2013-12-20

【POLYSICS】アクティブでとにかく勢いのある、振り切ったアルバムが作りたかった

 10月にミニアルバム『MEGA OVER DRIVE』をリリース。勢いそのままに完成した最新アルバム『ACTION!!!』は、POLYSICSの現在を切り取った、ダンサブルで破壊力抜群な一枚。他の誰にも似ていない、独創的で最高に楽しいダンスロックで歌い踊れ!


 【熱量高く、攻めてる感じがパッケージできてすごく良かった】

──先日、対バンツアーのファイナル(11月24日@恵比寿 LIQUIDROOM)も観させていただいたんですが。最新アルバム『ACTION!!!』収録の楽曲はすでにライヴで演奏していたんですね。

ハヤシ「はい、あのツアーから何曲かやっていて。1曲目に「ACTION!!!」から始めたんですけど、SEが変わると“よし、ここから始めようか!”って感じで、気分も全然違いますね。」

──「ACTION!!!」はアルバムの入口として、今作への期待を煽る意味でも重要な役割を果たしている曲ですしね。あと、9月にはヨーロッパツアーもありましたね。

ハヤシ「すごい手応えを感じるツアーでしたよ。5年振りだし、3人体制で行くのも初めてなので、行く前は期待と不安が入り混じってという感じだったんですけど。どの会場もすごいウェルカムモードだったし、特にロンドンやパリはお客さんもたくさん入ってくれたし。対バンに面白いバンドも結構いて、CD買ったりして。なんかね、自由なバンドが多いんですよね。型にハマらないバンドが多かった。」

──大丈夫です、POLYSICSも負けてないですから(笑)。

ヤノ「最初に対バンしたバンドも、TVを10台くらい並べて映像流したりして、セッティング大変そうでしたよね?」

フミ「私は途中からthe telephonesが来てくれて、海外だけど変にピリピリしないで、抜きどころがあったのが助かりましたね。あと、ロンドンに行った時はすごい待っててくれたのを感じて。“こりゃ頑張らなきゃなぁ”と思わされて。」

ヤノ「いろんな箇所で、今後につながる種まきができましたね。」

──『ACTION!!!』はヨーロッパツアー以前には、すでに出来上がっていたんでしたっけ?

ハヤシ「そうそう、レコーディングは終えてました。ミニアルバム『MEGA OVER DRIVE』を録り終えて、“エンジニアとマスタリングは引き続き、益子樹(ROVO/DUB SQUAD/ASLN)さんにお願いしたい”って話して、そのままアルバム制作に突入した感じで。最初、益子さんとは探り探りで、“まずはミニアルバムで2曲お願いしましょう”って一緒に作業したら、すごい手応えを感じたので、“このまま一緒にアルバム一枚作りたい”と思ってお願いしました。」

──『ACTION!!!』は『MEGA OVER DRIVE』の勢いそのままに作り上げたような、勢いやスピード感がありますよね。

ハヤシ「『MEGA OVER DRIVE』を作る時に何曲かデモを作ってたんだけど、それを聴いたらヌルいというか、現在の自分たちのモードに全然ハマらなくて。それまで作ったデモはなかったことにして、イチから作ったのが『ACTION!!!』だったんです。そのほうが勢いもあったし、現在のモードにもハマったし。だから、『ACTION!!!』はプリプロしながら作って、レコーディングしながらさらに作り込んだ、まさに現場の勢いを真空パックしたようなアルバムですね。入念なプリプロを重ねて、しっかり内容を決めてレコーディングに挑むという、これまでのPOLYSICSのやり方とは全然違ったんです。」

──なるほど。だからこそ、まさに“ACTION!!!”と言える、臨場感やライヴ感もサウンドから滲み出てるんですね。

ハヤシ「あと、歌まで入れ終わって、全体が見えた後に出てきたアイデアを追加レコーディングする、ポストプロダクションも初めてやって。いつもはプリプロでガッチリ作り込むんで、録り終わった後にアイデアが出ることもなかったんだけど。今回はバラエティーに富んだアルバムを作る気もなかったし、とにかく勢いのある振り切ったものを作りたかったので。今まで以上に柔軟な考えで、その場で出てきたアイデアも全部詰め込んで。作ってて面白かったし、熱量高く攻めてる感じがパッケージできたのがすごく良かったですね。」

