2017-06-29
GASTUNKの『DEAD SONG』に宿る先見の明
7月2日、東京・新木場STUDIO COASTでライヴイベント『FUUDOBRAIN MUST DIE』が開催される。これは高円寺にあるショップ“FUUDOBRAIN”のオープン20周年を記念して行なわれるもので、氣志團、OLEDICKFOGGYら同ショップと縁のあるアーティストが参加するが、何と彼らと並んでアナーキーとGASTUNKが復活し、それぞれイベントの大トリ、トリを飾る。ともに日本ロック史にその名を残す伝説的バンド。アナーキーはそのデビュー作を数年前に取り上げているので、今回はGASTUNKの名盤を紹介する。そこには現在のビジュアル系やラウド系にも通じる彼らの先見性があった。
■インディーズシーンを創成したバンドのひとつ
GASTUNK、復活。しかも、一夜限りの再結成とかではなく、BAKI(Vo)、TATSU(Gu)、BABY(Ba)、PAZZ(Dr)という黄金のメンバーで今後も活動をしていくということで、先日、往年のファンたちはスワッと色めき立った。そのニュースはSNSでどんどん拡散されていったが、いいね!やリツイートした人の中には同業者=アーティスト、ミュージシャンも多く見受けられて、GASTUNKがその後の邦楽ロックシーンに与えた影響が決して小さくなかったことを実感させられたと同時に、“みんな、GASTUNKが好きなんだなぁ”と思う。1988年の解散後、1999年にGASTUNK のことが好きだったという故・HIDE(X JAPAN)追悼のため、2006年の新宿LOFT30周年記念イベントに参加、さらには2010年にも、何度か再結成しているものの、10~20代のリスナーにとってはおそらく馴染みの薄いバンド名ではなかろうか。だが、X JAPAN、L'Arc〜en〜Ciel、黒夢といった所謂ビジュアル系バンド、さらにはそのビジュアル系の元祖とも言えるDEAD ENDまでもがその影響を公言して憚らない、レジェンドにとってのレジェンドと言っていいバンドである。
GASTUNKの結成は1983年。ザ・スターリンのエキセントリックなライヴパフォーマンスが巷で話題になったのが1981~82年頃なので、アンダーグラウンドで活躍するパンク、ハードコアバンドがそれほど珍しくなくなりつつあった時期にバンドは立ち上がった。首謀者はBABY。ハードコアパンクバンドだったTHE EXECUTEを脱退しての新バンド結成だったが、後に同じくTHE EXECUTEを脱退したBAKIが参加。また、それと同じ年の1984年にTASTUも加わり、流動的だったメンバーが固定したことでその活動を本格化させていった。その翌年1985年、GASTUNKにとって…と言うよりも、日本のロックバンドにとっての一大転機が訪れる。NHKで『インディーズの襲来』と題されたドキュメンタリー番組が放送され、雑誌『宝島』主催によるイベント『キャプテン・レーベル発足記念ギグ 好きよ!!キャプテン』、通称“アルタ前ギグ”が行なわれたのがこの年だ。それぞれについて語ると長くなるので、YouTubeとかにその映像があるので恐縮ながらそこで調べていただきたいが、簡単に言うと、それまで“アンダーグラウンド”と呼ばれていた音楽シーンが“インディーズ”と名称を変えたのがこの年である。もっと言うと、今は普通になっている“メジャーではない音楽が存在すること”を、一部好事家以外の一般の音楽ファンも知ることになったのが1985年からだ。
このインディーズブームにおいてはLAUGHIN' NOSE、THE WILLARD、有頂天の所謂“インディーズ御三家”が有名になったが、GASTUNKも件の番組、イベントに出演しており、その名を全国へと広める大きなきっかけになった。この年に1stシングル「GASTUNK」、そして1stアルバム『DEAD SONG』も発表しており、露出するにこの上ないタイミングでもあっただろう。本コラムではGASTUNKのデビュー作と言える、この『DEAD SONG』を解説しようと思う。初期はハードコアパンクと言われ、メジャーデビューしてからはヘヴィメタルと言われていた彼らのサウンドだが、今回『DEAD SONG』を聴き直してみて、そのどちらとも言えない、意欲的なサウンドアプローチをしていたバンドであることが改めて分かった。後にフォロワーを生んだことも十分にうなずけるだけのオリジナリティーがちゃんとそこにあったのである。以下、その特徴を、楽曲を示しながら紐解いていこう。
■メロディーとバンドアンサンブルの妙味との調和
