2013-01-20
【The Mirraz】人や曲が生まれた理由も “選んでここに来たんだ”と願いたい
The Mirrazのメジャー1stアルバム『選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ』を畠山承平(Vo&Gu)に訊く。
今の音楽に物足りなさを感じている人、シンプルにダイレクトに、愛と真実を叩き付ける正義のロックンロールを食らえ!
──待望のメジャー1stアルバム『選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ』が完成しましたが、まずは率直な感想から訊かせてください。
「今まで自分の中でかたちにしたかったものがちゃんとできたというのが、最初の感想で。それは環境の変化というのが大きかったんですけど。 音楽的なセンスの善し悪しではなく、単純に聴きやすい音質とか、音のクオリティーとか。 質の悪さがアートなものを生むこともあるんですが、僕はインディーズの頃から音質を良くしたいという気持ちがあって。 なかなか実現できなかったことが、今回やっと実現できた感じはあります。」
──メンバーの関係性やバンドの状態はいかがですか?
「メンバー自身はそんなに変わってるとは思えないですけど、The Mirrazがどんなバンドなのかは理解し合っていると思う。 ただ、僕自身がThe Mirrazというバンドがどんなバンドか十分に理解していない部分があって。 基本的には僕が作詞作曲、アレンジをして、それをやるだけってことなんですけど。 メンバーが好きな曲を作ってあげたいと思うので、そこから作る曲もあるし。 曲作りの流れの汲み方みたいな部分でも、現在のメンバーで馴染んできたところはありますね。」
──畠山さんは曲作りに加えてMVの監督もしていて、バンドの見せたいかたちが常に明確にあると思っていたので、今の発言は意外でした!
「The Mirrazが始まったのは“Arctic Monkeysが好き”という理由だけだったんですけど、結構、僕はビジネスとしてのバンドモデルを確信的に考えている部分があって。 Arctic Monkeysを聴いた時、“カッコ良いからやりたい”と思うアーティストとしての視点と“日本でやってないから売れるんじゃないか?”と思うビジネス的な視点があった時、ビジネスのほうを追求してたらつまらないし、カッコ良いところだけを真似てればいいわけでもない。その両立を考えた時、その答えは今も曖昧だったりして。 “じゃあ、The Mirrazとはどんなバンドなんだろう?”と考えると、まだ僕の中で答えは出ていないんです。」
──なるほど。しかし、今作は“The Mirrazというバンドがどういうバンドなのか、初めて聴く人にも分かってもらえるように”と資料にもあり、多くの人に聴いてもらうためには自らが理解して伝える必要がありますよね?
「そうですね。そういうチャンスであり、そこに期待してEMIに来たのもあるので、チャンスをしっかり活かしたいというのはありました。 ただ、そこでリスナーに合わせるのでなく、The Mirrazというバンドにしかできないものを提示しないと面白くない。 “こんなバンドがいるんだ!”と思わせる作品になるようにというところは強く意識しました。」
──メジャー第一弾となったシングル「僕らは/気持ち悪りぃ」を聴いた時、インディーズと変わらぬ姿勢、かつグレードを増した作品になっていて、すごく痛快でした。
「“The Mirrazにしかできないものをよりキャッチーにポップに、広がりを持たせて作ろう”ってできた曲だったんですけど。ただ曲を作ろうとしても、良い曲はできなくて。 やはり、メジャー一発目という重圧や試練もあって、そういう感じも生まれてきたと思うんです。 アルバムは『僕らは』を中心に作ったんですけど、それを超える曲を作ろうと思ってもなかなかできなくて。それより周りの環境だったり、畠山承平の人生だったり、その時いる場所から生まれる曲のほうが全然良くて、その違いはすごく感じましたね。だから、“The Mirrazらしい曲をやろう”といって、カッコ良いギターのリフや言葉数の多い歌詞を並べれば良い曲ができるわけではなくて。 今、自分が人生のどの場所にいるか? どんな曲を必要としているのか?を考えて望んで努力した時、そういう曲が生まれてくれるんだというのを、すごく実感したんです。」
──うん。The Mirrazの曲にはすごく刹那を感じます。未来永劫に残る名曲を作るより、今この瞬間に鳴っていることのほうが重要なんだという姿勢にロックンロールを感じるんです。
「メッセージに関しては、今伝わらなきゃしょうがないと思っていて。 音楽は5年後10年後も続けていくと思うけど、今言ってることと来年言ってることは全然違うと思うから。 言いたいことや伝えたいことがあったら瞬間瞬間に伝えていけば良いと思っていて、永遠に残るメッセージを残したいとは思ってないんです。」
──インディーズで“言いたいことはなくなった”と言いつつ、“選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ”と。それだけの意味じゃないと思いますが、メジャーを選んだ心境を改めて訊かせてもらえますか?
「アルバムタイトルはそれもあるんですけど、さっき話したように曲が生まれてくる理由や、人間が生まれてくる理由がそうだったらいいなという僕の願いを込めていて。 曲を作っていても、今まで自分で選んで作ってきたんですけど、今回は音楽のほうが自然と近づいてくる感じが強かった。あとは哲学的なところで生と死を含んだ意味合いもあったり、いろんな解釈ができれば良いなと思って付けたタイトルで。メジャー移籍に関しては、3rdアルバム前くらいからメジャーに来たかったんですけど、なかなか話がスムーズにいかなくて。それでもバンドを続けていかなきゃいけないというところで、事務所を作って、CDを作って、やりたいようにできていないストレスはかなりあったんです。 そんな中、信頼できる人と出会えたことで、EMIに移籍することになった感じで。」
──振り返ると、前作がなかったら今作ができていないかもしれなくて。そのタイミングにも必然を感じますね。
「4thアルバムは音楽として良いものを作ったし、日本の音楽シーンに対して責任持って発信できたのも良かったと思うし。 時間がかかったけど、良いものができたという気持ちはすごくあって…とはいえ、前作みたいなものを作ろうとも思わない。 僕の美学として、アルバムごとに変化していくような極端なものを作りたいし、今回はバンドをより知ってもらうための作品を作りたかった。 楽曲に関しても表現として次のレベルに行きたいなと思っていたので、その第一段階に辿り着けた手応えがあって、今作にはすごく満足していて。 今はこの作品がメジャーの一発目で良かったなと思ってます。」
取材:フジジュン
(OKMusic)
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