フミ「ある程度録ったところでさらに足していくってやり方は、やってみたらすごく良くて。私はギリギリまで悩むタイプなので、それができるとなんか心に余裕ができるんです。だから、レコーディングの最中でも、思い付いたことはその場でどんどん意見する感じでした。あと、『Weeeeeeeeee!!!』までは、“こういう曲があるから、ああいう曲が欲しい”とか、“いろんなタイプの曲を揃えたい”って考え方だったんですけど。今回は“これいいね、これもいいね”って感じで、気持ち良い曲をバンバン入れていった感じで。」

ヤノ「今回はその場の空気や全体的なノリの良さを重視して、あまり練習もしないで進めていったんですけど、それが逆に良かったですね。作業的には益子さんと“こういう音にしたい”って話しながら、自分ひとりでチューニングしたんですけど、それも今までになかった経験なので、すごく新鮮でした。」

──曲はデモがある程度出揃ったところで、1曲ずつ作り進めていった感じだったんですか?

ハヤシ「いや、本当にほぼイチからの制作だったんで、曲作りしてレコーディングして、曲作りしてレコーディングしてっていう毎日だったんです。」

フミ「プリプロで“これでいけるっしょ!”くらいまで仕上げた曲を翌日にすぐ録るくらいの感じでね。」

ハヤシ「そう、“12時間経ってないけど、もう録ってる!”って(笑)。で、家に帰ってデモを仕込んで、またプリプロしてみたいな。「Turbo Five」がその12時間経たずにレコーディングした曲だったんだけど、「Post Post」も完成まですごい早かったし。でも、僕は心配症で、最初に作り込んで安心したいタイプなので、こういう作り方は苦手だったはずなんですけど。やってみたら、これはこれでいいなと思いましたね。」

──歌詞はどれもインスピレーション重視って感じですよね。

ハヤシ「そう(笑)。それも今のモードに合ってる気がして。」

──あと、やっぱり話を聞いてても、今回のアルバムを方向付けるのに「MEGA OVER DRIVE」の存在が大きかったと思うんですけど、フミさんとヤノさんはこの曲に関しては?

フミ「最初はハヤシがギターを弾かないことに戸惑いもあったんですけど。曲作りが進むに連れて、ハヤシが“柔軟に”って言ってる意味が咀しゃくできてきた感じで。“ならば”という感じで、アルバムに入る曲たちも柔軟に考えることができて、“意地でも生ベースを弾かなきゃいけない”という感じはなくて、“曲が良ければいいじゃん”くらいの感覚でできたので、「MEGA OVER DRIVE」の存在が大きかったんだなというのは、アルバムを作りながら思いました。そういう姿勢でアルバムに挑めたのがすごく良かったし、面白かった。やっぱり本人たちが面白がれるってことが重要だと思うんですよね。」

ヤノ「俺は基本的にふたりの作ったものにドラムを入れるって感じなので。ミニアルバムから怒涛のレコーディングだったので、アルバムまで完成した喜びはありますけど、これがどんな作品だったのか?というのは、ツアーをやりつつ、客観的に見えてくるんじゃないかな?と思ってます。」


 【今までのどの作品にも似てないアルバムができたのが良かった】

──今回、全体的にバンドサウンドでグイグイ引っ張っていくというよりは、前面にエレクトロが押し出されてる印象でした。そこで思ったのは、ハヤシさんがドッシリしたリズム隊を信頼して、今まで以上に自由にのびのびできたのかな? と。

ハヤシ「あ~、それはありますね。ヤノ&フミのグルーブが前提での曲のイメージやアイデアも多かったし、そこに不安はまったくなくて。より遊べるようにはなりましたよね。」

──『MEGA OVER DRIVE』のインタビューで、“新譜を買い漁ってて、いろんな発見があった”と話をしていたので、やりたいこと、試したいこともたくさんあったんだろうなって。

