたくさんできたと思うんです。だから、今作を作り終えた後、次の曲がすぐ作りたくなりました。自分の中でやりたいことが固まったんでしょうね、5枚目にして(笑)。」
──どこにでも行ける、ニュートラルさがありますよね。
「「RAINBOW」のようなロックにオーケストラを取り入れた王道だったり、「君想う、故に我在り」のようなヨーロッパ的な解釈とか新しい風を取り入れた唯一無二感を強調していく王道だったり、「ライフ・イズ・ミルフィーユ」のような歌詞をしっかり聴かせて心と体に丁寧に響く曲を作る王道だったり…長く続けて、愛されるバンドになるためにも、一点突破でなく、さまざまな角度からアプローチすることが必要だなと。今作ができてバンドの将来にも希望が持てました。「ライフ・イズ・ミルフィーユ」で歌うように、この作品も丁寧に積み重ねているうちの一枚だとしたら、綺麗に固く焼き上げた生地になったと思うので、それをまずはライヴでクリームを塗って一枚一枚積み重ねていく作業をしたいなと思っています。そして、また次の作品を重ねて、最終的にてっぺんから良い風景を見ようかなと。」
──新曲たちがライヴを通じて、ここからどう育っていくのかも楽しみですね。
「ライヴに関しては、会場やステージ上だけで完結させないようなライヴがしたいという気持ちがすごくあるんですよ。CDが出たら、もう僕らの曲はBIGMAMAの曲じゃなくて、聴いてくれる人の曲なので。その愛情確認をするのがライヴという場所だから、好きに歌ってほしいし、踊ってほしい。そこで自分のものが、他人の自分のものになる瞬間に喜びを感じられることが、すごく重要なことだと思うんですよ。今作がみんなのものになってくれたら嬉しいですね。2013年、いろんなCDが出ると思いますけど、これが一番良いと思います。」
──お、断言しましたね!
「はい。瞬発力でもっと売れるCDはあると思うけど、何年先にも価値がある作品になるという揺るがぬ自信と誇りがあります。騙されたと思って聴いてほしいですね(笑)。」
取材:フジジュン
(OKMusic)
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