『DEAD SONG』はBABY作のインスト曲M1「黙示録」で幕を開ける。歌詞がないから便宜的にインストと言ったが、BAKIの唸り声というか呻き声というか、ヴォーカルのシャウトも重なるので所謂インストとは少し異なる。ギターもハンマリングを使ったTASTUらしいキレのあるリフを聴くことができ、ハードコアやヘヴィメタルというよりはプログレに近いアプローチのように思う。案外長尺でおどろおどろしく展開していくので、どこかサバトや黒ミサでの呪文のようだ(そんな呪文を実際に聴いたことはないが…)。この「黙示録」のアウトロ(ていうか呻き声)からシームレスにM2「NIGHT SIGHT LIGHT」、そしてM3「WARBIRD」~M4「胎児[SAD]」へつながっていく。この辺り、特に「WARBIRD」の切迫感のあるリズムや細かいギターの刻みは如何にも当時のハードコアパンクといった様相だが、それにしても《うるさい! うるさいと目をあけさえしない/戦士の上をはう 天と地の支配/最後の扉あけ~》と歌われるヴォーカルは独特な抑揚があって単純なハードコアではない印象。ややイントロが長いきらいのある「NIGHT SIGHT LIGHT」だが、ギターとベースがユニゾンで楽曲全体をグイグイと引っ張る緊張感あふれるサンサンブルはパンクにもメタルにも属さないものだし、「胎児[SAD]」は全体にはパンキッシュでギターはハードロック調だが、中盤のベースソロに独自性を見出せる。LP盤ではA面のラストとなるM5「COMPUTER CRIME」はミディアムテンポのイントロが聴きどころ。BABYのベースがGASTUNKサウンドを司っていたことを象徴するかのようなフレーズに、粗野でノイジーなだけのバンドであることが分かる。ギターソロも流麗だ。
アナログ盤でのB面、M6「FASTEST DREAM」以降はGASTUNKが凡百のパンク、メタルバンドではないことがはっきりする。まず「FASTEST DREAM」。変則的なビートを刻むドラムからトリッキーかつポップなベースリフ、その上にノイジーなギターが乗るイントロからしてやはりプログレっぽい。BAKIの歌もデスヴォイスはなく、中盤でシャウトがあるものの、ほぼ全体をハイトーン(?)でニューウェイブ的なメロディーを歌っている。間奏のギターソロを含めて、何と言うか叙情的なイメージがある。ギターの強烈なフィードバックノイズから始まる、ハードコアとスラッシュを合わせたようなスピード感あるナンバーM7「INTER LOPER」に続く、M8「THE EYES」もどこか叙情的だ。ギターは終始ゴリゴリでベースはとにかく忙しく動いているが、歌の主旋律は印象的なメロディを奏でる。まぁ、Aメロにしっかりとメロディがあるかと言えばシャウトが多いので必ずしもそうではない部分もあるが、Bメロから転調してのサビは少なくともこの当時のハードコアパンクになかった広がりのあるメロディーだ。この辺まで聴いてくると、このメロディーとバンドアンサンブルの妙味との調和にGASTUNKというバンドの面白さがあることが分かるであろう。そこで聴き手はタイトルチューンでもあるラストM9「DEAD SONG」に辿り着く。
■活動スローガン“ハートフルメロディー”を実践
この「DEAD SONG」を聴けば多くのリスナーがGASTUNKのオリジナリティーを確信するだろう。当時のハードコアパンクバンド、ヘヴィメタルバンドでこうしたアプローチをするバンドはいなかったと思う。いたとしても、少なくともそれを音源化したバンドはGASTUNK以外にはいなかったであろう。メロディアスなベースにギターのアルペジオ、そこからエレキギターの重いリフとドラムのビートが加わる展開は、1990年前後のビジュアル系楽曲に近い。中盤でのビブラートを効かせたような歌い方も後世のヴォーカリストを彷彿とさせるものだ。そして、何よりもこの楽曲の特徴は、サビのメロディーラインが際立っていることだ。メロディアスでキャッチー。ややマイナー調ではあるが、多くの人に受け入れられるという意味でのメジャー感は強い。GASTUNKの活動スローガンでもあり、この歌詞にもある“HEARTFUL MELODY”。「DEAD SONG」はそれを実践している。GASTUNKは初期にハードコアパンクとジャンル分けされていたが、本来のハードコアパンクはオリジナルのパンクのサウンドやメッセージ性をより過激にしたもので、バイオレンスと結び付いたものも少なくない。“HURTFUL”ならともかく、“HEARTFUL”とハードコアとは──少なくとも1980年代には結び付くものではなかった。それを実現させた点でGASTUNKは称賛に価するだろうし、大袈裟に言うのならば、それは歴史的な仕事であったと思う。
最後にGASTUNKの特徴として抑えておかなければならないのが、そのビジュアルだ。何と言ってもBAKIの白塗りメイクのインパクトは大きい。KISSの影響だったということだが、歌舞伎の隈取にも似たグラフィカルなメイクだったKISSに比べると、シンプルに目の部分だけを強調した、この世の者ならざるような雰囲気は、いい意味でアングラ感(今で言うインディーズ=インデペンデント感)に拍車をかけていたと思う。そのBAKIの一方で、これまた当時のハードコアシーンでは珍しかった赤い髪に愛機・フライングVというスタイルのTASTUも異彩を放っていた(『DEAD SONG』の時はレスポール?)。パッと見、別のバンドに所属してる者同士がセッションしているかのような見え方も、この頃のGASTUNKならではであった。今となってみれば、それこそメンバーのひとりがお面を被っているようなバンドもあるので、バンドメンバーのビジュアルが揃わなくとも違和感を持つリスナーも少なかろう。そうした礎をGASTUNKが作った…とはさすがに言いすぎだろうが、GASTUNKが当時から今のシーンにもつながる自由な精神を持っていたことがわかる。のちにGASTUNKのフォロワーたちが新たなシーンを形成していったことも当然だったと思える。
TEXT:帆苅智之
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