ハヤシ「最初からアルバムのテーマを決め込まず、“ダンス曲が多くて踊れる、アクティブなアプローチの作品にしたいね”くらいの話をしてて…というのも、POLYSICSって意外とそういうアルバムがないんですよね。アルバムの一曲として4つ打ちだったり、ディスコっぽかったりする曲はあるけど、一枚通してというのはなくて。“今までない作品”をイメージしながら、あとは好きにやろうって感じでしたね。そこで「MEGA OVER DRIVE」から、シンセ/エレクトロモードだったから、電子音が前面に出た曲を益子さんとやりたいというのもあったし、益子さんとやることでプログラミングの方向性も明確になっていったし。あと、今までは隙間を電子音で埋めるようなスタイルがあったんですけど、それをすることで曲の聴こえ方が散漫になっちゃうんだったら、核となるバンドサウンドとシーケンスでシンプルに作り上げるほうがいいんじゃないか?と思ったのが、今回でしたね。」

──そこでできてきた作品を聴くと、いわゆる流行りのダンスロックとは明らかに一線を画したものになっていて。

ハヤシ「ねぇ、そうなっちゃうんですよね(笑)。」

──そこは新譜を聴き漁って流行に寄せるのでなく、“ならば、POLYSICSは何ができるだろう?”って発想だと思うんです。

ハヤシ「そこも意識はしますね。最新のエレクトロだったり、シンセポップだったりを消化しながら自分たちのものにするっていう…とか言って、そんな意識してないんですけど(笑)。意識しなくても、そうなるもんなんで。より柔軟に考える中で、そんな考えも自然と出てきたって感じで。結果、今までのPOLYSICSのどの作品にも似てないアルバムができたのは、すごく良かったなと思ってます。」

──「ACTION!!!」や「Rhythm」といったインスト曲も、ただのイントロダクションやインタールードになっていなくて。

ハヤシ「「Rhythm」のあの感じは自分でも面白がってて、80’sシンセポップっぽいんだけど、リズムはガッチリしてるみたいな。いつの時代か分からない音楽というのは理想なので、「Rhythm」は個人的にすごく好きな曲ですね。ああいうシンセがリードをとる曲って最近なかったんで、それも良かったなって。話変わるけど、「Don’t Stop Johnny」とかは最初、もっとテンポが遅くてキラキラした曲だったんだけど、やっぱりミニアルバム以降で“ヌルいな”って感じて。テンポ上げて攻撃的なアレンジになって、カオスな雰囲気が出たんです。」

──POLYSICSってクラッシュ&ビルドというか、今回みたいな振り切った作品で、ここまで積み上げてきたものを解体して、新しいかたちに生まれ変わるってことを繰り返してきたバンドだと思うんです。そういう意味でも、『ACTION!!!』は3人になって、重厚なバンドサウンドで聴かせるPOLYSICSをまた一度壊して、新しいかたちを作る解体作業な気がするのですが。

ハヤシ「あ~、そういうものにはなってますね。『Weeeeeeeeee!!!』を作ってツアーを終えた時、“これと同じことはやらないな”ということは思って。そこから、こういうまったく方向性の違った作品ができたのは良かったですね。」

──そこで、ラスト「Turbo Five」は今作も消化した、ここから先のPOLYSICSも想像させる曲になってます。

ハヤシ「そうですねぇ。まだ曲作りモードではないので、このアルバムのツアーが終わる頃にはまた新しいアイデアも出てくるんだろうなと思ってるんですけど…次の作品に関して、現時点ではノーアイデアです !(笑)」

──今回、アルバムを作りながら、その後のライヴやツアーはどう意識していました?

ハヤシ「どの作品でも曲作りの時、基本ライヴは意識していて。今回もツアーで演ることを大前提として作ってたし、ライヴに直結したものにしたいというのはありました。ツアーはまだ来年なので具体的には言えないですけど、“なんだかんだ言っても、POLYSICSのライヴは楽しい!”というのを今一度意識して、セットリストを考えるのも今だったらいいのかなぁ?と思ったりしてますね。ストイックに演奏で聴かせるというのを意識してた時期もあったけど、もうそこは伝わってると思うんで。それだけじゃないPOLYSICSなりの魅せ方を、今一度意識したツアーにしたいなと思ってます。」

取材:フジジュン

(OKMusic)


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