2012-12-20
【WEAVER】3人で紡いだ原点と進化
ニューアルバムの冠に掲げたタイトルは“Handmade”。このタイトルにこそ、今のWEAVERの音楽に寄せる思いが集約されている。バンドにとって初のフルアルバムとなる本作は、セルフプロデュースで制作された。自由度の高いサウンドの躍動感と奥行き、歌の求心力、多彩なコーラスワーク、歌詞のリアルなメッセージ性…全11曲から響き渡るのは、紛れもないWEAVERの本質と成熟と進化である。
──間違いなくバンドにとって大きな軸となる一枚だし、最初の代表作と呼ぶべきアルバムだと思います。
杉本「今年(2012年)の3月から全国31カ所33公演を行なったライヴハウスツアーに始まって、この1年はライヴも楽曲制作も改めて自分たちの手で作り上げることを意識して活動してきたんです。必然的にこのアルバムは何にもすがらずに、3人から出てくるものを全て出し切ろうという気持ちで作りました。音楽を生み出す苦しみもしっかり味わいながら、3人の力を合わせて乗り越えて、このアルバムを完成できたことが何より自信になりましたし、音楽に対する強い確信を手に入れることができた。それが歌やサウンド、歌詞のメッセージに表れていると思います。」
河邉「まず、こうしてセルフプロデュースで初のフルアルバムを作れたことがすごく大きくて。デビューアルバムの『Tapestry』以降、亀田誠治さんをプロデューサーに迎えて『新世界創造記・前編/後編』『ジュビレーション』とリリースしてきたんですけど。こうして、改めて僕たち3人だけでアルバムを制作することで、これまでいろんな人に頼っていたことや甘いところがたくさんあったんだなと実感して。セルフプロデュースならではの困難もありましたけど、3人でバンドの原点と向き合いながら、WEAVERが鳴らすべき音楽を追求できたことに大きな満足感と達成感を覚えていますね。」
奥野「セルフプロデュースで無限の可能性と選択肢があるからこそ、常に悩む時間もあって。“ピアノバンドとしてWEAVERが鳴らすべき音楽とは何か?”ってすごく考えたし、このアルバムの全曲に、曲作りから細かいアレンジに至るまで僕らの音楽に対する信念が詰まっていると言い切れます。バンドとして大きく前進することができましたね。」
──WEAVERというバンドの原点や本質と向き合うというところから全てが始まったんですね。
奥野「そうですね。でも、ライヴハウスツアーを終えた直後はものすごくテンションが高まっていて、曲も僕だけでアルバム1枚分くらい作れるんじゃないかと思っていたんですけど(笑)、実際に曲作りを始めると“これでいいのかな?”という疑問とぶつかって。3人の中でもちょっとずつ目指す方向性に相違点が見え始めて、その都度話し合いの場を持ちましたね。」
河邉「ほんとに3人で鳴らす以外の楽器を入れないで曲を作るべきなのかとか、“べき”という言葉に惑わされるんですよね(笑)。ライヴハウスツアーで実践したセッションコーナーの延長線上にある曲を作るべきか、夏に経験した『MTV Unplugged』に通じるような大人っぽい曲のほうがいいのかとか、あるいは歌が立っている曲も僕らの魅力のひとつだし、それをいかに活かすべきなのか…とか。曲作りの段階でふたり(杉本と奥野)はかなり悩んでいましたね。」
──結果的にその全てを飲み込み、昇華して、多彩な楽曲を通してWEAVERが今鳴らすべき音楽を表現できていますよね。ブレイクスルーになった曲があったんですか?
杉本「「Reach out」はツアーが終わって最初に作った3、4曲の中の一曲なんですけど。僕らが持っているメロディーの強さを損なわずに、音楽的に高いアプローチもできたなという感触があって。「風の船 ~Bug’s ship~」も同じような手応えがありましたね。」
──「Shall we dance」も熟成されたバンドグルーブを感じさせながら、ダイナミックなポップソングに仕上がってますね。
奥野「この曲ができたのは2011年の大晦日で。ライヴ感を意識してリフから作ったんですけど、原形はもっとオーソドックスな歌モノだったんですね。でも、ちょっとシンプルすぎるなと思って、Aメロを杉本にリアレンジしてもらったんです。それがすごく良くて、そこから一気に曲が良くなったんですよね。」
──「Shall we dance」の歌詞には、WEAVERがメッセージソングを描く理由と決意が綴られていると思いました。
河邉「「Shall we dance」はライヴで映える曲にしたいという思いが強くあって。お客さんが幸福感を覚えられるような曲にしたかったんです。この曲の歌詞には、僕らが音楽を通して伝えたいことが詰まっていますね。アルバムのメッセージ性も象徴していると思います。」
──その一方で、「アーティスト」や「偽善者の声」には葛藤を抱えながら自問自答する姿をシニカルかつストレートに描いていて。
河邉「「アーティスト」や「偽善者の声」のような歌詞は、今までだったら書くのを躊躇していたと思います。あまり直接的な表現をしすぎても良くないんじゃないかと。でも、今だからこそ書かなければいけないと思ったんです。」
──壮大なスケール感を讃えたミディアムバラード「The sun and clouds」では生命力の尊さを描いているのですが、これも今のWEAVERだからこそ確かな説得力をもって体現できる曲だと思います。
河邉「この曲を杉本からもらった時に“きたな”と思って。杉本自身も相当な手応えを感じている曲だとすぐ分かったんです。」
杉本「うん。それで、まさに生命力をテーマにした歌詞を書いてほしいというリクエストをしたんです。」
河邉「生命力というテーマをどう表現しようか考えた時に、いつか自分が書こうと思っていたことと結び付いて。去年、僕の祖母が亡くなったんですけど、肉体は失われてもその人が残した思いは息付いて、後世に伝わっていくという歌詞を書きたいと思っていたんですね。それとしっかり向き合えば、杉本が言っている生命力というテーマとも必然性を持ってつなげることができると思ったんです。」
──改めて、このアルバムを通して得たことは何ですか?
杉本「今の僕らの全てを出し切ったからこそ、WEAVERはこれからどんどん進化していくと感じてもらえるアルバムになったと思います。ぜひ、じっくり聴いてもらえたら嬉しいです。」
取取材:三宅正一
(OKMusic)
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