2012-09-20

【BUCK-TICK】ロックンロールっぽい曲でも いろんなタイプのノリがある

 メジャーデビュー25周年イヤーに届けられたBUCK-TICKの新作『夢見る宇宙』。いつにも増してキャッチーな楽曲をそろえ、ロックンロールな手触りを感じさせる今作について、5人がその出来映えを語ってくれた。


 【キャッチーで、スパン!とした 気持ち良さみたいなところへ…】

──新作『夢見る宇宙』、聴かせていただきました。今回も個々の楽曲のタイプはさまざまですが、全体的に言うとBUCK-TICK流のロックンロールをすごくキャッチーに表現しているアルバムだなと思ったのですが。そのへんは狙いどころだったのですか?

今井「いや。狙いどころというか、とりたててそこをテーマとして目指してたっていう枠決めみたいなものはなかったんだけど。ただ、そういうものをやろうかっていう空気感みたいなものは…それはあったと思います。」

──それは、なぜ?

今井「なんて言うか…そのキャッチーさが持ってる、スパン!とした気持ち良さみたいなもの? 誰もが思う、そういうところにちょっと行きたかったのかなっていう気はします。」

──もしかすると、25周年イヤーに伴う高揚感みたいなものが、そういった気持ちを呼び込んだとか?

今井「う~ん、分からないけど。それもまぁ、無きにしも非ずですね(笑)。」

──メンバー個々の演奏も、いつにも増して伸び伸びしているような印象を受けたのですが。

星野「それはたぶん、楽曲がそうさせたっていうのもあると思う。わりとストレートな楽曲が多いから、自然とプレイもそうなっていったのかなっていう気はします。」

──ギターのカッティングも一段とキレてますよね。

星野「いわゆるロックンロールパターンの曲は特にね(笑)。音質も最近は粒立ちの細かいブライトな感じにすることが多いし、それでわりとストレートな、ゴワゴワしてない音にしてるから、余計にそう聴こえるんだと思います。」

ヤガミ「それとやっぱ、今回は全体的にロック感が出てるから伸び伸びしてるように聴こえるんじゃないかな。ほら、いつもはどんどんサウンドをタイトに重ねていく感じだったじゃないですか。でも、今回はそういう感じじゃなかったんですよ。特に顕著なのが、弟(樋口)のベースで。いつもだと俺の影武者みたいな感じで合わせてくるから、なんか面白味がなかったんだけど(笑)。今回はユータ自身の持ってるロックなニュアンスというか、グルーブを遠慮なく出してきてるんです。で、それはたぶん、今回はベースを一番最初に録って、最後にドラムを録るっていうやり方でレコーディングをしたからだと思うんだけど。」

──普通はドラム、ベースの順に録って、ボトムが決まってからギターなどの上モノをレコーディングしますよね。

ヤガミ「うん。だけど、今回はそうじゃなかったんですよ。でもそのおかげで、俺もすごくやりやすかった。いつもはデモテープを聴いて、あとから乗ってくるギターの音とかをある程度予想してドラムの音を決めてたんだけど。今回は本チャンの音とかアレンジを聴いてから、ドラムのチューニングや音質を明確に吟味していくことができたんでね。自分としてもすごく気に入った音で、気持ち良くレコーディングできたんです。」

樋口「僕も新鮮でした(笑)。」

今井「みんなの気持ちが、いつもとはちょっと違った感じになってたし。ディレクターさんの勧めもあって初めてやってみたんだけど、結果的にドラムのレコーディングを最後に持ってきたのは成功だったんじゃないかなと思ってます。」

──ヴォーカルにも、一段と伸びやかな広がりのようなものを感じました。

櫻井「まぁ、曲によって違いもあると思うんですが…ヴォーカルの広がりっていうよりは、その歌のストーリーの中に自分がちゃんと入り込めていってるかどうか。それはすごく意識して歌ってたので、そのストーリー自体の広がりっていうものが、そういうふうに届いていくのかもしれませんね。」

──それにしても、聴きやすくてノリのいい楽曲が多いですね。以前お話をうかがった時に、“次のアルバムにはシングル向きの曲がいっぱい入ってる”って言われてましたけど。

樋口「ホント、いい曲ぞろいなんですよ。しかも、一曲一曲に個性があるから。ライヴとかでやったりすると、自分でもいっそう、その“いい曲の感じ”っていうのがビシビシ伝わってくるんですよね。」

今井「例えば、ロックンロールっぽい曲でもいろんなタイプのノリがあるしね。」

星野「もちろん、他にも包み込むような曲や激しい曲や、メロディアスな曲もあるし…だから、いろんな世界が見えてくるアルバムだと思いますよ。まぁ、でも、それはデモテープを聴いてる段階で、自分たちである程度予測できてたことでもあるんだけど。」

──なおかつ、単にキャッチーで伸び伸びとしてるだけじゃない。なんと言うか…深みをちゃんと携えた上での、新たな生気みたいなものも感じられるんですよね。

今井「あぁ、なるほど…(笑)。でも、そういう何か生命体じゃないけど、そういうものがこう、包み込むみたいな? そんなのが備わったアルバムなのかなとは思ってます。」

──歌詞に関しては、今回特にこだわったようなところはあったのですか?

櫻井「個人的には毎回毎回、自分の中でハードルが上がってるような気がするので…それに対して、“できたな”っていう満足感は感じてます。」

──具体的に、今回はどんな部分でハードルは上がっているなと思われたのですか?

櫻井「実は、歌詞の書き方もこれまでとは違ってて。歌詞を書く前にまず、周りの何にもとらわれない、完全に自分の好きな世界やイメージを言葉にして並べてみるっていうことをしたんです。それもディレクターさんのアイデアだったんだけど、おかげでそれらの言葉が歌詞になっていく段階でも、自分の中でのイメージがブレることなく…むしろ、どんどん広がる感じになっていったんです。それで結果的には、最初のインスピレーションが自分にとって最もいいかたちで歌詞になっていけたので。すごく納得のいくものができたなと思ってます。」

──例えば、どんな言葉があったのですか?

櫻井「収録曲のタイトルにもなってる“夢見る宇宙”とか、“RAPTOR”(※猛禽類の意味)とか。その言葉のイメージがあるひとつの方向に規定されるのではなく、自分の中でどんどん良い方向に広がっていったので。描かれる物語もどんどん鮮明になっていったし、自分の本当に好きな世界を気持ち良く歌詞にしていくことができたんです。」


 【僕らの気持ちはすでに 26年目に向かってる】

──ちなみに、『夢見る宇宙』はインディーズ時代から数えて18作目のオリジナルフルアルバムなんですよね。メジャーデビューから25年という年月が経ってもなお、新たな作品を発表し続けていく、BUCK-TICKのそのモチベーションは一体どこにあるのだろうって思うんです。

樋口「僕はやっぱり、前にやったものよりもカッコ良いものを作りたいっていう気持ち? “何をしなきゃいけない”とか、“これじゃなきゃダメなんだ”とか、そういうこだわりに縛られることなく、カッコ良ければ何でもいいから、次はまたもっとカッコ良いものを作りたいっていう気持ちを常に持ってるから。そういう気持ちが、自分を前に運んでるんだと思います。」

ヤガミ「個人的に言えば、ドラミングスタイルかな。細かいことを言うと、俺の叩き方とか、バスドラのペダルの踏み方って、その時期その時期で違ってきてるんですよ。要は、自分がその時期にベストだと思ってるような叩き方に変えてるんだけど。言い換えれば、それだけドラムは未だに難しい楽器だっていうことなんですよね。だから、そうやって自分のドラムプレイをこれからも追い求めていくこと? それが、次にまた何かを作っていくことへのモチベーションになってるんだと思います。」

星野「作品を作っていく過程とか、レコーディングしてる時には、確かにいろいろ大変なこともあるんだけど、結果的にそれが完成してライヴとかでその曲をメンバーみんなでやるとすごく楽しいんですよね。そうすると、“あぁ~、また新しいものを作りたいな。それでみんなでライヴを楽しみたいな”って思うんです。だから、その喜びがある限り、自分は次を作り続けていくんだと思います。」

今井「俺は、ただ作りたいからとか、やりたいからとかっていう気持ちでしかないですね。なぜ作るんだろうとか、何のために作るんだろうとか、そういうことはまったく考えたことないです。特にツアーとか回ってると、いろんな新しいアイデアというか、次はこういうものがやりたいなっていう欲求みたいなものが自然と出てくるから。まぁ、それは突然だったり、徐々にだったりなんだけど、結局その繰り返しで俺はここまで来てるんじゃないのかなと思ってます。」

櫻井「う~ん、モチベーションっていうのは難しいですけどね。自分的にはそうですねぇ…目では見えない、自分の声だったり、歌だったり、物語だったり? もし、まだ自分にできるんであれば、そこにもっと違うものを見てみたいっていう気持ち。それが次を作らせてるような気がします。」

──そんなBUCK-TICKが届けてくれたアルバム『夢見る宇宙』ですが、ファンの人たちやリスナーにはどんなふうに受け止めてもらいたいと思っていますか?

樋口「これは確かに25周年イヤーに制作したアルバムなんだけど、僕らの気持ちはすでに26年目に向かってるんでね。そういう意味で、『夢見る宇宙』は次へのスタートを切る感じのアルバムでもあるんですよ。BUCK-TICKはこれから、まだまだやり続けるぞっていうね。だからみんなにも、そんな僕らの意気込みみたいなものをしっかり感じ取ってもらえたらなって思います。」

ヤガミ「自分でも会心の作品ができたなと思ってるし。自信を持ってお送りするので、ぜひたくさんの人たちに楽しんで聴いていただけたらなと思ってます。」

星野「で、アルバム聴いて楽しんでくれたら、ライヴにも足を運んでほしい。そうすれば、さらに楽しんでもらえるはず。9月22日、23日の『BUCK-TICK FEST 2012 ON PARADE』の後には、10月から全国ツアーも控えてるんで。待ってます!(笑)」

今井「個人的には、“また新しいものができた!”っていう思いがすごくあるので。そのへんを…というか、とにかく新しい今のBUCK-TICKを楽しんでもらえるといいし、絶対に楽しんでもらえると思ってます。」

櫻井「『夢見る宇宙』を聴いた人が、どれか1曲でもいいから鳥肌が立ったりとか、心拍数が上がったりして…そんなふうに聴いた人の何かを乱せたらいいですね。みんなを“乱れちゃった!”っていうふうにできたらね。脈拍が乱れたりとか、訳も分からず神経が逆立ったりとか。で、それを感動っていうかたちで与えることができたら幸せです。」

取材:村野弘正

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